江戸の旅文化 (岩波新書 新赤版 884)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004308843

作品紹介・あらすじ

古代・中世の苦難に満ちた旅から、お伊勢参り・湯治など遊興性を帯びた江戸の旅へ。そこには、どのような社会の変化があったのだろうか?旅行記、浮世絵などの資料を駆使して旅の実態を浮びあがらせながら、その変化を促した社会の姿を描き、そこで生まれた生活文化が、実は現代に継承されていることを明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 「江戸時代は税金も高いし基本質素な暮らしだったのに、どうして伊勢参りなど旅行が流行ったか。それは副業でお小遣いを稼いでいたから。」目から鱗過ぎて心鷲掴みされた。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000227433

  • 主に伊勢参詣と湯治行をめぐっての、江戸期の庶民の旅に関する資料。
    農閑期の間稼ぎによる娯楽費、講の発達による団体旅行、寺社参拝、湯治を名目とした物見遊山の旅という、実際の旅行の具体的な様子というよりは、封建的と思われていた江戸においても庶民の旅は比較的自由に行われていたということを示すもの。
    伊勢参宮については、道中の食事や持ち物、御師の館の間取り、食事など詳しい。
    しかし、伊勢参宮って一言でいっても、ついでで京大阪、厳島まで行ったりして三ヶ月ぐらい旅してるのすーぱーうらやましいとしか言いようがない。

  • 旅とは、ノンフィクションとフィクション、ハレとケの境界線なのかもしれない…
    大義名分(タテマエ)を掲げながら、合間合間で名物を楽しむ姿、お土産をなぜ用意しなければならないのか…などなどとても面白かったです。

  • 古代・中世の苦難に満ちた旅から,お伊勢参り・湯治など遊興性を帯びた江戸の旅へ.そこには,どのような社会の変化があったのだろうか? 旅行記,浮世絵などの資料を駆使して旅の実態を描きながら,その変化を促した社会の姿を説き,そこで生まれた生活文化が,実は現代に継承されていることを明らかにする.

  • 古本で購入。

    江戸地代を中心に、日本の「旅」の様相をざっくりと述べている。
    旅する人々、旅する目的、旅の場、ガイドブックの数々、携行品…旅史の概説としてはちょうどいい。

    京都所司代が記録した、18世紀始めの4~5月に京を通過した伊勢参詣の旅人の3分の1が16歳以下の子供というデータはおもしろい。
    その後ろには子供のぬけ参りを、それと察したうえで密かに送り出す親がいたり、いやはやすごいな。

    旅人の筆まめぶりにも驚かされる。
    やはり滅多にない旅だからこそ、記録したいのだろうか。
    「都と言っちゃいるが、どっこい大したことはねぇ」と京をけなす江戸人の稚気もまた、しょうもなくもあり可笑しくもあり。

    明治以降の旅に触れつつ「これからの観光地かくあるべし」的結論で終わっているのが、ちょっと尻切れトンボ気味。
    ただ
    「今後の観光地は新しい旅行時代にふさわしく個性を明確に」
    すべきで
    「八方美人の観光地にはもはや何らの魅力もないことを知るべきであ」
    る、というのは納得。
    全方位的な売り出し方・作り方をしてきた観光地の俗っぽさ・格好悪さはもはや害悪。
    昭和61年の本だけど、いまだに通じてしまう指摘だなこれは。

  • 土産の語源、酒迎え、御師の非宗教性

  • 江戸時代の庶民のイメージと言えば、作者も導入部分で述べている通り、虐げられ困窮した生活のもと、日々生き繋いでいくというものであった。だが本書を読むことで闊達と旅へと出かけていったり、温泉で外国人に明るく話しかける庶民の様子を垣間見て、生き生きとした彼らの姿を知って、晴れ晴れしい気持ちになった。

    特に興味をもったのは巡礼という旅の形から浮かび上がる宗教の存在である。江戸時代の庶民は寺社参詣を隠れ蓑に旅に出掛け、遊興自粛が唄われた戦時中も参詣は許された。改めて宗教のもつ実体のはっきりしない、けれども畏怖の念を与える強い力を常に感じた。江戸時代は宗教的にみても重要な年代だ。幕府によってキリスト教が禁止され、隠れキリシタンの殉教も珍しくなかった。彼等にも旅の機会はあったのだろうか。

    本書で社会的弱者と考えていた庶民の生き生きとした旅の様子を知り、さらに社会的弱者でありマイノリティであった彼等の様子が気になった。

  • 【推薦文】
    江戸時代は外国人にとってもよく知られている時代でした。私は、日本に来る前に、江戸城を散歩したいという希望を持っていました。私は留学生として日本にいるうちに、東京の全ての有名な文化名所に行ってみたいです。そんな気持ちになったら、この本をぜひ読んでほしいです。
    (推薦者:社会工学専攻 D1)


    【配架場所】
    大岡山:本館1F 一般和図書 081/Id/884

  • 本書によると、現代の「旅行」という楽しみ方の原型は、ハード面でもソフト面でも江戸時代に確立していたようだ。当時の旅の動機はシンプルで「参詣」と「湯治」のいずれかだというが、実はこれも物見遊山のための方便だったとか云々・・・というなかなかユニークな一冊。

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著者プロフィール

神崎 宣武(かんざき・のりたけ):1944年岡山県生まれ。民俗学者。武蔵野美術大学在学中より宮本常一の教えを受ける。長年にわたり国内外の民俗調査・研究に取り組むとともに、陶磁器や民具、食文化、旅文化、盛り場など幅広いテーマで執筆活動を行なっている。現在、旅の文化研究所所長。郷里で神主も務めている。主な著書に『大和屋物語 大阪ミナミの花街民俗史』『酒の日本文化』『しきたりの日本文化』『江戸の旅文化』『盛り場の民俗史』『台所用具は語る』などがある。

「2023年 『わんちゃ利兵衛の旅 テキヤ行商の世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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