冠婚葬祭のひみつ (岩波新書 新赤版 1004)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310044

作品紹介・あらすじ

しきたり、作法、正式-冠婚葬祭マニュアルにはこんな言葉が溢れている。だがこの百年の間にも儀礼の姿は時代とともに大激変を遂げてきた。「少婚多死」時代を迎え、家族の形が多様化した今、冠婚葬祭文化はどこへ向かうのか。現在の結婚と葬送をめぐる膨大な情報を整理し、「これから」にふさわしい儀礼の形を具体的に考える。

感想・レビュー・書評

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  • 10数年前の作品だが、砕けた文体で儀礼のあり方を小気味よく切り裂く良書。社会構造の変容による価値観の多様化、ビジネスに踊らされた日本。他の分野でも散見される刷り込みを払拭してくれる。
    父親のお墓は作ってしまったし、母親もそこに入るのだろうが、私はそこには(諸事情により)入りたくないなぁ。しかし、散骨も大変そうだし、行旅死亡人も迷惑をかけそう...。終い方を今から考えておかないとね。

  • 最近親戚のお葬式があり、ふと思い出して再読。もう十年以上前の刊行だけど、さすが斎藤美奈子さん、今に至る傾向をしっかりとらえている。

    結婚しない人は増えているのに、結婚「式」関連産業は衰退しているようでもなさそう。ますますイベント化してる感もある。かたや、葬儀はどんどん身内だけでの「家族葬」が増加。旧来の家意識は今や見る影もないというところか。

    それにしてもまあ、葬送にまで「私らしく」なんて言い方がされることに、うわぁ勘弁してよ~とか思っちゃうのは私だけ? どこまで「私」に執着するのかって思ってしまうんだけど…。

  •  媒酌人を立てた結婚式は、2005年現在、全国平均で1割未満。首都圏にいたっては1%未満である。首都圏でも95年には60%以上が媒酌人付きだった~」という記述には、ちょっと驚いた。結婚にせよ葬儀にせよ、儀式というものは簡単には変容しないものだと思い込んでいた。実のところは、市民それぞれの生き方と不可分である分、変容しやすいものなのだと感じた。丁寧に事実を元に論を進めているのはいつもどおり。さすがにそつの無い内容と感じた。

  • こんなに毒吐いてる新書、あまりないぞ?
    というか見たことねぇに近いかも。

    だけれども言葉は悪いけれども
    結局はそういうことなのよね。
    ただし授かり婚に関してはかっこがき部分が
    えらく毒なのは気にしないでおこう…
    (まあそういうケース多いからね)

    しきたりといったものや式のそれが
    いかに作られたものかがよーくわかる本。
    なんでするかもわからないんだよね。
    結婚式も、葬式も。

    してもらわなくても恨まないから
    直葬でパパっと消し去ってほしい。

    ものになるからさ、死んだらよ。

  •  
    勉強になりました。

    「冠婚葬祭マニュアル」ではなく,冠婚葬祭の歴史,現状についてわかりやすく解説してくれています。

    実際には,現実問題として比重が大きい慶事と弔事(つまり,婚と葬)の二つを中心に(p.ⅳ),データと解釈によってそれらを解きほぐす。軽やかな口調(文調?)で進むので,小難しい話も柔らかく読めるとても良い本でした。

    いま,結婚式について色々と調べているのですが,学術的なまとまった本があまりないことがわかりました。そのような現状の中,新書サイズで,しかも学術的にもかなり参考になる本書はとてもありがたかったです。

    コロナ禍によって結婚式・披露宴の在り方が問い直されている現在,本書が教えてくれるコロナ前の結婚式の在り方は,今後を考えるための一指針になるかもしれません。
     

  • 歴史的なところは面白く読める。フェミニズム押しなところは、まぁ人によるかと。

  • 結婚の変遷、意味等を知りたくて読んだ。
    今の洋式婚礼はヴィクトリア女王婚礼が由来で、白いドレスは処女の証というものは後で付けられたもの。
    父親との入場は絶対ではない
    しきでほんにんいじょうに盛り上がっている人はいない、結婚は性と生殖の社会化

    など常識と言われている綺麗事を歴史でばさばさ切っている。70年、80年で変わってきた日本式結婚式という事実を知れてよかった。

  • 社会生活の中でとても気になる冠婚葬祭の「しきたり」が意外と流行みたいな発生源から始まったものだという事が分かる。
    矮小して言えば最近は「〜させて頂く」みたいな言い方をしないと失礼かも?的な社会の流れみたいなものと根底は同じだったりして?

  • 斎藤美奈子が書く冠婚葬祭である。彼女は初めにこの本を書く目的を書いているが、冠婚葬祭をめぐる情報の森に分け入って、過去と現在を俯瞰し、現代にふさわしい冠婚葬祭への対処の仕方を考えることだとしている。

    冒頭、古式ゆかしい婚礼と葬式は行列だった、というのもおもしろい。そして婚礼に宗教は介在していない。
    ともかく、128ページ、結婚式の忌言葉「切れる、別れる」より先に「言い換え」を提言している。
    ・嫁ぐ、お嫁に行く、嫁さんをもらう → 結婚する
    ・ご両家のみなさま → お二人のご家族
    ・籍を入れる、入籍する → 婚姻届を出す
    ・婿養子に入る、婿に来てもらう → 妻の姓を名乗る

    まったく同感同感!!!である。特に「籍を入れる」。法的に婚姻届でまったく新しい二人の戸籍が出来るのだから、籍を入れるもなにもない。ただ夫の姓を名乗ることが大半のため、最初の名前の欄は夫となり、あらかじめ夫1人の戸籍があってそこに妻となるべき女性の名前が記入される、との誤認があるのではないか。そしてそれは芸能人の結婚ニュースで増幅される。

    だがしかし、最近長女が結婚したが、長女の夫の事を他人に話す時、「長女の夫はこういうひとで」とはいいずらく「長女のムコは○○でとってもいい人なのよ」なんて言い方がけっこう便利なもんだ、と気づいた。若い男性が「ウチノヨメサンは弁当作ってくれるんだ」なんていうのは、照れがあるのではないか、なんて以前は気付かなかった見方もできるようになった。しかしヨメ、ムコの古い概念にとらわれてる人も確かにいる。そしてそれは言葉によって脳にプリントされるのだからやっかいだ。

  • 冠婚葬祭にまつわる「伝統」なんて実はたいして長い歴史があるわけじゃないーーーと喝破する気持ちのよい本。
    昨今の結婚式事情で爆笑させてもらった一方(「お洒落で最先端♪」と思っている結婚式だって、すぐに「スモーク&ゴンドラ」と同じような「笑える過去」の結婚式になるでしょうね〜)、これからのお葬式のあり方についてはかぶり付きで読みました。親、そして自分の葬式や墓、どうするよ!?特に意識の低い父のことを考えると頭が痛いぞ。
    巻末の「もっと知りたい人のブックガイド」もよかったです。

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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