民族と国家: イスラム史の視角から (岩波新書 新赤版 260)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302605

作品紹介・あらすじ

冷戦の終わりは、新たな緊張の始まりでもあった。湾岸戦争、ソ連解体、ユーゴスラヴィアの分裂と内戦を通して、民族と国家をめぐる未曾有の難問が浮かび上がってきた。しかも、どの紛争にもイスラムの影がつきまとう。民族問題とは何か。解決への糸口はあるのか。イスラムの歴史に生きた人々の知恵と試行錯誤を手掛かりにして考える。

感想・レビュー・書評

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  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BN08512464

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】

  • イメージとしての民族と国家◆イスラム史のなかの民族◆パックス・オットマニカ◆愛国心か、ナショナリズムか◆ムハンマド対マルクス◆「高貴な民」の目覚め◆イスラム帝国の終焉◆民族と国家のリアリズム

  • オスマン帝国を中心とするイスラム史をたどりながら、ヨーロッパの民族・国家観を相対化する視座を示している本です。

    中心となっているのは第一次世界大戦までのイスラム史ですが、とくにオスマン帝国の内部における諸民族のアイデンティティのあり方に、本書での著者の関心は向けられています。また著者は、ヨーロッパとイスラム世界のパワー・バランスの変化によって、イスラム世界におけるアイデンティティのありように変化が生じたことにも言及し、そのことが現代のイスラム世界をめぐるさまざまな問題の淵源となっていることを明らかにしています。

    ヨーロッパ政治思想史の枠組みを「外部」の視点から見なおすための視点を教えられたという意味で、たいへん興味深く読みました。

  • 1993年刊。東京大学大学院総合文化研究科教授。ムスリムの正当継承者たるオスマン帝国の成立と解体過程を描きつつ、宗教にも民族にも寛容であった普遍宗教ムスリムと、西欧国民国家概念により変容を遂げるイスラム諸国の史的展開を描く。本書で描かれるのは民族と国家の共通性・差異性、その中での宗教の役割である。時に従属し、時に独立する関係にある三者。そのダイナミズムが新書サイズでコンパクトに説明される。特に世俗主義者アマルテュルクによるトルコ革命にて、国民国家の紐帯をイスラムに求めざるを得なかったという逆説が興味深い。

  • 職場のNGOの先輩に薦められた本。第一次世界大戦以前のイスラム世界の中での「民族」と「国家」という概念の形成の経緯と変遷を詳しく説明した新書。欧米などで見られる国家観とナショナリズムが中東では決してそのまま適用できるものではない事。また、同様に民族主義という括り方も安直である事が非常に良く理解できた。また、第一次世界大戦前の歴史を参考にしているので、時を経ても褪せない有用性がある。トルコ派遣において一般的に言われるトルコ人・シリア人・クルド人など様々な方と仕事をする事になるので、学んだ事を常に意識し、感度高く居たい。

    メモ:
    ・歴史的地理的所以により形成された「国家観」はある程度ある、
     フセインの提唱した「パン・アラビズム」は侵略者の詭弁
    ・現代アラブ国家の起源:
    1.) イマーム首長一致型支配(イエメン、オマーン、リビア、モロッコ)
    2.) イマーム首長連合型支配(サウジアラビア)
    3.) 非イマーム首長単独型支配(クウェート、バハレーン、アラブ首長国連邦)
    4.) 官僚軍人寡頭型支配(アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプト)
    5.) 植民地委任統治型支配(イラク、シリア、ヨルダン、パレスチナ、レバノン)
    ・イスラムの台頭により、血縁や土地ではなく同一の宗教による統治に遷移
    ・従属的な異教徒と敵対的な異教徒(民族的な相違より重要)
    1.) イスラムの館(ムスリム)
    1.1) ズィンミー(イスラム法の優越と人頭税・土地税の支払いを条件に信仰の保持を約束された)
    1.2) ムスタァミーン(通行安全と保護のための契約関係を持つ事が認められたもの、商人)
    2.) 戦争の館(ハルビー)
    ・全ての人類はムスリムに改宗してイスラムを受け入れるか、キリスト教やユダヤ教の信仰を維持しながらズィンミーとしてイスラム支配に従うかのいずれか。この目標完遂まで戦うのが宗教的義務=ジハード

  • オスマントルコの成り立ち、政策を起点に、近代のイスラム世界の構造を説明している。

  • 民族と国家の歴史やイスラム文化の価値観を知る上での、大変分かりやすい入門編。

  • 世界の局所に存在する国際紛争を民族と国家という枠組みを使ってイスラム史から考察しています。

  • 学部ゼミのディベートのテーマが「紛争への国際社会の介入の是非」であったので、紛争(とりわけ内戦)のメカニズムを民族と国家と言うキーワードで、イスラム史の観点から解く本書を読んだ。
    イスラム世界の通史について、高校時代に習わなかったこともあり、イスラム史独特の単語(ウンマetc)と言った語でつまずくこともあったが、イスラム史の全体の流れの把握、とりわけなぜ現在のパレスチナ紛争が起きているかを知る上では有益な文献だった。

    最後の民族と国家についても、現在の紛争を理解する上で示唆的。

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著者プロフィール

一九四七(昭和二二)年札幌に生まれる。
現在、東京大学大学院総合文化研究科教授、学術博士。中東調査会理事。
最新著書として、『岩波イスラーム辞典』(共編著、岩波書店)、『歴史の作法』(文春新書)、『帝国と国民』(岩波書店)、『歴史のなかのイラク戦争』(NTT出版)など。

「2004年 『イラク戦争データブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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