- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004304265
作品紹介・あらすじ
インターネット、データベース、CD‐ROM、光ファイバー…。マルチメディアに関する様々な動きが、マスコミで報じられない日はない。現代社会に大きな変革を迫っているマルチメディアの発展のために、あるべき情報保護法制とはどのようなものか。その要諦である著作権を中心に解説しながら、将来を展望する。
感想・レビュー・書評
-
仕事のための読書。
色々と読みたい本はあれど、仕事で関わる頻度の高さを優先して、知的財産分野の一冊にしました。
木村草太先生が、ご著書の中でこちらを入門書としてすすめられていたのを見て、アマゾンを経由しバリューブックスで注文。
本書は元東京大学教授(現在は名誉教授、弁護士)であり、知的財産法の第一人者である著者による、マルチメディア時代の著作権法の意味とあり方について書かれた本です。
コンピュータ技術の発展を背景に、マルチメディアーー本書の中での説明の一部を借りると、文字や音といった表現形態をデジタル技術で統合した伝達媒体またはその利用手段で、インタ
ラクティヴに操作できる環境、例えばCD-ROM版広辞苑などーーが社会に浸透し始めていた時代を背景に、1995年に刊行。
著作物が細分化され、これまでとは一線を画する量とスピードでさまざまな創作活動に利用される社会において、創作者の利益を保護しつつ、文化の発展を妨げない法制度はいかにあるべきか、考察されています。
著作権法自体の説明はとても簡潔で、それよりも社会や経済の中での知的財産法や著作権法の役割について解説された本書。
休み休み、読了までひと月ほど要してしまったけれど、未熟ながらも著作を扱う仕事に就いている身として、面白く読むことができました。
というか、普段、「著者」や「著作物」といった言葉を頻繁に使っているにも関わらず、今まで言葉の意味をきちんと考えたことがなかった(汗)
本書が書かれてから、20年以上が経過した今の社会では、ネットを介したコンテンツの配信が進み、SNSを通じて瞬時に、そしてとても簡単にさまざまな著作物を共有する仕組みが整えられています。
そんな中で、私自身、文章や映像の出どころや経路を意識せずになんとなく眺め、大量に消費することに、良くも悪くも慣れてしまったように感じます。
でも、例えばTPPなどで強い商業資本が有しているコンテンツの著作権は手厚く保護される一方、漫画のネタバレや違法アップロードが横行している現状には、違和感があります。
受け手からすると、好きなディズニーのキャラクターも、お気に入りの漫画の主人公も、どちらも等しく大切であるはずなのに、保護の強さにに偏りがあるのはなんだかなー、と。
「法というものは、一般的には保守的な性格を有しており、事実の後追い的な性向をもっている。……法は漸進的な発展を遂げるのが通常であるが、ただ、後から眺めると、たとえ漸進ではあっても、その一歩が革命的なことであった、ということはありうる。」というくだりが、本書の中で心に残りました。
今の社会に望まれる著作権法の姿は、私には想像もつかないけれど。
現実の中で、著作というものに、とても近い立場で関わらせてもらっているのだから、少しずつでも情報の流通や課金のしくみを学ぶことは、意識して続けていきたいなと思いました。
こうして書いておけば思っただけにならない……はず!
亀のような学びのスピードではあるけれど、がんばれ、自分!!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
コンピュータの登場によってアナログだった情報がデジタル化され,情報の複製が容易となった.そして,インターネットの登場によりその複製された情報が容易に広まる現状にある.
端的に思うことは,著作権法が制定された当時に想定されていた状況と現状はすでに乖離していること.そして,(JASRACが行っているのかな?)著作者への利益還元システムも旧態依然になってしまっているということだ.デジタル化やインターネットの利点を生かしきれていない.複製が容易だからそれを防ぐとかいう発想ではなくて,それはデジタル化のメリットでコストがほとんどかからないのだから,複製した情報が増えるに従って1つ1つの情報料を逓減させていく,というようなことをやってほしいよ.
本書はとても整理されていて読みやすかった.良書. -
(1998.07.11読了)(1997.07.05購入)
(「BOOK」データベースより)amazon
インターネット、データベース、CD‐ROM、光ファイバー…。マルチメディアに関する様々な動きが、マスコミで報じられない日はない。現代社会に大きな変革を迫っているマルチメディアの発展のために、あるべき情報保護法制とはどのようなものか。その要諦である著作権を中心に解説しながら、将来を展望する。
☆関連図書(既読)
「コンピュータ技術者になるには」宍戸周夫著、ぺりかん社、1997.06.10
「ウィンテル神話の嘘」小林紀興著、カッパブックス、1997.09.30
「消費者主権時代のコンピューティング」栗田昭平著、コンピュータ・エージ社、1998.01.26
「インターネット自由自在」石田晴久著、岩波新書、1998.03.20
「エンタープライズ・コンピューティング」宍戸周夫著、プレジデント社、1998.04.05
「インターネットの大錯誤」岩谷宏著、ちくま新書、1998.04.20 -
タイトル通り、マルチメディア時代の著作権の解説本。東大法学部教授の綴った解説本で、明瞭に著作権の本質が語られている。インターネット普及以前に書かれたということもあり、インターネットに言及している箇所は少なく、今日的には読んでいてやや前時代的な感じを持つが、それでも本質的な部分は未だ輝きを失っていない。著作権の、特に私権保護と公共財的扱いとのバランスを図ることの必要と重要性が、特に会社のような私的な組織においても生じると、非常な実感を持って感じさせられた。企業で著作物の制作に関与する者は必読の書である。
-
著作権について詳しいことを書かれている。
これからこのことについて気をつけていきたい。 -
著作権などの難しい話を分かりやすく説明し書いてある。
-
ひと通り読んだ感じでは、<br>
●平易かつ具体的な文章で解りやすい<br>
●新しい技術に対して正確に<br>
かつ本質的に論じている<br>
(出版当時から技術の進んだ<br>
現在でも全く遜色しない内容。)<br>
●実にバランスがとれている<br>
(著作権者・著作物利用者の<br>
いずれにも偏ることが無い。)<br>
──さすが専門家、さすが第一人者である。<br>
<br>
それと同時に、 2004年の著作権法改悪でもって<br>
著作権法の精神が相当に歪められているのだと、<br>
新たな知識に“かぶれた”頭で漠然と思う訳だ。<br>
(注:初めて読んだ時に Weblog に掲載した感想。)