ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

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著者 : 堤未果
  • 岩波書店 (2008年1月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311126

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ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)の感想・レビュー・書評

  • 「アメリカンドリーム」という言葉はアメリカの現状を反映できていない、ひと昔前までの姿であると、この本を読み終わった今、思う。
    アメリカでは「競争」=「自由」と考えられており、その価値観の下、教育や医療など「いのち」と関わる産業までもが市場原理の中へと放り込まれてしまった。本著では、そういった人の根幹に関わる産業が民営化された結果生み出した、貧困の格差について緻密にレポートされている。
    また、同じく国防という分野も民営化され、戦争は貧困ビジネスの一環として経済を支えることとなる。
    国が国民に対して本来背負うべき最低限の責任までも放り投げてしまった時、一度生活から転げ落ちてしまった国民に誰が手を差し伸べるのか。小泉・安倍内閣によって民営化が進められ、今なお、様々な分野にその魔法の言葉が囁かれているこの日本においても、このことは他人事ではないと思う。
    著者がこの本で伝えたかったのは、アメリカの現状だけではないように思う。グローバリゼーションによって世界が変わっていく中、私たちはもっと正確な情報を知らなければいけない。例えば、戦争は国際政治の文脈だけでとらえるのではなく、貧困ビジネスの一部であるという見方を持つこと。例えば、アメリカの肥満問題はただ食文化が原因なのではなく、アメリカ社会を蝕む貧困が影響しているということ。民主主義の国において、私たちはよりよい社会を目指すために、溢れる情報の中から的確に、正確な情報を知り、考えることをやめず、行動に移していくことが、これからの未来を創っていくことに必要なのだ。

  • なんて野蛮な国なんだ。

  • 10年前の本であるが、おそらく今も大して変わっていないだろう。中間層が没落し、移民などの貧困層によって軍隊が形成される。この展開は俺知ってる。そろそろアメリカも東西に分裂が始まるな。

  •  トランプ大統領当選後、アメリカ有権者がどんな環境に置かれたうえで、あの投票行動をとったのか知るヒントになればと読む。
     10年近く前の本ですが、食生活・天災・医療・教育・軍事(著者はここに一番力を入れてましたが)、これらの領域で中間層の急減と二極化の拡大をめぐるエピソードが複数盛り込まれていました。 
     ルポの性格上仕方ないですが、明るい話が全く出てきません。日本にとっていつまでも他山の石で後追いすることがなければよいのですが

  • いやまぁ、予想はしていたもののここまで人類がお金に取り憑かれていると、如何ともしがたいなと思わされた。多くの人類は一回死なないとこのお金の呪縛からは逃れられないのかな?

  • 内容としては、大体10年位前の話ですが、今現在進行中の国内外の問題を読み解くうえでも役に立つ視点がある。
    国内では、格差の拡大(特に教育格差)、医療費予算の問題。民営化、市場の論理になじまず、国が責任を持つべき分野があるという指摘は、まさに現在の日本に突き付けられている課題だろう。
    国外では、もちろん、いわゆる「トランプ旋風問題」につながってゆく。貧困格差で真っ先に追いつめられたのが、昨今話題の「不法移民」であることは、非常に示唆的。

  • アメリカの悲惨な不平等をかなり具体的に知ることができた。

  • ディストピアものSFみたいだ・・・と思いながら読んでしまった。

  • 高校生の息子の課題図書を久しぶりに読んだ。トランプ政権の成立の背景を垣間見たと感じた。それにしても教育と医療を市場経済で運営することの難しさを感じた。

  • トランプ大統領が言う「Make America great again(再び偉大なアメリカにしよう)」から読み取れる通り、現在のアメリカは偉大でないことが実感できる一冊。2008年の作品のため、ブッシュ大統領時代の話になる。
    貧困家庭では安価なジャンクフードを食べるしかなく、結果肥満児・肥満成人が増え、昔は金持ちのイメージだった太っちょなシルエットは今や貧しさを示すものとなっている。
    国防総省が学費を負担し、医療保険にも入れる、市民権も与えられるという理由で軍に進む若者が増え、経済的な徴兵制となっているという。
    日本がこのようなアメリカを真似しないためにはどうすればよいのか、そうした話し合いはされているのか、世の中に興味がわいてくる。

  • すごい本だった。著者の筆力やリサーチ力に圧倒された。
    アメリカの格差社会、その底辺に属する貧困層の現実をこれでもか、と知らされる。正直なところ、ここまで悲惨だとは思わなかったので、とても驚いた。
    特にショックだったのは、移民の子などは大学に入る経済力がなく、軍隊に入るしか道がないそうだが、それを知り尽くしたエージェンシーが言葉巧みに軍隊に勧誘し、戦場の最前線に送られるという。
    著者は、キャピタリズム万歳という信念のもと、国が責任を負うべき分野までもが民営化され、教育や医療や国家セキュリティがビジネス化されてしまったのが問題と指摘する。また、一度貧困に落ちてしまうと、そこから這い上がれる道は限りなく少ない。
    アメリカのやり方をまねてきた日本でも、貧富の差が広がったと報じられている。同様のことが起こりつつあるのだろう。いろいろ考えさせられる。
    文章の構成が素晴らしい。是非お勧めしたい一冊である。

  • アメリカの闇。医療保険とか大学の学費とかサブプライムローン問題とか巷でよく問題だとされているものがどういった実態なのか知らなかったのでこれで少しはわかってきた。医療保険制度については本当に呆れて言葉が出ない。よくも自分の私利私欲のために人々を困窮に陥れることができたな、保険会社は厚顔無恥にもほどがあるんじゃないか。医者と看護師を潰していけば困るのは自分自身のはずなのに。一応医療技術は発達するから金のあるやつらは平気だから他は構わないっていうのか。さすがにこの社会では生きていけないよ。アメリカンドリームなんてもうこの時代には存在しないんだ。

  • 新自由主義の流れの中で、レーガン政権が行った効率重視の市場主義政策、ブッシュ政権下の、教育を含む公共事業の徹底的な民営化と市場原理の導入。その結果、格差が拡大し、貧困層を狙ったビジネスが更に貧困層を追い詰め、その一方で富を蓄積する富裕層。そのベースとなる考え方は、経済学者ミルトン・フリードマンの「国の仕事は軍と警察以外すべて市場に任せるべきだ」という考え方だという。
    その結果生じている悲惨な現実。衝撃的なのは、一旦病気になってしまうと、回復しても(企業が高額な保険料負担を嫌うため)職場復帰出来ず、医療費で自己破産してしまうサラリーマン、激務や損害賠償保険の負担に耐えかねて廃業する医者、コスト削減が招く医療過誤の続出など、医療システムが崩壊してしまっていること。また、貧困層をターゲットにとして学費や職業訓練を餌に巧みに勧誘する軍と、そのために個人情報を提供する大学や高校、不法移民などをターゲットとした戦地への人材派遣。イラク戦争は「民営化された戦争」とまで言える状況だという。
    役所の非効率は宿命的だが、かといって民営化や市場原理の導入を行ってはいけない領域があること、あるいは行き過ぎまた市場競争は誰もを不幸にしてしまうこと。本書は、米国を題材として、こうしたことを訴えかけている。
    日本も、高齢化や社会保障費が増大する中で、効率化やコストカットに取り組まざるを得ないし、かといって米国のような医療システムの破綻はまっぴらゴメンだし。う~ん、考えさせられる。本書は2007年の本だが、その後のオバマ政権の下で米国の社会保障システムは多少なりとも改善されたのだろうか。

  • 世界一の強国を自負するアメリカが抱える問題の数々。
    日本がこれらを反面教師にできるかどうか、それに尽きるなあ。

    いろいろ怖いですが、数ある真実のうちのひとつとして知っておけてよかったと思う。

  • 2007年のサブプライムローン問題が顕在化した時点で執筆されている。ブッシュ大統領の下での大企業優遇政策の裏で、貧富の格差が拡大・固定化し、貧困層が追い詰められていく様子を膨大なインタビューをもとにレポートしている。
    アメリカでは弱者を支援するための予算がどんどんげずられている。医療や災害対策など民営化すべきでないところが民営化され、ますます弱者は追い詰められている。
    学校給食では貧困層向けの無料給食制度があるが、予算が削られ、単価の安いジャンクフードが並んでいる。ピザハットなどの大手企業が学校給食市場をターゲットに進出している。フードスタンプを提供される貧困家庭でもジャンクフードばかり食べており、貧困層において肥満が進んでいる。
    FEMA(連邦緊急事態管理庁)はブッシュ政権下で予算を削られ、業務は外部委託により半ば民営化された。その結果、2005年のハリケーン・カトリーナでは、未曽有の被害が発生し、救済も滞った。学校も運営が民営化され、教師の数が激減している。
    医療分野では、医師と患者の間に保険会社が立ちはだかり、医療制度を支配している。高い保険料を払えない市民は無保険となり、必要な治療を受けずに我慢し、病院に行けば高額の治療費を請求され、破産してしまう。保険に入っていても保険会社はなるべく治療費を抑えるために利用できるサービスは限られ、結局保険で払ってもらえないことも多い。病院は保険の請求手続きに膨大な作業を強いられ、スタッフの3割から4割は保険請求のための作業に時間を取られる。保険会社の論理の前に、病院はコスト削減を余儀なくされ、患者は必要な医療サービスが受けられずにいる。
    大学の授業料を払えない若者は多く、彼らは学資ローンや奨学金により授業料を賄っている。そこで米軍は、大学の学費を負担するといって高校生を軍隊に勧誘する。実際に戦闘に参加することはほとんどないという。貧困層の若者にとって魅力的な提案だ。しかし、軍隊に入るとやがて彼らはイラクの最前線に送られる。
    アメリカの戦争は今や民間企業が支えている。ハリバートン社やブラックウォーターUSA社が、民間人を傭兵やトラック運転手などとして戦場に送り込んでいる。彼らは民間企業からの派遣者であり、戦死者にはカウントされない。医療破産した男性をトラック運転手として雇い、イラクの最前線で食料や物資運搬に使う。
    大企業が利益を上げている一方で、貧困層の人々は様々な制度で追い詰められ、最後は戦争に使われるなど、命の危険にさらされている。

  • 2016年現在、何も変わっていないどころかますますネオリベラリズムの波は大きくなっている…

  • 自由主義経済やグローバリズムが、儲けの材料としているものは貧困層や底辺の人々なのだ。
    貧しい人達が避けられない、断りきれない状況に追いやって更に搾取していく。なんとも上手い方法ではあるが、国全体の幸福には決して寄与せず、富めるものはますます富み貧しいものはますます貧しくなるだろう。
    食事、医療、軍隊などいろいろな分野でグローバル企業の搾取の仕掛けは準備されている。
    このルポに報告されている米国の様子を日本が順調に後を追いかけているさまが空恐ろしい自体であることにも気が付かないといけないのだ。

  • アメリカの先進的なイメージとは裏腹に救われない貧困の人々。貧者は奴隷かのように扱われている。生存権と基本的人権を侵害するようなことはあってはならないはずであるのに。恐怖しかない。日本も同じように新自由主義に走っていることは大変危険だ。

  • ゴシップ本としては面白い。ここに記載されていることが本当にそうなのかどうかが、よくわからないので評価がしづらい。本当だとしたらあまりにも悲惨であり、アメリカは完全なる社会主義国(政府と大企業がすべてを支配する国)ということになるが本当なのだろうか?まあ、今の大統領選を見ているとあながち嘘とも思えないが、それにしても本当だとしたらもう少し日本にその情報が届いても良いと思うが、どうなのだろう?

  • 衝撃だった。格差社会、なんでも民営化。これらが戦争に繋がるなんて。効率とか競争とか考えすぎると、本質を見失う。自由ってなんだろうか。

  • 民営化された戦争というインパクトの合う言葉に惹かれて購入したが、ぜんたいとしてもなかなか面白い本だった。貧者を作れば作るほど戦争というビジネスはうまく回転していくし、貧者を戦争に送るための仕組みとして高額な医療保険、医療、食、移民などがうまーくまるでベルトコンベア式に導かれるかのように運ばれていく仕組みは唸るものがあった。
    今、私は月額の奨学金を返済しなければならない立場にあるものだが、この金利、月額の返済額を上げて破産に追い込むことというのは、ごくごく簡単にできることなのだと思った。

  • ジャーナリストの堤未果が、現在の米国に巣食う問題を分析したベストセラー。2008年に発表され、同年の日本エッセイストクラブ賞、2009年の新書大賞を受賞している。また、続編として、2010年には『ルポ・貧困大国アメリカII』、2013年には『(株)貧困大国アメリカ』も発表されている。
    本書に描かれているのは、2001年3月11日の同時多発テロ以降に米国で顕著になった、貧困が生み出す肥満国民、民営化による国内難民と自由化による経済難民(人災だったハリケーン・カトリーナ等)、一度の病気で貧困層に転落する人々、出口をふさがれる若者たちの姿と、そうしたワーキングプアが「民営化された戦争」を支えているという驚くべき実態である。
    そして、著者は、「実はすべてを変えたのはテロそのものではなく、「テロとの戦い」というキーワードのもとに一気に推し進められた「新自由主義政策」の方だった。何故ならあの言葉がメディアに現われてから、瞬く間に国民の個人情報は政府に握られ、いのちや安全、国民の暮らしに関わる国の中枢機能は民営化され、競争に負け転がり落ちていった者たちを守るはずの社会保障費は削減されていったのだから」といい、「今起きていることは、あのテロをきっかけに一つの国が突入した「報復戦争」という構図ではなく、もっとずっと大規模な、世界各地で起きている流れの一環であることを。「民営化された戦争」という国家レベルの貧困ビジネスと、それを回してゆくために社会の底辺に落とされた人間が大量に消費されるという恐ろしい仕組みについて」知ったと語る。
    個人の自由や市場原理を再評価し、政府による個人や市場への介入は最低限とすべきと提唱する「新自由主義(=ネオリベラリズム」は、資本主義の究極の姿とも言えるが、それを強力に推し進めたことにより、米国でどのような矛盾・問題が生じたのか。。。資本主義の限界を知り、ポスト資本主義の目指すべき方向性を考える上で、多くの材料を示してくれる一冊である。
    (2008年10月了)

  • 過度な自由化がもたらす格差拡大、その弊害が描かれている。代えが利かないものは自由化してはならないと感じた。教育ローンにしろ、医療保険にしろ、株主の顔を気にしなくてはならない民間に任せることで、利益の最大化を彼らは追求するため、お金を出し渋る、金利を高くする等受益者本位のサービスを提供しなくなる。また、上げた利益で学校側や病院側に莫大な寄付をすることで、寄付を失いたくない病院や学校も民間のサービスしか選択肢を与えなくなる。例えば「車」を使わない生き方は最悪できても、教育や医療が受けられないと、稼げないし、死ぬ。代えが利かない分野で民間企業が独占してしまうと悲惨な事態を招いてしまうということが示されていた。
    一方で貧困層寄りに描かれているものの、その貧困の成因のひとつである移民に関しては擁護していたのが気になった。

  • 市図書館。

    医療保険制度の闇、教育の行きつくところ、軍事産業…
    中流家庭からの一瞬での転落話は恐ろしすぎる。

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ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)の作品紹介

貧困層は最貧困層へ、中流の人々も尋常ならざるペースで貧困層へと転落していく。急激に進む社会の二極化の足元で何が起きているのか。追いやられる人々の肉声を通して、その現状を報告する。弱者を食いものにし一部の富者が潤ってゆくという世界構造の中で、それでもあきらめず、この流れに抵抗しようとする人々の「新しい戦略」とは何か。

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