人道的介入: 正義の武力行使はあるか (岩波新書 新赤版 752)
- 岩波書店 (2001年10月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004307525
作品紹介・あらすじ
極度の迫害を受け、生命が危険にさらされている人々に対して、国際社会には何ができるか。彼らを救うのに武力以外の手段がないとすれば、どうしたらよいのか。人道的介入の名目でNATOが行ったユーゴ空爆をはじめ、ソマリア、ルワンダなど、数々の地域紛争を検証し、21世紀における平和のあり方、人道的であることの意味を考える。
感想・レビュー・書評
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あまり目新しい情報は無かった。筆者の理念は悪いものだとは思わないが、平和履行のための「第三者」部隊の武力・武装の不足のために紛争が激化したという研究も幾つか出ているので、もう一歩踏み込んだ考察を読みたかったところ。
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平和というのは一体どのような状態を指すのか?一つの国の中でそこの国民が明らかに「まともではない」生活を強いられている場合他国は武力を使ってでもこれを阻止する権利あるいは義務を持つのか。
武力を止めるための武力行使ということの難しさ。国連体制の問題点など。 -
人道的介入とは、ざっくりとまとめれば「極度の人権侵害が起きている国に、その救済を目的に他国が軍事介入すること」である。聞こえはいいが、歴史上幾度となく濫用され、人権侵害の拡大を招いて来た。しかし、全否定するのはナンセンスである。その上でどう折り合いをつけるかを、極めて国際法学者らしく場合分けして検討している。結論としては、「(軍事)介入が必要になる前の(非軍事)介入」とある種当然なのであるが、この本はどちらかというと、著者の思考の筋道を噛み締めつつ、安易な介入論を自制するところに意味があるように思われる。
以下引用
たしかに、極度に非道なことが世界に存在する限り、正義の武力行使というのも存在し得る。同時に大切なことは「人道的=正義であるなら何をしてもよい」論を安易に導かないことである。
「戦争は戦争」であるなら、そして、それへの訴求を慎むべしとする国際法の潮流に合理性があるならできるだけ代替策を模索し続けるほかない。ディレンマは明らかなのだ。明らかなディレンマのなか、迫害される人々にとって最も良い方法は何かと考える苦しい作業を「人道的介入」問題は私たちに強いる。 -
記念すべき人生初新書。批判的に読めるようになりたいと思った1冊。
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新刊の棚にあるから借りたのに、10年以上前の本じゃないか。
ま、いいですけど。騙されました。
それはそうと、本書は人道的に酷い行いのなされている国家に対する武力的介入について、その是非などを論じています。ソマリアやウガンダ、カンボジア、ユーゴのことなどが書かれています。出版時期からすると、特にユーゴ空爆辺りを問題意識として書かれているようです。
結論としては、「介入すべし、上流で」ということのようで、すぐに武力介入と考えるのではなくて、まず関係する大国間で政治的に考えろよ、としています。ただ、昨今の政治情勢をみていると、その大国ってのが一番やばいんじゃないの、と思わざるをえませんが。 -
「人の苦しみはそれを見た者に義務を負わせる」
迫害の犠牲者が存在するとき、それを見た他人たちは犠牲者を救済する義務を負う(リクール・1997)。 -
人道的介入について主に国際法の観点から書かれた本。学部のゼミのディベートで介入の問題を扱うため、二度目となるが、読んだ。今、手元に当該本がないので詳細は割愛する。
人道的介入の問題点について非常によく整理されており、この問題について学ぶとき、最初に手を取る本としてお勧めである。国際法学者の著作であるため、国際法の観点からの記述が多いが、政治的な観点が全くない訳ではない。特にNGOの役割について詳細に記述しており、この点には斬新さが感じられた。