源氏物語の世界 (岩波新書 新赤版 883)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308836

作品紹介・あらすじ

源氏物語は恋と愛の物語であり、王権と政治の物語であり、人の生き方と救済を問う物語でもある。千年にわたって読みつがれてきたその魅力の根源をこの物語のもつ多義的かつ多面的な構造に求めながら、冒頭の桐壷巻に仕掛けられた四つの「謎」を手がかりにその世界を読み解いていく。源氏物語は、読者に問いかける物語なのである。

感想・レビュー・書評

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  • コンパクトな新書にも拘らず、示唆に富み、中身が詰まっています。“多義的多面体的な構造体”である「源氏物語」から4つの柱となる謎を提示して、解き進めることで、全容を明らかにします。啓蒙書でありながらも野心的です。原文を照らし合わせ、細大漏らさず理解しようと努めました。個人的には作品を2・3度は通読してから読んだ方が学びが大きくなると思います。名著です。

  • 元々ストーリーを知っているため説明がわかりやすく頭に入った。

  • 古典についてこれ程明解に解説した新書に初めて出遇い、幸せです。いくつかの現代訳「源氏物語」に再挑戦してみたいと思いました。

  • 感情目線だけではなくて、人物の背景等から客観的に見た分析(桐壺帝と桐壺女御はお互い愛し合っていたが結果的には政略結婚だったなど)が面白かった。本文中で推されていた河海抄を読んでみたい。

  • 38070

  • 第1章 桐壷帝の物語
    第2章 「雨夜の品定」と女君の人生
    第3章 若き光源氏の恋と挫折
    第4章 権勢家への道
    第5章 六条院の栄華と恋
    第6章 暗転する光源氏の世界
    第7章 光源氏の宿命
    第8章 薫と宇治の姫君たち
    第9章 薫と浮舟の物語

    著者:日向一雅(1942-、山梨県、日本文学)

  • 話型論で『源氏物語』を読み解いた本、ということだろうか。
    あるいは、引用や典拠という側面から見ていくという趣向。
    これまで、そのような本も読んだことがあるが、「そうなんだ~」という思いと、「で、何?」という気持ちとを同時に感じることが多かった。
    さて、本書は、というと、私にとっては興味深かった。

    問題の立て方が、面白かった。例えば、次のようなことだ。
    桐壺更衣の父の大納言や、明石の入道には男子がいない。
    彼らは、娘を入内させたり、高貴な男性に嫁がせることはできても、家に男児がいない以上、その家は断絶する。
    たとえ入内した娘が帝の子を産んだにしても、後見人がいない状態になり、即位は難しいだろう。
    にもかかわらず、なぜ彼らは娘の結婚に執着するのか、と筆者は問う。
    言われてみればそうだなあ、と思うけれど、今までそんな風には考えたことがなかった。

    源氏物語は、愛する人との別れを恨む、「長恨」と、得られないものの代償である「形代」の物語だ、と筆者は言う。
    「形代」の代表である紫の上には、継子譚の話型をなぞっている部分もあるが、彼女には子どもがなく、理想的な男君に見いだされ、幸せになるという話型から逸脱する。
    形代の物語としても、紫の上は晩年の、女三宮降嫁による苦悩を経て、むしろ美しさを増していく。これにより、ただの「形代」から脱するのだ、と筆者は考えている。

    もう一人の「形代」である浮舟は、本書では形代であると同時に、穢れを移して流す「人形」だという。
    が、彼女も、形代や人形から脱した女性だという。
    新書なので、あらすじの紹介がかなりの部分を占めるが、それをしながら、いかに薫や匂宮が浮舟に対してひどい扱いをしているかが、丁寧に解説される。
    生田川伝説ほどの純愛は浮舟には向けられておらず、二人の男の互いへの猜疑や嫉妬、そして報復によって倒れていくのだ、という解釈に共感する。
    入水によって形代になりきってしまうのだが、その後、出家し、薫の迎えを拒む浮舟には、大君や中君の形代の位置からも抜け出していく、と最終的にはなっていくようだった。

    ほかにも、そことそこがつながるのか、と驚かされた部分もあった。
    なかなか楽しかった。

  • 2004年刊行。著者は明治大学文学部教授。源氏物語を近代の観点から切り取った解説書は数あれど、本書は「近世」の源氏物語注釈から源氏物語の検討をする。しかも、政治面・人間関係面(男女関係も含む)・因果応報や物の怪など、源氏の複雑さを反映した濃い内容である。また、端的に、近世史・文学史(文学思想とは大袈裟かも)を叙述する面もあろうか。

  • 『源氏物語』の4つの謎に答えるという形式の本です。

    一つ目の謎は、桐壺帝の時代を「いづれの御時にか」と曖昧に表現しているのはなぜか、というもの。2つ目は、桐壺更衣の父である按察大納言が、自分が真でも更衣の入内は必ず成し遂げよと遺言したのはなぜか、3つ目は、高麗の相人が光源氏の人相を占ったときに述べた「帝王の相」とは何か、そして最後の一つは、桐壺更衣を失った桐壺帝の悲しみとその後の藤壺更衣への愛情を、「長恨」と「形代」として捉えることの意味は何か、というものです。

    著者は、『源氏物語』が執筆された当時の政治的・文化的状況を参照するとともに、物語の構造にも立ち入って、これらの謎を解明していきます。冒頭の「桐壷」巻が、物語全体の豊かな内容を示唆するような謎を孕んでいるという本書の問いに導かれて、しだいに『源氏物語』の奥深い世界へと入っていくことのできる入門書ではないかと思います。

  • 自分の中で源氏物語が分かりやすく整理されてスッキリした。式部が意図した登場人物の性格設定や行動の意味付けなど、興味深く理解できた。

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著者プロフィール

1942年、山梨県生まれ。1972年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位修得退学。博士(文学)。明治大学文学部教授。主要著書『源氏物語の主題』桜楓社、『源氏物語の王権と流離』新典社、『源氏物語の準拠と話型』至文堂(紫式部学術賞)、『源氏物語の世界』岩波新書、『源氏物語―その生活と文化』中央公論美術出版。他編著、論文多数。

「2012年 『源氏物語 東アジア文化の受容から創造へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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