日清・日露戦争: シリーズ 日本近現代史 3 (岩波新書 新赤版 1044 シリーズ日本近現代史 3)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310440

感想・レビュー・書評

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  • 日清戦争なけりゃ日露戦争もなし。日清戦争なんて戦争したくて仕方ない大日本帝国が仕掛けたような戦争なんだなぁ。

  • 「日本の植民地支配は、台湾や韓国などの「遅れた」地域に最新の科学技術や社会制度を届けたのであり、欧米のような極悪な支配とは異なる、という言い訳が20世紀後半以降の日本に広まりつつあるが、とんでもない間違いである。」
    「憲法の理念と植民地支配という矛盾を抱えた各国が、その思想的課題を解決するため自ら植民地の独立を認めるという経路を辿った諸外国と異なり、太平洋戦争における敗戦という外圧によって「安易に」植民地問題を解決できてしまった日本は、その歴史的経緯を何度でも思い出さねばならない。」

  • <目次>
    はじめに
    第1章  初期議会
    第2章  条約改正
    第3章  日清戦争
    第4章  台湾征服戦争
    第5章  日清戦後と国民統合
    第6章  民友社と平民社
    第7章  日露戦争と韓国併合
    おわりに

    <内容>
    淡々とした記述が進む。与えられたページ数と書きたいことの狭間で著者が悩んだ感じがする。しかし、リアルなおさえた記述が妙に響いたりする。日頃の授業で単純化された描写しかしてこなかったので、こうした本は役に立つ。

  •  歴史を読むとは実に難しい。これだけ読み込んでも明治における「藩閥政府」と「政党」における権力関係がよくわからない。
     また、詳細に「元勲」や「政党」の動きが語られるのだが、その動きが何を意味するのかも、よくわからない思いを持ったが、「条約改正」が大きな課題であったこの時代背景を思うと、「国際社会」との関係が大きな意味をもっていたのだろうか。
     「日清戦争」や「日露戦争」についても、その経過は読めばわかるのだが、その「戦略目的」がよくわからない。当時の日本は、何のために「戦争」という最終手段に訴えたのだろうか。
     本書による当時の日本政府は、ほとんど迷いも無く戦争への道を進んだようにみえる。
     山縣有朋の「主権線」と「利益線」という主張は理解できないわけではないが、その後の歴史を見ると、「止めどもない進出」というリスクをだれもが考慮しなかったのだろうか。
     「日露戦争」が「祖国防衛戦争」であったという「司馬遼太郎の歴史観」がどうやら誤りであったことは、最近の研究でも明らかになりつつあるが、それならば1910年の「日韓併合」はどう考えれば良いのだろうか。
     本書は、近代日本史における「日清・日露戦争」と「日韓併合」を詳細に扱ってはいるが、その歴史的位置と意味には、あまり踏み込んでいないように思える。
     本書の「おわりに」において「1945年の敗戦という、いわば外圧によって台湾や朝鮮を手放すことになった近代日本は、安易に植民地問題を解決したのだという歴史的経緯を繰り返し思い出さなければならない」との考えには、日本の歩んできた道への批判的トーンを含んでいるが、ここまで歴史を深堀するならば、日本がどこで誤ったのかをも進んで語って欲しかったとも思った。

  • (2012.01.31読了)(2012.01.24借入)
    「坂の上の雲」を読み始めたのですが、日清・日露戦争についての本をあまり読んだことがないので、「坂の上の雲」を読むのと並行して日清戦争、日露戦争についても読んでみようと第一弾として借りてきました。
    学校の教科書と同様、一つ一つの事柄についての、詳しい説明がないので、せっかく読んでみたけど、さっぱりわかりませんでした。
    もっとテーマを絞り込んだ本にしないといけないのかもしれません。

    この本の目次は、以下の通りです。
    はじめに―日本へ、アジアへ
    第1章、初期議会
    第2章、条約改正
    第3章、日清戦争
    第4章、台湾征服戦争
    第5章、日清戦後と国民統合
    第6章、民友社と平民社
    第7章、日露戦争と韓国併合
    おわりに―「輝かしい明治」論とナショナリズム

    ●大津事件(18頁)
    1891年5月11日、来日中のロシア皇太子ニコライ・アレクサンドロヴィッチが、滋賀県大津町において、沿道警備の巡査に襲撃され負傷した
    ●衛生と清潔(73頁)
    日清戦争の兵士は、1872年の学制発布後に生まれている。彼らは、学校と軍隊という二つの教育により、「衛生」や「清潔」について、念入りにたたき込まれるという経験を、理念的にも、身体的にも経験してきている第一世代である。兵士たちは、克服すべき対象の欠陥に最も敏感であり、「不潔」と「匂い」の向こうに、必ず「遅れた文化」も見据えている。平壌を占領した後備歩兵聯隊の軍曹は「朝鮮と申す処は御承知の通り野蛮も甚だしき処に御座候」と故郷への手紙の冒頭に記した。
    ●旅順虐殺事件(75頁)
    1894年11月21日未明から旅順攻撃を始め、正午ごろには周囲の砲台等を占領した。午後以降市街と付近の掃討作戦が始まる。
    そこで捕虜や、婦女子や老人を含む市民を虐殺する事件が起きた。
    ●軍夫(80頁)
    物資輸送の根幹を担った軍夫たちは歴史にほとんど記録されなかった。戦病死した軍夫たちも、政府の『官報』に掲載されることはなかった。
    ●台湾占領と鎮圧(102頁)
    1895年5月末から1902年5月末まで台湾統治のための鎮圧が行われた。
    ●国際結婚(127頁)
    近代の国際結婚は、1873年3月の太政官布告第103号で規定された。国際結婚には政府の許可が必要で、①外国人と結婚した女性は日本国籍を喪失、②日本人と結婚した外国人女性は日本国籍取得、③日本人の婿養子となった外国人は日本国籍取得、と身分行為による国籍の得喪を規定している。英国人ラフカディオ・ハーンが日本国籍を取得するのは③に基づく。
    ●日清戦争の賠償金(191頁)
    日清戦争の賠償金支払いに困窮した清国は、1895年7月、仏露の4億フラン共同借款を受け入れる。次いで翌年、英独も1600万ポンドの共同借款を提供した。財政的に破綻していた清国は、日本への2億両もの賠償金支払いで、諸列強の金融に依存する構造となって行った。
    ●軍事費(209頁)
    日露戦争の軍事費は、戦時下に5回募集された外債10億4200万円が過半を占めている。
    ●奉天会戦(212頁)
    参加兵力は、日本軍25万、ロシア軍31万で、死傷者は日本軍7万名、ロシア軍6万名、他にロシア軍は2万名の捕虜を出した。

    ☆関連図書(既読)
    「坂の上の雲(一)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
    「坂の上の雲(二)」司馬遼太郎著、文春文庫、1978.01.25
    「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」加藤陽子著、朝日出版社、2009.07.30
    (2012年2月5日・記)

  • 日清戦争は、清の軍事力が弱体だと世界に暴露し、列強諸国に対抗する軍事力がアジアに存在しないことを伝えてしまったことにより、19世紀末以降のアジアの危機は、日清戦争によって生み出されたのである。日清・日露戦争で獲得した台湾と朝鮮の二つの植民地は、1945年の敗戦により手放すことになり、日本は大きな思想的課題を有耶無耶にしたまま「植民地問題」を解決したように振る舞うことで、今日まで関係各国とたびたび外交上衝突してきた。今、アジアの情勢は不安定化を増しているように見える。我が国はどのように対処していくのだろうか。

  • 日清戦争~日露戦争

  • 既得権益としての「政府」を名乗る薩長閥と、民権運動の旗手としての民党が熾烈な議論を闘わせる初期議会は、しかし、勝利の美酒に酔いしれるままに軍国主義への道を突き進む……。戦中、戦間期の諸相を通して、やがて大正デモクラシーへと継がる自由民権と、やがて第二次世界大戦へと継がる植民地支配との矛盾を鋭くえぐる評論は、いかにもこの「シリーズ日本近現代史」らしい。

    後の第二次世界大戦同様、日清戦争でも戦死者よりも遥かに多い病死者を出していた点、日露戦争でも拡大した戦線を支えるだけの兵站を維持できなかった点は、興味深い。自分自身を振返る機会もなく、日本はやがて訪れる破滅に向かっていく。

  • シリーズ名 岩波新書. シリーズ日本近現代史 ; 3
    注記 文献あり
    注記 年表あり
    ISBN 978-4-00-431044-0
    入手条件・定価 780円
    全国書誌番号 21208102
    個人著者標目 原田, 敬一 (1948-)∥ハラダ,ケイイチ
    普通件名 日清戦争(1894~1895)∥ニッシンセンソウ(1894-1895)
    普通件名 日露戦争(1904~1905)∥ニチロセンソウ(1904-1905)
    →: 下位語: 旅順攻略(1904~1905)∥リョジュンコウリャク(1904-1905)
    →: 下位語: 奉天会戦(1905)∥ホウテンカイセン(1905)
    →: 下位語: 日本海海戦(1905)∥ニホンカイカイセン(1905)
    NDLC GB441
    NDC(9) 210.65
    本文の言語コード jpn: 日本語
    書誌ID 000008473261

  • このシリーズの特色である(と僕が感じている)、〈歴史学の最新の成果を生かしつつ叙述を進めるというスタイル)はこの巻でも生きているなあ、という感じ。日清・日露戦争を〈列強に追いつき追い越せの時代の総決算)〈アジア諸国民の独立運動の嚆矢)的な見方ではなく、〈国民統合を進め、台湾・韓国を植民地しながら帝国主義化していく道程)として描きだしている。

    ただ「植民地台湾と朝鮮への日本の政策は、「進んだ日本」の、技術や資本を「遅れた地域」に移しただけで、欧米のような「極悪な植民地支配」をしたわけではない、という言い訳」は「これまでの詳細な研究によれば」「一笑に付される低い水準のものでしかない」(p238)という部分、それはそうなんだろうけど、もう少し説明があってもよかったかなーと思う。教育については植民地政策との関連が言及されているけれど。

著者プロフィール

1948年生まれ。佛教大学歴史学部教授

「2013年 『兵士はどこへ行った 軍用墓地と国民国家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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