ボランティア―もうひとつの情報社会 (岩波新書 新赤版 235)

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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302353

感想・レビュー・書評

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  • ボランティアをする側、募集する側として、立ち止まってボランティアを捉え直したくなったために読んだ。
    途中、経済の話なんかは難しかったが、ボランティアと捉え方に共感しっぱなしだった。なんかボランティアをやっていると人に言えない、もやもやしているところが言語化され、そしてどーゆーものかを新しく定義してもらった、スッキリした感。

  • ボランティアが開く新たなつながりの形について、社会哲学的な観点から考察をおこなった本です。

    1992年に刊行された本なので、現在とはボランティアをめぐる環境が大きく異なるという印象は否めません。阪神淡路大震災で若者のボランティアに注目が集まり、さらに現在では、ボランティアに「自分探し」を求める人びとへの批判の声も聞かれるようになっています。しかし、そうした状況の中で、改めて本書から学ぶことも多くあるように思います。

    まず目に留まったのは、たとえ「焼け石に水」であっても、とにかく役に立ちたいと思っている人、あなた方に関心を持っている人が「ここにいる」ということを示すだけでも意味がある、と論じられている箇所です。

    さらに著者は、ボランティアに関わることで、自分とは関係ないと思われた問題が、切実感を伴う問題となることに注目します。このことを著者は、哲学の他者論などで用いられることの多い「ヴァルネラブル」という言葉で言い表しています。難民救済のための募金を求められたとき、初めから断ってしまえば、多少のうしろめたさはあっても、それで事態は収まります。しかし、もし協力を表明したとすると、募金箱に百円を入れても、千円を入れても、一万円を入れても、「なぜもっと出せないのか」と問われる「つらい」立場に立たされることになると著者は言います。これがヴァルネラブルな立場に身を置くということです。

    現在、「自分探し組」と批判されるボランティア参加者たちが現われていますが、ともあれ彼らは、著者のいうヴァルネラブルな場所に身を置いたということを、まずは認めるべきだろうと思います。その上で、そうした「つらい」立場から、どのような一歩を踏み出すのかということを、一人ひとりが考えていけばよいのではないでしょうか。

    そのほか、ボランティア活動を、社会の新しいネットワークとして捉えなおそうとする考察もおこなわれていますが、やや抽象的な議論にとどまっているように思います。

  • この本はタイトル通り「ボランティア」の具体的事例が数多く挙げられている。ある夫妻が貧しい子供たちに向けて始めた給食プロジェクトが発展していき、三万人を巻き込む巨大プロジェクトになった例。ある少年の思い付きにより始めったホームレスに毛布や食事を配るボランティアは新聞に取り上げられるようになった。
    もちろんこのような大きい例ばかりでない。何らかの困難を他人の問題として切り離さず、困難を抱える一人として「かかわり」を持ち、「つながり」をつけようとすること。これがボランティアだという。
    何だかとても大きいことに見えてきて、「自分に余裕がなければ始められない。」と思うかもしれない。この本の副題に「もうひとつの情報社会」とあるように、ボランティアとネットワーク論を結び付けている。ネットワーク、つまりつながりを指す。ボランティアに必要なのは、始める少しの勇気と「つながり」を求めようとする気持ちなのではないか。

  • 良書!

  • 他人の問題を、自分と同じ球面上にあると考える。相互依存性のタペストリーの中で、「他人の問題」を切り取らない、傍観者でいない。

  • 阪神大震災以降ボランティアというものが大きく取りあげられるようになりましたが、この本の発刊は1992年なので、阪神大震災発生前のもの。福祉の分野では特にボランティアによる活動が一部ですが活発に行われていましたし、CSR活動もそこそこ行われていたみたいです。現在はどうなんだろうな・・・?と思いながらも自分がものごごろつく前の現状を知ったという感じです。

  • 全体的に、顔写真があるので、人の顔が分かるボランティア活動の大切さを感じさせてくれた。
    ボランティアまず、人ありきだということがよくわかった。

    ボランティアという言葉の意味として、奉仕活動家、篤志家、志願者であるということを、日本語で説明があるとよかったかもしれない。

    最後の1割が、PDS(パブリックドメインソフトウェア)と、日本IBM,富士ゼロックスの取り組みを書いているが、分かりにくかった。
    パブリックドメインソフトウェア(PDS)とオープンソースソフトウェア(OSS)は方向性が異なります。
    PDSは社会所有のソフトで、OSSは情報公開ソフトです。
    PDSでも、情報公開でないと、試験をしなくてはならず、必ずしも有用とは言えません。

    そのため、PDSという言葉が最近流行らなくなったことからも、PDS賞賛はちょっとという感じです。
    外資系の会社の取り組みはすばらしいのでしょうが、どういう身になったかがあいまいのような気がします。

    最後の1割は、時代的なものなので、割り引いて読めば、今でも十分価値のある本だと思います。

  • 最近は登録してから買うようにしている。

  • 情報学的、ネットワーク組織論的観点からボランティアを考察しています。
    なのでボランティアそのものの内容と情報考察の比率は4:6、乃至3:7でしょうか。
    情報学的考察については客観的データ等がなく、ひたすら論理的にまとめてあり、しかし論拠が薄いということはなく、肩肘張らずに読める内容になっています。
    まぁ、言ったらおしまいですが、情報のもつ特性とボランティアのダイナミックな動きを絡めている点について、『弱い紐帯』という理論が社会心理学にあり、そこからボランティアに言及すると面白いものになったと思います。
    人的ネットワークの構成や社会心理学の発展を待たなければならないですが、その先端はある程度有用だし(スモールネットワーク等)、さらに言えば、本書にて企業がボランティアに取り組む姿勢のアンケート等が若干稚拙で、何かにつけ『これからの動向に注意したい』等と先送りする箇所が多々あり、もう少し詰めて時代の尖端を言葉に著すのが学問なのに、結果論的内容は八方美人(悪い意味で)に感じました。

    初版が92年、それを勘案すれば致し方ないのかも知れません。それでも示唆に富んだ内容なので、一読の価値アリです!

  • 展示期間終了後の配架場所は、1階 学士力支援図書コーナー 請求記号:369.1//Ka53

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著者プロフィール

慶應義塾大学名誉教授、明治大学特任講師。
1971年慶應義塾大学工学部卒業、1975年スタンフォード大学Ph.D.。ウィスコンシン大学コンピュータサイエンス学科準教授、一橋大学商学部教授等を経て、1994年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、2007年同政策・メディア研究科委員長。2016年より慶應義塾大学名誉教授。専門は、ネットワーク論・コミュニティ論・ソーシャルイノベーション。
主な著作に、『ボランティア もうひとつの情報社会』岩波新書、1992;『空飛ぶフランスパン』筑摩書房、1989;『日本で「一番いい」学校 ―― 地域連携のイノベーション』岩波書店、2008;『コミュニティのちから ―― “遠慮がちな”ソーシャル・キャピタルの発見』慶應義塾大学出版会、2010(共著)ほか。

「2016年 『スポーツのちから』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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