ヨーロッパの心 (岩波新書 新赤版 153)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004301530

感想・レビュー・書評

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  • しばらくほっておいたこのブクログに、もう一度戻って来ようと思わされた本。欧米の大学で深く研鑽を積み、ヨーロッパ各地に長年滞在していた著者ならではで、頭とからだが密接に結びついている。「ヨーロッパという『生き続けてきた実体』は、理論ではないのである」(172頁)。いかに自分が「理論」(それも非常に偏した)によってしか見ていなかったかを思い知らされた。理論=教理の面だけで捉えるならば、カトリックは文字通り「箸にも棒にもかからない」。しかしそれは彼らの現実の生を知らない「こちら側」(アングロアメリカ福音主義プロテスタント)から見た姿に過ぎない。聖書学を専攻したカトリック者である著者の、深い神学的・聖書的洞察が、ヨーロッパ(の地域・国によって多様ではあるがある統一性を持った、人々の具体的な生の現実)を2000年にわたって形成してきた、カトリシズム(普公性)の核心について目を開かせてくれた。イギリス・フランス・ドイツ・イタリアからオランダやチェコにいたるまで、大小さまざまな国が各章で扱われているが、圧巻は「聖母の花輪」の章。教会暦や聖母マリアの意義について書かれている。それらがいかに人々の具体的な生活に根ざしていることか!他者(他文化、他宗派、他宗教)と出会うこと、それも抽象化された思想(教理)だけではなく、生きた実体と出会うこと、これなしに本当の意味での知識=教養を得ることはできないのだと思う。そのような他者を知ることによってはじめて、自分が何であるか、自分の受け継いできた考え・生き方・信仰がどのようなものであるか、考えることができるだろう。ヨーロッパについて関心ある人はもちろんだが、何よりも、アメリカ流の信仰を(良くも悪くも)強く受け継いでいる福音派キリスト者に読んでもらいたい。

  • 最近やっと興味を持ち出したヨーロッパについての本。良く出来た本。ヨーロッパに長年滞在した著者が深い洞察力と慈愛を持って書いたことが窺える。

  • 昨今の風雲急を告げる欧州を見て再度手に取る、毎回同様で芸が無いですが全く内容を覚えていない、、、
    まぁそれはどうでも良いですが、うーん、この本自体がEnglandで否定されたliberalism、もっと突っ込めばestablishmentそのものの発想の産物かな、という気がする。
    当方としては、この本の主張は基本的には正論(幾つかははぁっ?って思うところもあることにはあるのですがそれはひとまずさておき。)だと思うんだけれども、この思考回路を良しとしない民が半数を占めていて、もう我慢ならんとその旗幟を鮮明にした現実は極めて深刻。世界平和は遠くに也にけりです、ほんと。

  • 長年ヨーロッパに暮らしてきた著者が、ヨーロッパの文化と風土について語っています。

    イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スイスなど、各国の精神の特色を掘り下げています。また、プラハの春で深く心に刻み付けられた傷を語る女性との対話を通して、西欧諸国だけを見ていてはあまり見えてこない、ヨーロッパの精神が経験した歴史の闇の一面に触れています。

    また最終章では、ヨーロッパを訪れた人びとが一様に感じる多様性の背後に、ギリシア、ローマ、キリスト教というヨーロッパの根幹が存在していることが語られています。とくにカトリシズムが、ローマ時代から宗教改革の時代を通って現代に至るまでヨーロッパの精神的支柱の役割を果たしてきたことが論じられています。

    著者の深い教養に裏打ちされた、格調の高いヨーロッパの紹介です。

  • [ 内容 ]
    私たち日本人はヨーロッパを正しく知っているだろうか。
    ヨーロッパが育み,実らせたものの本質とは何だろうか。
    アルプスの北と南で、樅の森の東と西で、立ち現れる様々な表情の奥に息づくギリシャ・ローマ文化とキリスト教。
    在欧約三十年に及ぶ著者の豊富な経験と出会いを通して、ヨーロッパの多様性、風土、その心を語る。

    [ 目次 ]


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    [ 参考となる書評 ]

  • 赤153

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著者プロフィール

1921-2017。評論家、エッセイスト、難民支援活動家。著書に、『聖書を旅する』(全10巻)、『お嬢さん放浪記』『こころの座標軸』など。難民支援活動の一環に〈犬養道子基金〉を創設した。

「2021年 『やさしい新約聖書物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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