昭和天皇 (岩波新書 新赤版 1111)

著者 :
  • 岩波書店
3.36
  • (6)
  • (21)
  • (35)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 308
感想 : 25
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311119

作品紹介・あらすじ

新嘗祭、神武天皇祭など頻繁に行われる宮中祭祀に熱心に出席、「神」への祈りを重ねた昭和天皇。従来ほとんど直視されなかった聖域での儀礼とその意味に、各種史料によって光を当て、皇族間の確執をも視野に入れつつ、その生涯を描き直す。激動の戦前・戦中から戦後の最晩年まで、天皇は一体なぜ、また何を拝み続けたのか-。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 宮中祭祀官としての昭和天皇像。

    戦争中に天皇ができることは、神に勝利を祈ることだけだったのだろうか。しかし、天皇の重要な仕事は「祈る」ことだったのは事実だ。

  •  戦前から晩年までの昭和天皇の動向がまとめられた新書。年を重ねるにつれて、天皇としての役目、立場を意識し始めたことがわかる。また、戦前の昭和天皇といえば、白馬に乗った写真が印象的だが、そのイメージが形成されるきっかけとなるのが、1929年の水戸郊外の陸軍大演習だと読んで知った。これ以外にも、占領期以降、政治的配慮から靖国神社参拝を控えたこと、皇室におけるキリスト教受容の検討は、敗戦がきっかけではなく、大正末期の貞明皇后(昭和天皇の母親)にあるなど、高校日本史では明らかにされなかった事実を学んだ。

  • ふむ

  • 昭和天皇の歴史は日本の戦争の歴史と重なる。昭和天皇の戦争観に触れて改めて戦争に対する考え方が変わった。

  • 19/05/07。

  • 戦前と戦後をまたいだ昭和天皇の業績を、「政治的主体」と「非政治的主体」、「お濠の内側」(不可視の天皇)と「お濠の外側」(可視の天皇)という2つの座標軸によって構成される4つの象限に分けて、ていねいに論じた本です。

    とくに、生母であり筧克彦の「神ながらの道」に大きな影響を受けた貞明皇后からの影響と反発が昭和天皇の中でどのような仕方で絡み合っていたのかを解きほぐしつつ、戦前・戦中・戦後の祭祀が持っていた意味について考察を展開しています。

    ときに昭和天皇に対する批判的な視点も示しつつ、全体としては政治的空間の中で天皇の祭祀がどのような意味づけを帯びることになるのかという、興味深いテーマに踏み込んだ試みだと思います。

  • 2008年刊。◆昭和天皇の軌跡を主に宮中祭祀から展開。所々、著者の推測が挟まるのは公開資料の不足のためやむを得ないか。昭和天皇と貞明皇后(天皇の母)との確執、母の影響については、神がかった天皇家の裏面を垣間見させる。また、その祭祀が明治維新後の創出という点も近代天皇制の後景として知っておく必要があるだろう。殊に、この祭祀が、私事としてであっても、現天皇下も継続しているならば尚更。◇なお、天皇神格化・絶対崇拝を進めた陸軍は、実は生物学に傾倒する昭和天皇を軽侮していたようだが、彼らの本音が透けて見えるようだ。

  • 宮中祭祀を中心に昭和天皇を紐解こうとする一冊。
    皇太后との対立など今まで知らずにいたことが多い。
    ただこの本だけでは見えて来ないことも多いので、
    その他の関連本も読んでいきたい。

  • 昭和天皇の戦前と戦後の姿を追う。
    それまで断絶の側面に光を当てられていたが、
    連続性に注目しているのは興味深い。

全25件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年生まれ。早稻田大学政治経済学部卒業,東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授,明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。98年『「民都」大阪対「帝都」東京──思想としての関西私鉄』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞、2001年『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞、08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『皇后考』(講談社学術文庫)、『平成の終焉』(岩波新書)などがある。

「2023年 『地形の思想史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

原武史の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×