中国の五大小説 上 (岩波新書 新赤版 1127)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311270

作品紹介・あらすじ

一度は通して読んでみたかったあの物語を、練達の案内人と共に楽しむ。講釈師演じる「語り物」から生まれた中国の白話長篇小説には、他に類を見ない面白さが満載。とりわけ五大小説を読むことは、まさに「小説」が生まれ成熟してゆく歴史に立ち会う、限りなく魅惑的な経験に他ならない。読後は原作に手がのびること請合い。

感想・レビュー・書評

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  • 三国志演義は類書もたくさん読んできて、なるほど、そーだよね!って共感するところが多かった!
    西遊記は先月読んだこともあり、そういう見方もあったのかと目から鱗な場面が多かった。中国古典小説には、聖人君主のような出来上がった人格者ではなく、あくまで人間として、良いところもあるけど、悪いところもあるよね、というより人間性に目を向けた描写が多いように思う。仁義を強調するために、あえて脇役を役立たずにするとか、語り手の試行錯誤が見え隠れする。

  • 蔵書整理で手放すので、再び出会い読む日もあるか

  • 中国文化には興味があったものの、なかなか取っつきにくいので、本著書を皮切りに理解を深めようと思い購入しました。

    ゲームや漫画の影響で三国志のことを知っている人も多いと思いますが、自分は全く予備知識なしで読みました。
    中国人の印象としては、仲良くなれば義理固いと感じてしまうのですが、本誌にある『侠』の考え方がそのまま現代人にも受け継がれているのではと思いました。
    また、今の中国は国家を統一しようという方針ですが、分裂と統一を繰り替えした歴史を顧みると、そのような流れは必然とも捉えられます。

    西遊記自体は日本のドラマ等の影響で大まかな内容は知っていましたが、こんなにコメディな内容とは知りませんでした。
    また、三蔵法師=女性という認識でしたが、それすらも違うとは、あまりにもメディアに洗脳されていた自分が恥ずかしいです。さらに三蔵法師の性格ときたら、自分の先入観をしっかりとひっくり返してくれました。
    最後の最後で辻褄と無理やり合わせるあたりなんかも、中国人の深層心理にあるのではと思ってしまいました。

    あまり普段から文章の裏を読むようなことはしていなかったのですが、著者の解説を読んで、なるほどなと思う部分が多々ありました。
    あくまで解説書なので、詳細部分までは分からず話が飛んだりしますが、物語全体俯瞰するにはうってつけの本だと思います。

  • 中野さんのを読むついでにこっちも読んだよ。西遊記のとこを読みたくて買ったので、前半は読んでません。
    あらすじが多くて、さざっと全体をなでるよーに解説したみたいな感じ。三国志演義とか、他の小説との比較も多かった。

  • 上巻は「三国志演義」と「西遊記」の解説。
    両方とも部分的には内容を知っていても、作品そのものを(もちろん翻訳で、だけど)読もうとも思えない大作。
    この本がきっかけで、読んでみようと思うかな~、なんて期待していた。

    両書の共通点は、講釈師の話術に大きく影響を受けた作品であること。
    「章回小説」という、一話完結型の物語が連なってできた作品であること。
    しかし、物語の構成原理が全く違う、という話だった。
    三国志は、曹操をトリックスターとして、大きな歴史の流れを起伏激しく描いていくのが特徴なのだとか。
    一方、西遊記は、必ず三蔵が窮地に陥り、それを孫悟空が救うというお決まりの形式の安定感を楽しむものだそうだ。

    こうした大きな話のほかには、やはり専門家ならではの細やかな分析がおもしろい。
    例えば、三国志の蜀の最後の皇帝、劉禅。
    何もしなかったことで生き延びた人であり、もし自覚してやっているのなら、とんでもなく聡明な人だったのではという見方は、ちょっと穿っている気もするけれど、おもしろい。
    西遊記では、沙悟浄が「水怪」であり、実際にはどんなものなのか、具体的なイメージが描きにくいものなのだとか。(河童のイメージは日本で作られたそうだ)。
    菩薩や玉帝といった聖なるものも、現実主義的で人間的な造形になっているとか。

    で、この本で何か十分満腹になってしまった気がする。
    やはり、「三国志演義」「西遊記」を読むことは…ないかも。

  • 明清代に成立した中国の有名小説5編について、その概略とさわりの部分を紹介しながら、各小説の成立の背景や物語展開の特徴、他の作品との関連等をわかりやすく説いている。近年よく見る、ただ粗筋を追うだけの類書とは、比較するのも失礼。三国志の劉備も西遊記の三蔵法師も、物語の中心にいる人物が「何もしない」「何もできない」からこそ従者一同が大活躍できる構造になっている、という指摘に納得。各物語の大枠についての分析もおもしろかった。

  • 入門書としては、非常に纏まっており、各小説を読む気にさせる。ただ、詳細な研究内容を記載しえないので、別途研究書を読む必要あり。

  • 中国の「五代小説」のうち三国志演義と西遊記のあらすじを紹介している本。
    とてもわかりやすく紹介されている。個人的には是非とも三国志演義を読みたくなった。

  • [ 内容 ]
    一度は通して読んでみたかったあの物語を、練達の案内人と共に楽しむ。
    講釈師演じる「語り物」から生まれた中国の白話長篇小説には、他に類を見ない面白さが満載。
    とりわけ五大小説を読むことは、まさに「小説」が生まれ成熟してゆく歴史に立ち会う、限りなく魅惑的な経験に他ならない。
    読後は原作に手がのびること請合い。

    [ 目次 ]
    『三国志演義』の巻?興亡の歴史と物語の誕生(「三」で結ばれた世界のはじまり?桃園結義 大トリックスター、曹操の登場-呂伯奢殺害事件 色と欲に流れる美将、呂布-虎牢関の戦い 曹操の「偏愛」-典韋・呂布の最期 男が男に惚れるとき-勇者の邂逅 ほか)
    『西遊記』の巻-巨大な妖怪テーマパーク(天地をかけめぐるスーパー猿-孫悟空登場 地獄の沙汰はいかに-太宗の地獄めぐり 遅れてきた主役、三蔵法師-西天取経の旅へ 転生、変化、よみがえり-従者一行、勢揃い 「俗」なおかしみ-神仙・如来のふるまい ほか)

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著者プロフィール

中国文学者。国際日本文化研究センター名誉教授。07 年「トリックスター群像」で第10 回桑原武夫学芸賞受賞。主な著書に個人全訳「三国志演義」( 全4巻)「世説新語」( 全5巻)「水滸伝」( 全5巻) など。20 年5 月逝去。

「2021年 『史記・三国志英雄列伝 戦いでたどる勇者たちの歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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