中世に生きる女たち (岩波新書 新赤版 377)

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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004303770

作品紹介・あらすじ

後醍醐天皇寵妃の阿野廉子、悲劇の佳人後深草院二条、「尼将軍」北条政子、ならびなき権勢を誇った日野富子、秀吉の糟糖の妻ねね、等々-中世を彩った女性群像をちりばめつつ、公家・武士・庶民の妻そして尼僧の姿を描きだしていく。母性・家政・性愛をめぐって縦横に展開される数々のエピソードはまことに興味深い。

感想・レビュー・書評

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  • 「家」の形成(夫婦とその間にできた子どもが同居して家族を作りそれが核となって形成される)が中世に始まることを念頭に、「家」に包含される公家、武家、庶民といった各階層の女性、さらに「家」からは弾き出された存在でありながらも「家」を社会の基本単位とし、家族道徳をその基本原理として「家」的な主従関係を持つ「鏡の裏の世界」のような存在としての尼僧を通して、「家」の具体的なあり方を描く。終章では、母性尊重思想や穢れ思想などについても触れられ、著者の考えも示されている。

     1995年初版刊。今回は「牙儈」について調べることがあり、参考文献として挙がっていたのでその確認のため再読した。本書自体は発行から既に30年近く経過しているが、今また私たちは日本の「家」をめぐって新たな課題を突きつけられており、その前提となる歴史性に改めて目を向け、考える必要がある。

  • 1995年刊。著者は大阪外国語大学教授。◆日本中世の女性で即座に脳裏に浮かぶ北条政子、日野富子、北政所(寧々)。かかる小説・ドラマで著名な人物だけでなく、知る人ぞ知る後深草院二条(あの「とはずがたり」著者)や阿野康子(後醍醐寵愛の女房)といった史上に残った人物。あるいは、尼僧や女商人というような無名の人々のありようを文献・絵画の史料解析を通じて行っていく書。背景に存するのは、中世における「家」の在り方。現代や明治期と異質なのは勿論、江戸期とも大きく異なる。当然、そこでの女性の立場や役割も中世特有のものだ。
    換言すれば、私的な家政と連続性の有する公的機能。その家政の軸に女性がいたということであり、日野富子に典型が見えると言えそうだ。◆ただかような著名人は、色々なところで語られるし、正直今更の感なしとしないが、かような機会の少ない尼僧(神仏習合の影響で、神社の巫女と重畳されつつ時代相)と、中世寺院の役割が、希少かつ本書の特徴を表しているだろう。◇しかし、その点について、酒造りのみならず、もう少し深く切り込んで欲しかった。特に、中世寺院の役割を詳述したものが読みたかったんだよなぁ……。

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著者プロフィール

1934年、西宮市生まれ。滋賀県立大学名誉教授。石川県立歴史博物館館長。文学博士。専攻は日本中世史、日本女性史。文化功労者。2010年文化勲章受章。『日本中世被差別民の研究』で角川源義賞受賞。著書はほかに『中世に生きる女たち』『天皇と中世文化』『能楽のなかの女たち―女舞の風姿』など。

「2014年 『女性芸能の源流 傀儡子・曲舞・白拍子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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