ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

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著者 : 堤未果
  • 岩波書店 (2008年1月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311126

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • すごい本だった。著者の筆力やリサーチ力に圧倒された。
    アメリカの格差社会、その底辺に属する貧困層の現実をこれでもか、と知らされる。正直なところ、ここまで悲惨だとは思わなかったので、とても驚いた。
    特にショックだったのは、移民の子などは大学に入る経済力がなく、軍隊に入るしか道がないそうだが、それを知り尽くしたエージェンシーが言葉巧みに軍隊に勧誘し、戦場の最前線に送られるという。
    著者は、キャピタリズム万歳という信念のもと、国が責任を負うべき分野までもが民営化され、教育や医療や国家セキュリティがビジネス化されてしまったのが問題と指摘する。また、一度貧困に落ちてしまうと、そこから這い上がれる道は限りなく少ない。
    アメリカのやり方をまねてきた日本でも、貧富の差が広がったと報じられている。同様のことが起こりつつあるのだろう。いろいろ考えさせられる。
    文章の構成が素晴らしい。是非お勧めしたい一冊である。

  • 2007年のサブプライムローン問題が顕在化した時点で執筆されている。ブッシュ大統領の下での大企業優遇政策の裏で、貧富の格差が拡大・固定化し、貧困層が追い詰められていく様子を膨大なインタビューをもとにレポートしている。
    アメリカでは弱者を支援するための予算がどんどんげずられている。医療や災害対策など民営化すべきでないところが民営化され、ますます弱者は追い詰められている。
    学校給食では貧困層向けの無料給食制度があるが、予算が削られ、単価の安いジャンクフードが並んでいる。ピザハットなどの大手企業が学校給食市場をターゲットに進出している。フードスタンプを提供される貧困家庭でもジャンクフードばかり食べており、貧困層において肥満が進んでいる。
    FEMA(連邦緊急事態管理庁)はブッシュ政権下で予算を削られ、業務は外部委託により半ば民営化された。その結果、2005年のハリケーン・カトリーナでは、未曽有の被害が発生し、救済も滞った。学校も運営が民営化され、教師の数が激減している。
    医療分野では、医師と患者の間に保険会社が立ちはだかり、医療制度を支配している。高い保険料を払えない市民は無保険となり、必要な治療を受けずに我慢し、病院に行けば高額の治療費を請求され、破産してしまう。保険に入っていても保険会社はなるべく治療費を抑えるために利用できるサービスは限られ、結局保険で払ってもらえないことも多い。病院は保険の請求手続きに膨大な作業を強いられ、スタッフの3割から4割は保険請求のための作業に時間を取られる。保険会社の論理の前に、病院はコスト削減を余儀なくされ、患者は必要な医療サービスが受けられずにいる。
    大学の授業料を払えない若者は多く、彼らは学資ローンや奨学金により授業料を賄っている。そこで米軍は、大学の学費を負担するといって高校生を軍隊に勧誘する。実際に戦闘に参加することはほとんどないという。貧困層の若者にとって魅力的な提案だ。しかし、軍隊に入るとやがて彼らはイラクの最前線に送られる。
    アメリカの戦争は今や民間企業が支えている。ハリバートン社やブラックウォーターUSA社が、民間人を傭兵やトラック運転手などとして戦場に送り込んでいる。彼らは民間企業からの派遣者であり、戦死者にはカウントされない。医療破産した男性をトラック運転手として雇い、イラクの最前線で食料や物資運搬に使う。
    大企業が利益を上げている一方で、貧困層の人々は様々な制度で追い詰められ、最後は戦争に使われるなど、命の危険にさらされている。

  • アメリカがいまなぜデフォルトの崖っぷちにいるのか。
    なぜ共和党が頑に医療保険改正にNOと言うのか。
    この本を読めばわかる。
    アメリカの轍を踏んできた日本としては、知っておくべきことが満載である。
    私が歴史教師なら絶対に生徒にこの本を読ませる。
    父兄や上司からクレームが来るかもしれないけど。

  • 中流から貧困層へと追いやられるアメリカ国民を追ったルポタージュ.
    二極化を促進する国全体のシステムの実態には驚くばかり.食料,医療,教育,ローン... 国家包みで生産した貧困層は,「良い話」に乗せられて戦場に送り込まれるのだからとんでもない.
    この本で取り上げられているのは,ブッシュ政権下の2007年までのアメリカ.オバマ政権に変わってからアメリカはどのように変わったのかは『ルポ 貧困大国アメリカ Ⅱ』でわかるのだろう.続きも読みたいし,また別の人の書いた本も読んでみたい.

    【目次】
    プロローグ
    第1章 貧困が生み出す肥満国民
    第2章 民営化による国内難民と自由化による経済難民
    第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
    第4章 出口をふさがれる若者たち
    第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」
    エピローグ

  • アメリカンドリームを夢見て大量に流入する移民たち。
    その一方、急速に「中間層」が貧困層に転落し、多くの人が、高騰する教育・医療を十分に受けられなくなっている。
    肥満の者が増え、借金を持つ者、無保険の者が増え、貧しい者はさらに転落していく、自由の国アメリカの現状をルポした(数年前の)話題作。

    最初の数十ページでどわ~っと叫びそうになった。
    貧困から肥満に陥る…
    世界から考えるとおかしすぎるその仕組み。
    お金がないから安くて手軽なファーストフード・ジャンクフードしか食べられない??
    節約には自炊第一!の私には到底納得できないのだけど、アメリカの現状はそうらしい。
    とあるアメリカの学校の給食メニューに驚愕。給食にピザって。ハンバーガーって。食を何と心得る。
    肥満児対策として取り入れられたダンスダンスレボリューションをして、運動後にはチョコレートミルクでのどを潤す子供たち。
    牛乳は身体にいい、という断片的な知識をもって、国家全体で間違った方向性に突き進む。
    そういえば、アメリカ人って、日本食は体にいいといって寿司食べながらコーラ飲む人たちだった。(こないだアメリカで実際に見た!しかも寿司食べ過ぎやった。笑)
    私、栄養学を勉強してアメリカに行こうかしらとちょっと本気で考えてしまう。

    ただ、こういうルポに筆者の主義主張が入り込むのは当然の前提としても、見方が一面的な気もして。
    移民を受け入れる受け入れないは、アメリカ含めた国家の権限であって、不法移民に対しても国民と同じように教育・医療・仕事を与えて生活を保障するなんてできるはずもない。
    この筆者は、同じ主張をアメリカ以外の国でできるのかなぁ。

    そして最後、「え、なんでそういう結論に?」と疑問符が頭の上にぽわぽわと出てくる。
    下層の人たちが戦争ビジネスに次々と取り込まれている現状をみて、日本の憲法9条や25条を守ろう、というのはいくらなんでも飛躍だと思う。
    下層の人がどんどん増えて、お金の問題からイラクに派遣され使い捨てられるという貧困問題と、戦争反対という主張とはまた別の問題だから、憲法9条云々をここでもってくるのはおかしいだろう(仮につながるのだとしても、その道筋をもっと丁寧に書いてほしい…)。
    憲法25条にしたって、これを大事に、なんて言われても抽象的すぎて、何の意味もないのでは。
    もちろん、アメリカの現状は、アメリカと同じ方向に進もうとしている日本にとって学ぶべきところが多く、対岸の火事ではないけれど。

    インタビューをまじえてそれなりに丁寧に綴ってきた前半部分から、自説を唐突に展開した最後がもったいなかった。
    もっといいまとめ方はなかったのかなぁ。

  • アメリカの新自由主義の弊害が書かれている。多くの公共システムの民営化と、その犠牲となる貧困層の話。アメリカの医療費と医療保険料がめちゃくちゃ高いのが、怖かった。

  • 衝撃の一冊。アメリカの貧困、いや、非道さ、資本主義の恐ろしさ、その実体は想像を絶する。
     章を追うごとにアメリカの絶望度の深刻さを知ることになる。
     「アメリカンドリーム」とはよく言ったものだ。「ドリームジャンボ宝くじ」みたいなものだろうか。夢に惑わされ、大多数の人々は搾取されるわけだ。

    ブッシュ政権下で増大した軍事費のしわよせは、社会保障費の大幅削減。
    予算削減により大学費用や医療費が高騰し、破産し、家を差し押さえられる人々が続出。給料の良い軍隊や派遣社員となり戦場に派遣されてゆく。帰還しても精神状態が悪化し、就職できず、治療費などで入隊前よりも貧困に。ホームレス化。帰還兵の自殺率は戦場での死亡率を超えている。

    あまりにも残酷な現状の生々しい描写に、どっと疲れるが、ぜひ多くの人に読んで欲しい一冊です。続編およびコミック版も出版されています。

  • 「アメリカンドリーム」という言葉はアメリカの現状を反映できていない、ひと昔前までの姿であると、この本を読み終わった今、思う。
    アメリカでは「競争」=「自由」と考えられており、その価値観の下、教育や医療など「いのち」と関わる産業までもが市場原理の中へと放り込まれてしまった。本著では、そういった人の根幹に関わる産業が民営化された結果生み出した、貧困の格差について緻密にレポートされている。
    また、同じく国防という分野も民営化され、戦争は貧困ビジネスの一環として経済を支えることとなる。
    国が国民に対して本来背負うべき最低限の責任までも放り投げてしまった時、一度生活から転げ落ちてしまった国民に誰が手を差し伸べるのか。小泉・安倍内閣によって民営化が進められ、今なお、様々な分野にその魔法の言葉が囁かれているこの日本においても、このことは他人事ではないと思う。
    著者がこの本で伝えたかったのは、アメリカの現状だけではないように思う。グローバリゼーションによって世界が変わっていく中、私たちはもっと正確な情報を知らなければいけない。例えば、戦争は国際政治の文脈だけでとらえるのではなく、貧困ビジネスの一部であるという見方を持つこと。例えば、アメリカの肥満問題はただ食文化が原因なのではなく、アメリカ社会を蝕む貧困が影響しているということ。民主主義の国において、私たちはよりよい社会を目指すために、溢れる情報の中から的確に、正確な情報を知り、考えることをやめず、行動に移していくことが、これからの未来を創っていくことに必要なのだ。

  • 内容としては、大体10年位前の話ですが、今現在進行中の国内外の問題を読み解くうえでも役に立つ視点がある。
    国内では、格差の拡大(特に教育格差)、医療費予算の問題。民営化、市場の論理になじまず、国が責任を持つべき分野があるという指摘は、まさに現在の日本に突き付けられている課題だろう。
    国外では、もちろん、いわゆる「トランプ旋風問題」につながってゆく。貧困格差で真っ先に追いつめられたのが、昨今話題の「不法移民」であることは、非常に示唆的。

  • トランプ大統領が言う「Make America great again(再び偉大なアメリカにしよう)」から読み取れる通り、現在のアメリカは偉大でないことが実感できる一冊。2008年の作品のため、ブッシュ大統領時代の話になる。
    貧困家庭では安価なジャンクフードを食べるしかなく、結果肥満児・肥満成人が増え、昔は金持ちのイメージだった太っちょなシルエットは今や貧しさを示すものとなっている。
    国防総省が学費を負担し、医療保険にも入れる、市民権も与えられるという理由で軍に進む若者が増え、経済的な徴兵制となっているという。
    日本がこのようなアメリカを真似しないためにはどうすればよいのか、そうした話し合いはされているのか、世の中に興味がわいてくる。

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貧困層は最貧困層へ、中流の人々も尋常ならざるペースで貧困層へと転落していく。急激に進む社会の二極化の足元で何が起きているのか。追いやられる人々の肉声を通して、その現状を報告する。弱者を食いものにし一部の富者が潤ってゆくという世界構造の中で、それでもあきらめず、この流れに抵抗しようとする人々の「新しい戦略」とは何か。

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