児童虐待: 現場からの提言 (岩波新書 新赤版 1030)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310303

作品紹介・あらすじ

なぜ、わが子を自ら危険に陥れてしまうのか。深刻化する背景は、単に親を責めるだけでは捉えきれない。そこには、日本の貧困な福祉行政、親を取り巻く社会の急速な変容など、根本的な問題が潜んでいる。児童相談所に勤務し数々の相談に対応してきた著者が、その実態や解決の手がかりを、自らの体験をもとに語る。

感想・レビュー・書評

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  • 児童相談所からのSOS的側面が強い内容だった。データは古いが実情を理解するには十分だと思う。

  • ◯児童虐待に関して、簡単な国の施策や現場での業務について知ることができる、まさしく導入の書。
    ◯論理立てられた構成、文書で、大変わかりやすい。
    ◯無理筋の議論になりがちな、これからの対策についても、国と現場にとって、現実的な内容が記載してあり、納得ができる。
    ◯現場経験が長いだけでなく、国の審議会にも名を連ねている著者ならではの、しっかりとした一冊で、大変勉強になった。

  •  これまでは,心理職や医師が書かれた本がほとんどであったが,この本は京都府宇治宇治児童相談所相談判定課長が著者です。
     児童相談所が抱える制度的な問題についても多くのページ数が使われている。個人的にも,職員の配置基準があまりにもお粗末なことについては痛感しているので,共感をしながら読みました。
     児童虐待が起こる4つの条件(健やか親子21)が示されています。それは,
    1)多くの親は子ども時代に大人から愛情を受けていなかったこと,
    2)生活にストレス(経済的不安や育児負担など)が積み重なって危機的状況にあること,
    3)社会的に孤立し,援助者がいないこと,
    4)親にとって意に沿わない子(望まぬ妊娠・愛着形成阻害・育てにくい子など)であること です。
     これまでの本にはない,児童相談所所長の判断による一時保護が人権侵害につながり,「子どもの権利条約」に反するおそれがあることなどについても書かれています。

  • 著者が児童相談所に勤めていたため、虐待と児童相談所との関わりについてよく分かる本です。
    憲法の面から論理的に紐解かれていて、少し難しい部分もあるけれど、虐待の根本から学ぶことができる。

    *虐待の種類も詳しく書かれており、身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待の四つに分かれる
    *ネグレクトは養育の怠慢のことで、最近は子どもを置いてパチンコに行ったなど、よくニュースになったりしていることだと思った

    *実母から虐待を受けるケースが多い
    →親自身が子供時代に愛情を受けていなかった
    →生活にストレスが積み重なり危機的状況にあること
    →社会的に孤立して援助者がいないこと
    →親にとって意に沿わない子どもであったこと
    などが要因であることが分かった

    *虐待といえば児童相談所が強く関わっていると思われているが、虐待の対応件数は自治体の方が多いことに驚いた。そのため、自治体の業務はひっ迫している

    *子どもを一時保護すると、子どもは外出が出来なくなる。そのため学校にも行かれなくなる。登下校の間に強引に連れ戻されてしまう可能性があるから。そのため、子どもはストレスがたまり、子どもの権利も侵害されてしまう心配がある。一時保護は簡単に出来るものでは無い。ちなみに、一時保護は児童相談所長が出している

  • 児童虐待の本質は、「他者を支配したい」という権力欲にあるのではないかと思っている。それは、石井光太著『鬼畜の家』を読んで、社会的に認められない親が子どもを虐待したケースが多いことに気付いたからだ。その遠因は格差社会である。格差社会の問題は、踏みつけられた者がまた誰かを踏みつけるという「踏みつけの連鎖」にある。その一つの現出が児童虐待の本質ではないか。この直感が正しいかどうかの検証がしたくて本書を読んだ。

  • 児童虐待への対応の、基本的な考え方を知るのに役立つ内容でした。わかりやすく、読みやすかったです。

  • 制度的に、学術的に基本を押さえながら解説してくれて、勉強になった。

  • 児童相談所の現実がすごくよくわかった。
    児童虐待が起こってしまう根本的原因(貧困等の社会的な問題)を解決しないと同じことはいつまでも繰り返される。

  • データ等が最新のものではないので、アップデートが必要ですが、概要をつかむには良いと思います。

  • 児童虐待が問題になると、必ず出てくるのが「しつけ」との混同。現場で接してきた著者の葛藤。しつけで子供を死なせるわけにはいかない。その前に守る必要があります。いかにして虐待から子供を守るか、あまりにも甘い「しつけだから」の考え方をやめなければいけない。

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著者プロフィール

子どもの虹情報研修センター研究部長。京都大学文学部哲学科卒業。児童相談所で32年間勤務し、京都府宇治児童相談所相談判定課長を経て、2007年度より現職。
おもな著書に「子どものためのソーシャルワーク」シリーズ(全4巻)『虐待』『非行』『家族危機』『障害』(明石書店)、『児童虐待――現場からの提言』(岩波新書)、編著書に『日本の児童相談――先達に学ぶ援助の技』(明石書店)などがある。

「2010年 『子ども虐待ソーシャルワーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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