腸は考える (岩波新書 新赤版 191)

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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004301912

感想・レビュー・書評

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  • 【動機】腸と人間の感情のつながりが知りたくて

    著者があとがきに残しているように、本書は研究結果が出るまでどんな研究者が関わってどのように進んでいったか、といったことにより焦点を当てていると思う。わかりやすい例えと親しみのある文体のおかげで、専門的な内容でも読みやすく感じた。西洋医学的アプローチを紐解くことで、ほかのところでいわれていることに理由の通じるものがあり興味深かった。
    内容は当初期待した内容と少し違った。最後の方はぱらぱらと終えた。再読するとより理解できそう。

    ♧腸は取り込まれた物質ごとに異なる反応を起こせる。たんぱく質・脂肪→膵臓から分解酵素を出す 酒やスープ(アミノ酸)→胃酸分泌の指令を出す 黄身→胆嚢の収縮+胆汁を腸に流す
    ♧腸の働きは中枢神経系から独立しているので睡眠中も同じように機能する
    ♧ガストリン→幽門前庭から放出される物質。胃酸を分泌させる セクレチン→十二指腸から放出される物質。膵臓から重曹水を出させる 
    ♧ガストリンやセクレチンのように、血中に放出されて遠隔の特定の臓器に作用する物質をホルモンと呼ぶ
    ♧各種ホルモンはそれぞれ特定の細胞から合成される
    ♧顕微鏡標本をつくるためにつかう固定液は、ホルマリンに水銀の化合物などの金属塩を混ぜたもの。細胞を殺し、あらゆる生命活動を停止させ、たんぱく質を凝固させる
    ♧固定液に反応して基底果粒細胞の果粒が黄色く見えるので、腸の「黄粉細胞」は略して「EC細胞」と呼ばれる
    ♧膵臓のランゲルハンス島という内分泌細胞ではインシュリンなどが分泌される
    ♧腸の基底果粒細胞は、上部がセンサーのように働き、下部からホルモンを放出する。味蕾の細胞と働き方が似ている

    ♧各刺激によって次のようにホルモンが放出される
    0.4%塩酸→セクレチン放出
    卵黄やアミノ酸→CCK
    肉、酒、重曹→ガストリン
    ブドウ糖→セロトニン

    ♧食べ物が酸性に傾くとガストリンの出が悪くなる
    ♧産学協同は薬屋がスポンサーの意
    ♧ホルモンの名前の末に
     「イン」→機能促進(ガストリン)
     「オン」→機能抑制
    ♧空腹時に胃から小腸、さらに大腸へと筋肉の収縮の伝播が繰り返される。腸の中には食物通過後も腸から剥げ落ちた細胞や腸内細菌などの貯留物があるので送り出す働きを担う
    ♧膵臓はCCKの消化酵素分泌指示に対して細胞数とサイズの両方を増やす対応をすることがある
    ♧多様な食物を摂ることは、腸のセンサー細胞を刺激して、胃腸や膵臓を強く大きく保つのに役立つ
    ♧血糖値が高すぎる(糖尿病)と、さまざまな細胞に支障をきたし、低すぎると脳のニューロンが死んでしまう
    ♧血中の余剰カルシウムは骨に蓄積される。欠乏すると骨からカルシウムが引き出される

  • 1991年初刊、1995年11刷
    30年前に既に脳腸ホルモンが知らされていたのか。25年前に私は何故この本を手に取ったんだろう…説明図や最終章のヒドラが気持ち悪かったことしか覚えてなかった。が、改めて読んでも古びていない名著だ。

  • 今日は何の日?:12月11日 胃腸の日

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  • ガストリンが胃液を出させる。
    アルカリ性とアルコールに反応する。
    最初に酒やスープを飲む理由。ビールだとたくさん飲めるが水は飲めない理由。
    酸性でガストリンが出なくなる=胃酸で減少する。
    ゲップが最初は出ない理由。

    モチリンが空腹時に胃を動かし、おなかが鳴る。

    酒は消化を進め胃を厚くする。
    枝豆で糖尿病を軽くできる。

  • 腸・ホルモン・神経系について門外漢にも分かりやすく書いているが、なにより著者の豪放磊落な文章が良い。オレガオレガという自己主張もとても楽しい。
    科学者たちの人間味あふれる一面が垣間見れる。

  • 1991年刊。著者は新潟大学医学部教授。

     腸は第2の脳と看做されるようになってそれなりに経つが、より正確に言うと腸で受け取った情報がホルモン・システムを通して、ヒトの生体機構にダイレクトに結びつく。
     その内分泌情報伝達は所謂神経系による情報伝達とは独立したものということのようだ。

     本書はその内分泌情報伝達機構の解明(とりわけ神経系からの独立性)の研究に真摯に取り組んだ著者らの苦闘と想いの詰まった書である。

     内容で言えば、コレラ菌(コレラトキシン)が下痢を起こす成因論の追求が興味深い(ただし本書では未解明)。あるいは具体的な説明は省かれており、未だ争いがあるが、食事に伴い血液中に増大するホルモンCCKが脳に作用し眠気を催す機序もなかなか面白い目線であった。

     一方、研究者魂というものも描かれるが、中でも内分泌系の研究において、戦前の業績だけが外国人にのみ知られ、国内では忘れられた存在。その小坂隆雄教授を表舞台(国際学会)に招聘し、万来(特に外国人研究者)の拍手喝采の元において、その業績をたたえる役割を担った点が感動的だ。

  • 著者の「シンポジウム」の豪快さが
    想像できて、楽しい。
    (2015年10月03日)

  • 研究対象としては地味(と著者が言っている)な臓器である腸の腸能力の話。脳や神経系から自律して食物や有害物質に反応し、いろいろ分泌する腸や胃や脾臓のカラクリを解き明かしてきた研究成果の総括的エッセイ。本来の成果紹介のみならず、古き良き時勢の研究室の思い出話への寄り道が多くて、やや辟易するが、これは確信犯だと、あとがきで著者が吐露しているので仕方がない。さて、この腸能力の仕掛けは、脊椎動物のみならず昆虫の消化器官も同じとの事。しからば、我等脊椎動物と節足動物の共通祖先のヒドラ君も同じかと調べるとやはりそうだったようで、即ち、我々はお腹の中にヒドラを飼っているのだ。

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