- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004309352
感想・レビュー・書評
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冒頭からあまりにおもしろくて一気読みした1冊。
うわこれ私もずっと思ってた嬉しい…!と感動しながら読み進めてくといきなり身体をものすごい勢いでえぐられる感覚が。自分が中途半端な人間なのを突きつけられるのだ。天秤でいえばただゆらゆらと揺れてる感じ。だからこの際どっちにもズドンズドンと振り切ってやろうと思った。それで中庸を保ちたい詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自己愛が強い奴に嫌悪感を覚える理由がはっきりした。かねてから大学は「人に嫌われたくない病」が蔓延していると考えていたが、その考えと重なるところがあった。
それと同時に自分も同類であると突きつけられた。
哲学初心者の自分には少し難しかったが、一つ一つのまとまりの最後に要約がきちんと示されており、難解な点は読み飛ばしても理解が追いつく構造をしていた。 -
カント倫理学における「道徳的善」を裏側から抉りだす傑作。「根本悪と最高善」に引きちぎられる人間の姿を綴ったくだりは荘厳な宗教画のような迫力とドラマを感じた。
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すべての人間は、道徳的には悪にならざるを得ない。
善人ほど悪である…!
どんなに善であろうと欲しても、動機においても行為においても、人は義とされない。
誠実であろうとすればするほど、人は自分自身に絶望する。
しかし、人はどこまでも道徳法則の尊敬に従って行為しなければならない格率が定められている限り、履行不可能な義務が人間には科せられている!!
人間の持つ原罪を哲学の点から暴き出している。
やはり、自分のエゴイズムを穴が空くほど見つめつつ、他人や善人の持つエゴイズムやごまかしを徹底的に追及する中島氏の原点はやはり、カントにある。 -
タイトルの「悪について」の悪は悪一般についてを語ったものではない。カントの言説を通して中島先生の考える根源悪について語ったものである。こういう原罪に近いような悪って、きっと現代倫理学で扱うような対象ではないんだろうなと思った。
道徳的な生き方とは何かと考えるとき、それは行為そのものではないことに気付く。では行為を漂白したときに何が残るかといえば行為と関係した意志である。たぶん今時の倫理学ではその意思が自己愛と深い絆で結ばれていることを前提として様々話が組み立てられていくのだろうけど、カントや中島先生はそれを許さない。厳格主義というだけのことはある。カントは適法的行為とは何かを主題に挙げなかったということだが、挙げる必要が無いという以前に挙げられなかったのではないだろうか。中島先生も挙げられないように見える。強いて挙げてしまうと、アイヒマンの持つ定言命法の格率と、グリーンフェルト氏のぎりぎりの所で持ち続けた定言命法の格率に決定的な違いを見出しづらいことが露呈する。
定言命法による確率を最優先すべきだとカントは言うが、中島先生はそうは言っていない。ただ悩めと。自己の選択が善だと正当化することは言わずもがな、善悪が無いと達観することも不道徳極まりない。
生きづらい生き方を選ぶ人もきっと多いんでしょうね……としか言えない自分がいる。 -
今まで気になっていた対人関係の根本原因が分かったような気がする。もっと詳しく知りたくなった。
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カント倫理学の立場から「善」とはなにかを検討し、「悪」とはそこからはみだした「その他」的なものとする。タイトルに期待して「悪」と断罪された存在をこそもっと考察して欲しかったのだが、とりあえずは自分で考察するための材料がいくつも示唆されており、それなりに得るものはある。論理的な構成だがわかりやすく高水準。
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中島義道氏の本業、カントについての本です。
主にカント倫理学について平易に書かれていて、哲学を学ぶ人はもちろん、倫理や道徳に興味のある人ならぜひ読むべき本だと思います。
厳格主義で知られるカントですが、彼の定言命法は常に頭の隅に置いておく必要があるように思えます。
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