ライン河: ヨーロッパ史の動脈 (岩波新書 新赤版 639)

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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306399

作品紹介・あらすじ

中世の古城やローレライの伝説など、ロマンティックなイメージをまとったライン河は、他方でドイツとフランスの激しい抗争の舞台となり、ヨーロッパ全域に戦争の惨禍をもたらしてきた。ラインをめぐる波瀾の独仏関係史をエピソード豊かにたどり、ライン河畔に芽ばえた"ヨーロッパ精神"から、欧州統合の行方を展望する。

感想・レビュー・書評

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  • ライン川の左右に広がるフランスとドイツ。両国の関係をライン河周辺をめぐる地域・ラインラント、アルザス・ロレーヌ、ルール、ザール地域などの帰属の変遷などをふまえ読み解く。自分はほとんど両国の歴史を知らなかったことが判明。前に「ドイツ史10講」を読んだが、それよりこちらの方がおおまかな流れとフランスとの関係性で書いてあり、分かりやすかった。

    独仏はお互い仮想敵国として敵対してきたという。特にフランスは第一次大戦、第二次大戦でドイツに侵入されたとの思いが強く、「強いドイツを作ってはならない」との思いが強く、ライン河こそ自然の国境線と思っているのに対し、ドイツはそうではない。その争奪戦は遠く「フランク王国」まで遡り、対照的な歴史を歩み、三十年戦争(1618-1648)、ナポレオン戦争とフランスはドイツに侵攻し、今度は第一次、第二次大戦でドイツがフランスに侵攻する。

    中央集権に地方分権、温和で農産物の豊かなフランス、自然条件の厳しいドイツは商業に力をいれ工業が発達、カトリックを守ったフランスに対し宗教改革でプロテスタントが多いドイツ、しかし宗教の影響は微妙で、ルイ王朝など強力な王国は教会を支配下に置いたのに対し、ドイツでは小さな各領国で新旧両教とも国教的地位を保った。

    メモ
    ライン河の西、ガリア人の住んだフランス、東、ゲルマン人のドイツ。481年にピピンによって「フランク王国」として統一されるも、相続争いから「西フランク」「ロタリンギア」「東フランク」に分かれ(ヴェルダン条約843)、さらにメルセン条約(870)によって、中間の「ロタリンギア」がさらにほぼ中央で西フランク、東フランクに分かれ、南はイタリアとなる。

    ここにフランス、ドイツ、イタリアの線がひかれたが、フランスとドイツのその後の歩みは対照的だ。フランスにはケルト(ガリア)人、ローマ人、フランク族、ノルマン(ヴァイキング)人などが混在し混血し、これにバスク、ブルターニュ、アルザスなどの周縁地域が加わり「フランス人」が形成。そしてカペー朝、ルイ王朝と中央に権力が集中する国家が出現する。

    対してドイツではゲルマン民族が当初からいたが、小さな領主国に分かれ、統一した国家は1871年のドイツ統一まで無かった。

    ドイツの歴史家フリードリヒ・ヘールは、17世紀の半ばまでは独仏両国民の間に敵対関係はなかったが、三十年戦争(1618-1648)により、ルイ14世のドイツへの侵略により独仏間に致命的な不和の種がまかれ、その種は絶えず成長し第一次大戦を招いた、としている。

    片やフランスのドイツ史家ジョゼフ・ロヴァンは、三十年戦争からナポレオン戦争まで、ドイツはフランスの偉大さのために戦場となった。フランス人は「フランス中心に」みることに慣れてしまっているが、その歴史ゆえフランスはドイツの恨みを買い、19,20世紀の(ドイツの)フランスへの侵略を正当化することになった、としている。


    1999.10.20第1刷 

  • ライン河の歴史というよりは、ドイツとフランスの関係の歴史であった。

  • ドイツとフランスの境界に近い大河。
    スイスにまで渡る。
    フランク王国が、カール大帝後、東フランク、ロタリンギア、西フランクという3つの国に分割したことを知りませんでした。

    ちなみに、ドイチェランドとは、民衆の土地とのこと。

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著者プロフィール

1927~2015年。名古屋市生まれ。欧州問題研究家。東京大学法学部卒業後、NHK入局。NHKベオグラード、ボン支局長、解説委員。著書に『図説ヨーロッパの王朝』など多数。

「2018年 『図説 ハプスブルク帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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