ことばの履歴 (岩波新書 新赤版 188)

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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004301882

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  • 最近今野真二さんの『消された漱石』という本を読んでいて、その中で漱石の使った「三馬」は決して漱石の編み出した当て字ではなく、江戸時代からの用法であることを山田俊雄さんが『詞林逍遙』の中で述べているとあったので、急に山田さんの本が読みたくなったが、買ってあったのは本書と『詞林閑話』だった。以前は拾い読みをしてもそんなに感動はしなかったが、今回読んでみて、一つ一つの話は短いものの、どれも蘊蓄が深く、考えさせられるものが多かった。その文体は決して易しいとはいえず、時に難解ではあるが、どれも味わい深い。たとえば、「停車場」は、ていしゃじょう、あるいはていしゃばと読まれており、当時「駅」はまだ宿場、駅馬車の駅のような意味だったとか、「町人」は現代ではちょうにんとしか読まないが、かつては「まちにん、まちうど」のような読みがあったとか、「粉薬」はかつては「こぐすり」と読んでいたとか(これはぼくも記憶がある)、言語の変化に対するするどい観察が全書を通して見られる。ぼくも、毎月辞書について書いているが、こんな味わい深い文を書けるようになりたいものだと思った。本書を読むのと平行して、山田さんの著書をまとめて買ってしまった。

  • 日本語の語彙や読みや漢字の当て方などの、歴史的な変遷をモチーフにしたエッセイ(元々は雑誌の連載記事のようだ)。幅広い文献から、「おや」という事例を収集して、その遍歴を江戸時代まで遡り解釈するという試み。出版された年代から察するに、こうした作業は非デジタル的に行われたのであろうから、地道な研究(本人は趣味という)には頭が下がる。様々な言葉に、様々な来歴があるのは解るが、急ピッチで言葉が変していく平成の世には、もうこうした研究は体をなさないのかもしれない。

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