日本の近代建築 下: 大正・昭和篇 (岩波新書 新赤版 309)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303091

作品紹介・あらすじ

明治の時代とともに展開した近代建築も、大正に入ると大きな転機を迎える。第二世代が登場し、彼らは建築とは何かを内省し、社会性、技術の表現、実用性などのテーマを発見する。新しい感性に目覚めアールヌーヴォーを手がける。昭和に入ると、モダニズムの影響のもとに第三世代が花開き、ファシズムの洗礼を経て、その流れはいまに続く。

感想・レビュー・書評

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  • 藤森照信ニクいな〜ってなるほど面白い本です。ラストがめちゃいいです。

  • 先月読んだ上巻に続き下巻も読みました。大正時代にもなると西洋の建築理論が整理されて日本人に入っているので用語なども聞いたことのあるものが中心となります。とはいえ、個々の洋風建築にどの国の影響かの違いがこんなにあることに気づいてなかったので今後古い建築物を見るときの目が変わりそうです。
    あとこれは出版から30年近く経っているから言えることですが、ぜひ戦後編も出してください藤森先生。

  • 日本が明治時代を通して学んだ西洋の建築、いわゆる近代建築が時代の雰囲気によって大きな転換期を迎えた大正から、昭和の初期モダニズムの時代までを詳細に綴った本。
    それぞれの時代背景によって大きく影響された日本の近代建築が変化していく様子を丁寧に解説していてとても勉強になる。
    有名な建築家や目にすることのできる建築物も幅広く対象にして書かれているので、上巻(幕末・明治篇)よりも理解しやすい。
    上巻と合わせて読むことにより、日本の近代建築史の流れを概観できる良著。

  • 建築様式に着目した近代建築史。

  • 日本の大正、昭和、第二次世界大戦までの建築の歴史を建築物と建築家、芸術運動と絡めて概説する。
    アール・デコ、アール・ヌーボー、セセッション、モダンデザインの表現派、ライト派、バウハウス、オランダのモンドリアンのディ・スティル派からのコル・ビジュエ派など。
    19世紀の産業化・近代化の台頭に伴い歴史・伝統主義が薄れ、様々な異国様式を導入したあと芸術は内省化し、植物→鉱物学→幾何学→数式の流れるモダニズムが新時代の表現として隆盛を極めるのであった。

    興味深かったのは、鉄骨やコンクリートといった新しい素材をどのように活用するか19世紀の建築家たちが試行錯誤を重ねたこと。日本では耐震構造の問題からアメリカの鉄骨様式(関東大震災で壊れた)ではなく鉄筋コンクリートを使った独自の耐震技術が開発されたこと。

    横河電機の創業者が横河民輔という建築家であったこと。

    日本の都市計画が大蔵省の反対からなかなか資金的援助を受けられず、大正時代に用途地域制、建ぺい率などの建築制限、耐震制限、防火制限に行き着いたこと。
    個人宅やプロジェクトなど散発的な場所が建築家の表現活動場所であったこと。
    スラム問題から集合住宅の整備が行われ、イギリスではハワードのガーデン・シティ、ドイツのジードルングが日本独自の形で取り入れられ渋沢栄一の田園都市の開発や、同潤会が公営住宅を提供したことなど。

    とても内容の濃い書籍だった。

  • 江戸末期から始まる日本の近代建築史の後半。明治末から第二次世界大戦までの期間を扱っている。

    上巻では日本に西欧の建築がどのように入ってきたかということが主眼であったのに対して、下巻は、日本で教育を受けた建築家が実作をつくり、西欧の建築の潮流とほぼ時期を同じくしながら発展している様子が描かれている点が大きく異なる。

    その背景には、日本の近代建築教育制度が離陸し、建築家がプロフェッションとしてもある程度確立し始めたからという理由もあるであろうが、それだけでなく、建築自体が歴史主義や気候風土といったもの以外に、機能、経済、幾何学的構成の美学といったものによって計画される近代建築の特徴も寄与したのではないかと感じた。

    こういった必ずしも地理的、歴史的要因に紐づけられない要素を背景にする建築が登場した時に、日本の建築家も努力すれば西欧の最先端と同じ土俵で競うことができる環境が整ったということなのではないかと思う。

    また、建物をつくるということだけでなく、日本の都市計画や建築法規、さらには住宅供給制度などの起原を作った「社会政策派」の登場に触れられている点も興味深かった。

    技術と法と政策を武器に、地震、火事、住宅、都市の四つのテーマに取り組んだ一連の専門家(「建築家」という言葉のニュアンスとは違った職能と思われる)の活躍が詳しく書かれており勉強になった。

  • 上巻の幕末・明治篇は建築界がフロンティア・パイオニア精神にあふれ読んでてわくわくしたが、下巻の大正・昭和篇では建築界も徐々に成熟し始め、多くの歴史的建物が生まれるも、時代のエピソードとしてはやや停滞感。ちょっと退屈?と思い始めたところで盛り上がったのが「10.社会政策派」の章。最初の頃に結びつきが強かった国家・政治と建築の関係は、社会が成熟してくると、都市や社会の問題とも結びつき始める。関東大震災を経ての復興都市計画のくだりなんか最高に面白い。そしてモダニズムの時代の萌芽からコルビジェまで一気に進み、終戦を迎える。あー藤森先生の戦後篇が読みたい!

  • 建築の素人にはレベルが高い内容なので、私には最初から通読は難しかった。人名、建築名索引が充実しているので、旅先で出逢った建物や、気になる建築家について拾い読みをするのが楽しい。

  • 西洋の建築様式をなぞるのが精いっぱいだった明治の日本人建築家たちの後継として現れた第二世代。伊藤忠太、横河民輔、佐野利器・・・それぞれに独自性を打ち出した建築論を展開し、関東大震災を経て地域の区画整理から耐震構造の研究へと日本の建築は大きく躍進していく。
    やがて世界的に起こるモダニズムの波に、抗うもの、乗るもの、巻き込まれるもの、様々な主義主張の建築家が生まれては消え、お雇い外国人に頼んでなんとか西欧っぽい建築を作ろうと苦心していた時代から見ると「遠くへ来たもんだ・・・」と思わず呟きたくなるような時代の変遷を感じる。
    著名な建築家たちの関係性や時代背景などがわかり、それまでばらばらに脳内にあった建築家や建築が自分の中でマッピングされていくのが面白い。
    ちょっとしたエピソード(村野藤吾の建築にナチスを意味するモチーフが掲げられていて、彼自身はマルクス主義だったという話とか)も興味深く、楽しく読んだ。
    最後に藤森氏があとがきで書いているように「主観と憶測の楽しみ」の混じった本であるので、完全なる建築史の教科書としてしまうには偏りがあるのかもしれないけれど、読み物として楽しんだ。

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著者プロフィール

1946年長野県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専攻は近代建築、都市計画史。東京大学名誉教授。現在、工学院大学教授。全国各地で近代建築の調査、研究にあたっている。86年、赤瀬川原平や南伸坊らと「路上観察学会」を発足。91年〈神長官守矢史料館〉で建築家としてデビュー。97年には、〈赤瀬川原平邸(ニラ・ハウス)〉で日本芸術大賞、2001年〈熊本県立農業大学校学生寮〉で日本建築学会賞を受賞。著書に『日本の近代建築』(岩波新書)、『建築探偵の冒険・東京篇』『アール・デコの館』(以上、ちくま文庫)、『天下無双の建築入門』『建築史的モンダイ』(以上、ちくま新書)、『人類と建築の歴史』(ちくまプリマー新書)、『藤森照信建築』(TOTO出版)などがある。

「2019年 『増補版 天下無双の建築学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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