- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004305378
感想・レビュー・書評
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岩波文庫の古典ギリシャもので好きな翻訳者である藤沢令夫先生によるプラトン入門。
著作を年代順に解説しており、それによってプラトンが探求したものが深化しながら、ときに自己批判しながらも展開されているさまが概観できた。そこから文庫のタイトルだけではわからない、著作群からなる関係性が見えてよかった。
個人的には、イデア論を自己批判した(また後世の誤解の元となった)『パルメニデス』にたいして、熱っぽくソクラテス=プラトンを擁護しているところが印象に残った。冒頭もそうだが、後世誤解に晒され続けているプラトンを救い出そうとする意思がーーもちろん藤沢氏は一級の研究者であり、テキストから救い出すのは勿論だけれどーー僕にとっては、論理いじょうにとても胸を打たれた。
冒頭、「金や評判・名誉のことばかりに汲々としていて、恥ずかしくないのか。知と真実のことには、そして魂をできるだけすぐれたものにすることには無関心で、心を向けようとしないのか?」と『ソクラテスの弁明』から引用している。素朴だと誹りを受けるかもしれないけれど、現代でもほんとうに大事なことだ。
終章において、プラトン哲学から現代批判をしていて(物質主義が蔓延する現代に対し、プラトン的な精神の大切さを説く)、それはあまりに単純すぎないかと思われるかもしれない。しかし「このような事態の進行に対してほんとうに対抗する力は、たとえ現実の勢力とはなりえないにしても、原理的には、『精神』原理しかないのである」(p.223)とかえす切実さは、僕は真摯に受け止めたいのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これからプラトン読んでいくにあたっての概説書として読んだんだけど、かなりわかりやすかった。たくさんの著作の中でどんな思想を・どのようにプラトンは発展させていったのか?という一番知りたかったところを、著作から丁寧に、また簡潔に引き出して解説してくださっているのがありがたい。プラトンが大好きなのはすごく伝わってくる。「創造主が世界を作るという思想はプラトンが初めて作った」など、?と思う箇所はあるのだが、読んでいてわくわくする本だった。
この本に従ってプラトンの思想の発展を見ていくと、ソクラテスの生き方からまっすぐにイデア論、哲人政治、イデア論の再検討、広がりを持つ宇宙論へ…とつながっていくのがとても鮮やか。もちろんプラトンは様々な解釈をされ、多様に受け取られてきた哲学者であるというのは当然なのだが(そしてプラトン本人がどうというよりはその「受け取られ方」を今後意識しなければいけないのだが)、この読み方に乗っかってとりあえずはプラトンを読んでいきたい。 -
「借」(大学の図書館)。
プラトンの哲学の中心的な部分の発展を前期から後期にかけて、著作を援用しながら解説している本。
プラトンの専門家による解説だから、かなり詳しい。
ただ個人的にはちょっと読みにくかった。 -
(2003.03.28読了)(2003.03.06購入)
内容紹介 amazon
西洋哲学の祖と仰がれるプラトン.だが,その哲学の内容はしばしば通俗的理解によって歪められてきた.ソクラテスの影響,イデア論を中核とする思想の展開と最終的達成,さらに現代に生きるわれわれにとって彼の哲学がもつ意義.プラトン哲学の核心を,研究の第一人者が長年の蓄積の上に立って平易に語った最上の案内書.
☆関連図書(既読)
「ソクラテスの弁明・クリトン」プラトン著・久保勉訳、岩波文庫、1927.07.03
「饗宴」プラトン著・久保勉訳、岩波文庫、1952.10.05
「ソクラテス」田中美知太郎著、岩波新書、1957.01.17 -
古本屋にて350円で購入。プラトン研究の第一人者であった著者による最上のプラトン哲学案内書にして、ことあるごとに批判されてきたプラトン哲学を擁護するための一貫した弁明書でもある。最早正確な意図をもって使われることのほうが稀になってしまった"イデア"論を正しく伝え直すには、浩瀚な専門書よりもこうした新書のほうが向いているはず。
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20100908 読了