オーストラリア: 多文化社会の選択 (岩波新書 新赤版 682)

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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306825

作品紹介・あらすじ

今日最大数の移民を受け入れ、多民族化の道を進むオーストラリアは、欧米ともアジアとも異なる社会を創出しつつある。在豪二七年の著者によるメルボルン報告は、家族、福祉、教育など日々の暮らしから東ティモール派兵、共和制移行、アボリジニ問題をめぐる取り組みまで、この多文化社会の姿を生き生きと伝え、日本社会のありかたに一考を迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 旅行でチョロッと見るだけではまったく見えてこない、オーストラリアの実情が分かる。2000年の作品だが、20年たってどれほど変わっているのだろうか。
    混血が進んでいること、名前へのこだわりの無さ、東ティモールへの複雑な思いなど、大変興味深かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/245584

  • (2015.06.27読了)(2008.06.22購入)
    副題「多文化社会の選択」
    オーストラリアの大学に勤めて27年になる著者によるオーストラリア社会についてのエッセイです。子供たちもオーストラリアの人と結婚し住んでいるので、オーストラリア社会には、かなり精通しているのではないでしょうか。専門が、比較社会学ということでもあるので、日本とくらべて社会制度がどう違うのかがよくわかります。
    戸籍制度がないとか、選挙は義務で、投票に行かないと罰金がとられるとか。
    日本の制度が当たり前と思っているとびっくりするようなことが多々あります。

    【目次】
    1 「オーストラリア人」とは誰のことか
    2 多文化社会の現場
    3 ためらうX世代
    4 懐疑的民主主義の世界
    5 福祉社会の裾野
    6 Bタイプの労働と「生活の質」
    7 アボリジニ社会のジレンマ
    8 近いアジア・遠いアジア
    9 日本から来た「越境人間」たち
    あとがき

    ●国籍(14頁)
    オーストラリアでは、新しく国籍を取得したからといって、出身国の国籍を放棄する必要はない。問題は出身国側の規定がどうなっているかによる。フランスやアメリカ、ニュージーランドなどは二重国籍を認めている。だから、こういう国の出身者は二つ以上の国籍を持つことが可能だ。国籍放棄ができない国もある。イギリス、ギリシア、ハンガリーなどの国籍を持つ人は、他国の国籍を取ってもイギリス人、ギリシア人、ハンガリー人であることをやめることはできない。当然、二重国籍となるわけだ。
    ●ジェンダー・ニュートラル(54頁)
    「女の子らしく」とか「男の子らしく」といった伝統的な男女の役割にとらわれない保育環境の中で、X世代は育ってきている。男女平等なライフスタイルを、幼年期から遊びの中で身につけさせるという教育方針のもとで成長した年齢集団なのである。
    ●大学の授業料(59頁)
    学生でもほとんど親の仕送りを頼らずにやっていけるのは、在学中に授業料を支払わなくてもいいという制度が確立していることと関係している。卒業後仕事について収入が確かになった時点から、少しずつ給料の中からツケが天引きされていく制度である。
    ●自分の名前を変えたい(77頁)
    旅券、免許証など身分証明書を三通用意し、申請書に元の名前と新しい名前を書きこんで提出すれば、それでおしまい。翌日、あなたの新しい名前を記載した文書が、郵便で送られてきます。
    ●結婚後の姓名(80頁)
    結婚証明書には、婚前の姓名を書き込むだけだ。その後どういう姓を名乗ろうと、役所の管轄問題ではない。
    夫と別姓で通している女性の間では、子どもの姓をどうするかがよく問題になっている。
    ●売春(84頁)
    オーストラリアの多くの州では、売春行為も買春行為も違法ではない。金銭による性の売買が望ましいとは言えないが、有史以来存在し続けたこの現象を、国家権力によって取り締まるというやり方には抵抗が強いからだ。
    ●失業手当(98頁)
    失業保険という考え方がなく、失業した人に対しては社会全体が保護にあたる。失業者であることが認定されれば、失業手当をもらえる。だから、学校を出て職探しをしたが就職できなかった若者も、失業手当の対象となるわけだ。
    ●高齢者福祉(103頁)
    高齢者福祉の考え方の核をなすのは、医療やリハビリの重要部分は施設で行うが、なるべく在宅で健康維持に励めるようにすること。しかし、家族が高齢者ケアを任されるというのではなく、さまざまな専門家が次々に当人を訪問して、介護や指導に当たる。
    ●遺言状(118頁)
    「家を買った直後か、初めての子供が産まれたときに、遺言状を準備するのは常識ですよ」
    ●労働(123頁)
    労働には二つのタイプがある・・・。一つは、会社や役所へ勤めたり、店を経営したりして、お金を稼ぐための労働である。これを、労働タイプAとするならば、もう一つ別に労働タイプBというものがあるのではないか。給料や収入を受け取るわけではないが、生活レベルを向上させる労働である。このBタイプの労働には、食事を作ったり、茶碗を洗ったり、掃除をしたりといった家事労働が含まれる。家の中の壊れたものの修繕、家の周りの修理なども、自分でやればこのタイプに属する。
    ●長期勤続休暇(132頁)
    長期勤続休暇というシステムがある。これはオーストラリアの全勤労者の権利だ。職種によって基準が違うが、例えば国家公務員の場合10年間働くと3か月の有給休暇を年次休暇とは別に取れる。20年間なら、ほぼ半年である。私企業では10年で2カ月、15年で3ヵ月というところも少なくない。
    ●「盗まれた世代」(143頁)
    先住民のコミュニティーから連れ去られて、白人の施設で育てられた子供たちのことである。1911年から1960年代の半ばまで、約半世紀にわたって、政府機関によって子供の略奪が繰り返されていた。盗まれた子供たちは、総数3万人を超えるとされる。
    当時の白人政府機関は、強引な同化政策を採っていた。未開状態に近い生活を送っている先住民の子供たちの一部を親から分離して、文明生活の中で育てるべきだというのである。

    ☆関連図書(既読)
    「オーストラリア6000日」杉本良夫著、岩波新書、1991.02.20
    「南太平洋物語」石川栄吉著、力富書房、1984.03.31
    「キャプテン・クック」ジャン・バロウ編・荒正人訳、原書房、1992.10.25
    (2015年6月29日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    今日最大数の移民を受け入れ、多民族化の道を進むオーストラリアは、欧米ともアジアとも異なる社会を創出しつつある。在豪二七年の著者によるメルボルン報告は、家族、福祉、教育など日々の暮らしから東ティモール派兵、共和制移行、アボリジニ問題をめぐる取り組みまで、この多文化社会の姿を生き生きと伝え、日本社会のありかたに一考を迫る。

  • アボリジニ文化をどれだけ増殖させれるかがオーストラリアの道ではないのだろうか。
    オーストラリア人とはなにか、多民族国家とは何かを考えるきっかけになるかもしれない。

    個人的には、オーストラリアでの記憶は、アボリジニ文化と、食事にでたわに、カンガルーの食感の違いでした。

  • オーストラリアに30年住んでいる著者による多文化社会・オーストラリアの多様な面を理解することのできる一冊。
    社会学教授としてのオーストラリアの深い観点も読み応えがある。

    戸籍制度がなく、選挙が義務になっており、学費は子供が就職後に自分で払っていく仕組みなど、日本との違いに驚かせられることも多い内容だった。

    今後オーストラリアへ移住を考えている私にとって非常に参考になる内容でした。
    オーストラリアへの留学や移住にご興味をお持ちの方は必読です。

  • [ 内容 ]
    今日最大数の移民を受け入れ、多民族化の道を進むオーストラリアは、欧米ともアジアとも異なる社会を創出しつつある。
    在豪二七年の著者によるメルボルン報告は、家族、福祉、教育など日々の暮らしから東ティモール派兵、共和制移行、アボリジニ問題をめぐる取り組みまで、この多文化社会の姿を生き生きと伝え、日本社会のありかたに一考を迫る。

    [ 目次 ]
    1 「オーストラリア人」とは誰のことか
    2 多文化社会の現場
    3 ためらうX世代
    4 懐疑的民主主義の世界
    5 福祉社会の裾野
    6 Bタイプの労働と「生活の質」
    7 アボリジニ社会のジレンマ
    8 近いアジア・遠いアジア
    9 日本から来た「越境人間」たち

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 一人当たりのGNPは日本よりも随分少ないのに、人々の生活はずっと豊かに見える。間違いなく豊かである。ケアンズ郊外にも広々とした家々が広がっており、人々は人生を楽しんでいるようであった。

    大学は無料(卒業してから給与で返済していく)、もちろん高校までの教育は無料だし、年金や失業保険や医療保険などは日本よりもずっと充実している。労働時間もずっと短い。

    結局国民が何を望むのかということと、どういう政府を持つことが出来るのか、ということが決定的に重要なんだろう。僕等は自分で住む場所(国)を決めることが出来る時代に生きている、とも言える。実際、ケアンズにはものすごくたくさんの日本人が住み、働いていた。

    Aタイプ労働とBタイプ労働の話は、なるほどと感心。GNPに換算されない日曜大工、ボランティア・・が大きいほど、GNPは小さいけども実際の生活は豊かになる。金で解決する社会はGNPは増大するけど、それがすべて。それ以外の価値がまったく創造されない。

  • オーストラリアの個人主義な社会システムやメンタリティをさっくりとまとめた本。28年も豪州に住んだがゆえに礼賛基調だが、客観的な視点を踏まえようと記述している。多国籍の移民国家が集まった、アメリカとは違う個人主義や互助システムの考え方に興味をもてる、入門書ではないか。

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