民権と憲法: シリーズ 日本近現代史 2 (岩波新書 新赤版 1043 シリーズ日本近現代史 2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310433

作品紹介・あらすじ

一八七七(明治一〇)年の西南戦争終結後、議会開設の要求が強まり、自由民権運動が全国各地でまきおこった。そして一八八九(明治二二)年、大日本帝国憲法が発布され、翌一八九〇年には帝国議会が開かれる。国民国家と競争社会が確立した現代の原点ともいえる時代を、政府・民権派・民衆の三極対立という新しい視点で描きだす。

感想・レビュー・書評

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  • 明治憲法の成立史を、政府と民権派、そして民衆の3勢力の抗争史として描き出す。日本で国民国家がいかに成立していったかを知る上で絶好の著作。

  • 明治政府成立間もない1870年台の混沌とした時代を、従来の政治中心の記述だけでなく、民衆から「国民」へと変貌する一般庶民の諸相・風俗を含めて概観する。

    天皇、憲法、政府、議会それぞれの位置付けすら定まらぬなかで、薩長の既得権益、外国からの圧力、国民からの自由民権運動に揺さぶられながらも、徐々に国の形が整っていく様子は、壮絶だ。この時代の人達をして(その後に軍国主義化するという道を歩むとは言え)「国を作る」という大事業を為し遂げさせたエネルギーとは、一体何だったのだろうか。

    今では普通と把えられることが多い伊勢神宮参拝や各種の天皇行事(新嘗祭、大嘗祭など)、学校での隊列体操、唱歌、万歳を叫ぶ風習などが、実は比較的新しいこの時期に、それも「国民意識」を据え付けるための道具として導入されたという考察は面白い。

  • 教科書的な知識をかなり網羅しつつ、テーマごとの見取り図も示してくれる良書。通史でこれだけ面白い本は貴重だと思う。

    西南戦争(1877)から大日本帝国憲法発布(1889)までの民権運動史を軸に据えつつ、その間の経済や社会、対外関係、学校教育などのトピックにも各章が割かれている。網羅性と深掘りのバランスがかなり好みで、通史の本にありがちな目の滑る感じもなく、かつ、1つの事件に絞って書かれた本のように食傷気味になったりもせずに新鮮さを保ちながら読み切れた。

  • 西南戦争後の恩賞を巡り起こった竹橋事件から始まり、大日本帝国憲法が発布されるまで。
    政府vs民権派+民衆という視点ではなく、政府・民権派・民衆の三極対立の視点が示された事で、非常に分かりやすくなっている。
    栃木県民としては足尾鉱毒事件と田中正造の記述が気になった。勝海舟が田中正造に送った証文にある通り、「元が間違っているんだ」と。江戸時代には考えられないほどの合理性と効率的な企業が登場したが、それが地域社会や環境に与える影響までは誰も予想していなかった。
    アイヌ、琉球、朝鮮問題についても詳しく書かれている。特にアイヌが気になった。彼らを日本人とする際に、なぜそれまでの居住地から離れさせ開拓をさせたのか?前から気になっていたが、ロシア語や英語も話せる彼らが境目にいたのでは何があった際に都合が悪い。結局、居住地だけでなく食文化や生活様式まで変えられ抵抗力が弱まったであろう彼らの身体に天然痘などの病気が襲い掛かり、多くの命が失われてしまった。無人になり安心したかのように思える境目には、その後、日本国は巨額の防衛費をつぎ込む羽目になる。また、これらの問題に対し、欧米諸国が少々怪訝な顔をし始めている(自分達も同じ事をしているが)
    後半は森有礼が目立っている。国民を育成する為に、学校教育、制服、体育、唱歌、そして君が代まで。この時代にこれらのものが誕生している。それらは明治天皇の巡幸とも重なり、日の丸・君が代・御真影・万歳(天皇陛下万歳もこの時代からの登場)という国民統合四点セットが生まれる。
    この先、時代にはきな臭い方向にも進むが、それはさておき、皇后と席の高さが一緒である事に不満を持った明治天皇が玉座の下にこっそり敷物を敷き少し高くするも、同じ高さであるべきだと唱える井上馨が敷物を引きずり出して放り投げる話は面白い。

  • 民法と憲法

    成立までの流れや東アジア世界の動きが目まぐるしい。

    今、憲法や法律が揺らいでいるのではないか。

    揺らぐではダメだ。

    変えるなら変える。

    変えないなら変えない。

    解釈だけで変えようとするのはずるいのではないか。

    変えるためには国民一人一人が他人事ではダメなのだが。

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    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00234001

  • シリーズ日本近現代史の第2巻。西南戦争後の自由民権運動の胎動とその挫折や、国会開設、教育の普及、憲法発布、近代天皇制など、1870年代後半から1890年の国会開設前後までの歴史を、民衆の動きと絡ませながら説明している。

    この時期は、民権家を中心とした知識人が登場し始める時期で、個人的に興味のある内容が多かった。特に、自由民権運動は、今の日本人に様々な教訓を与えてくれるように思った。

    西洋文明国に並ぶため、必死に議論し考え、勉強する当時の人々の姿勢に学ぶことが多かった。

    全体を通して、この時期は問題が山積みな時期であると実感した。そんな問題の結果だけに目を向けるのではなく、過程に注目して見ることで、今日自分たちが直面している問題に向き合う際のヒントになるのではないかと思う。再度読み込んで、今を生きるためのヒントを探究出来ればと思う。

  • 1880年代に仕掛けられた一連の装置。

  • 本書の肝は第3章で、所謂「農民民権」を憲法制定や民選議院を求める民主化運動としての「自由民権」として扱っていいのかどうかであり、もはや止めようがない近代化に逆行する封建時代的「仁政」を求める民衆運動をどう評価し、解釈すべきなのかという点が問われているように思える。

  • この二巻目では、明治初期の「薩長土肥」の政治からアジア初の「憲法」を経るまでの話です。

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著者プロフィール

元・東京経済大学経済学部教員、2016年死去

「2019年 『牧原憲夫著作選集 下巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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