ヴェトナム新時代―「豊かさ」への模索 (岩波新書)

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著者 : 坪井善明
  • 岩波書店 (2008年8月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311454

ヴェトナム新時代―「豊かさ」への模索 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • ベトナム旅行前の知識詰め込み本として、ちょうど良かった。

  • 現代のベトナムの道程を知る。きな臭い。
    強かな国民が我慢を重ねて作ってきた国は、きな臭い。興味深い。


     さすがずっと中国という大国の圧力にさらされてきた土地だけあってグダグダな国だなと思いました。

  • この本はいま現在のベトナムについて、どんな問題を抱えていてどこへ向かっているのかを描こうとしている。民間レベルの事柄も多く触れられているため、とても身近に読むことができる。現代ベトナムについてその問題を知りたいには適する一冊。

    ベトナム戦争を勝利に導いた三つの戦略が書かれている(p.28f)。(1)戦場で軍事的に耐え切ること。そのために、犠牲を恐れず団結に徹すること。(2)国際社会、つまり共産圏以外にも途上国、西側先進国の国民の支持を圧倒的に得ること。このため、世界のジャーナリストや作家を直接招聘して戦場を取材させた。また、自分たちに有利な情報を国際社会に提供し続けた。(3)交渉により米軍が撤退するシナリオを計算した。アメリカの民主主義のメカニズムを活用し、アメリカ国内で反戦運動が盛り上がるよう人智を尽くした。アメリカとの交渉が可能となるように、一方的な感情的な反米運動は抑圧した。最終戦争の形へと国民を先導し交渉の余地を無くしてしまうような事態を招かないよう、理性的な判断を行った。

    ベトナムは基本的にまだ農作物や原材料の輸出に頼る国でもある。例えばベトナム南部では年間1200万トンを超える原油が採取されているが、自国内に精製工場を持たない。そのため、原油をほぼすべてシンガポールに輸出し、ベトナム自身は石油製品を輸入している(p.63)。また、産業の基礎となる製鉄について、自国内に製鉄所がなく生産ができない。韓国や中国は日本のODAを利用して、資金とともに製鉄技術をうまく移転させ、その後の発展の基礎を築いたがベトナムはそのような状況にない、といった産業の基礎の弱さが指摘されている。

    また、ホーチミンを共産主義者としてではなく、共和主義者として理解する試みは著者の試論に当たるが、興味深いものだ(p.174-190)。ホーチミンは自身が個人崇拝を禁じ、遺骨をベトナム北部・中部・南部の3箇所に散骨するよう遺言して亡くなったにもかかわらず、その後の北ベトナム政府はこの遺言を完全に無視。遺体は保存され、ハノイにはホーチミン廟が作られ、紙幣の肖像はすべてホーチミン、政府はホーチミン主義なるものを謳うというように個人崇拝を進めている。こうした中、ホーチミンを冷静に評価するのはなかなか難しい。著者はホーチミンの中から、人が他人を差別せずに、人として平等に扱うという共和国の精神を読み取っている。

    最後に、現代ベトナムの4つの弱点が挙げられている(p.240-242)。(1)共産党の一党支配という体制が時代に合わなくなってきている。(2)いまだに通貨主権が確立していない。紙幣の印刷さえオーストラリアに委託している状況。(3)産業構造。製鉄所も大規模な石油精製プラントもない。(4)人材不足。現代的知識の集積が遅れている。

  • 逗子図書館で読む。期待はずれの出来です。ベトナム権力は、南部出身の政治家に移ったそうです。何故、北部ではなく、南部へ移ったのでしょう。そこら辺が知りたい。

  • 教科書的な鳥瞰映像ばかりではなく、現地の知人の体験を例に挙げて、今のヴェトナムを切り取る視点はわかりやすい。数十年に渡って自国が戦場となった国、元の分断国家、そして共産国としての問題や悩みがこの国にもある。でも諦めず、つっかえながらも粘り強く、少しづつ前に進んでいく姿がヴェトナムらしい。アメリカと戦争して唯一勝った国、フランスや中国といった大国に2000年抗い続けて生き残った国のポテンシャルは、こういうところにあるんじゃないかと思った。

  • (2014/5/18読了)久々に「ザ・岩波新書」と言える骨太の新書を読んだ。21世紀のベトナム社会の概略を政治経済面から知るにちょうどいい良書だった。本書の刊行2008年以降の6年間でどう変化してきたのか知りたい!

  • ○この本を一言で表すと?
     ベトナム戦争から現代までのベトナムを日本人視点で書いた本


    ○この本を読んで面白かった点・考えた点
    ・ベトナムについて最初はIT系の記事から興味を持ち、「日本人に近い民族性」「日本人と同じように勤勉」というような印象から見て、実際にベトナムに行った人や仕事をした人の話を聞いて少し情報が修正されながらも日本に近いような印象を持ち続けていましたが、ベトナムに対する印象がガラッと変わりました。

    ・ベトナムは社会制度や政策では中国、産業的にはインド、実態的には発展途上国等の一面を併せ持った不思議な国だと思いました。

    ・「ベトちゃん・ドクちゃん」のベトちゃんが2007年に亡くなり、ドクちゃんがプログラミングを習い、病院の事務職員として自立し、結婚していたということを初めて知りました。昔は「そんな状況の人がいるのだな」と思っていただけでしたが、枯葉剤の影響やそれが使用された背景などを知ると、イデオロギーの対立・国家間の対立などからこのようなことが引き起こされるのだと改めて考えさせられるものがありました。(第1章 戦争の傷跡)

    ・枯葉剤を直接摂取した者の孫までに障害が現れるというのは驚きでした。そして枯葉剤散布の責任の所在が今もって自国の兵士に対しては認め、ベトナム国民には認めないという状況が続いていることも初めて知りました。(第1章 戦争の傷跡)

    ・カンボジア侵攻、中越戦争、経済封鎖などの経緯も初めて知りました。(第1章 戦争の傷跡)

    ・ベトナムの「ドイモイ政策」はかなり成功した政策なのだと思っていました。よくベトナム経済が明るい、ITに強い、教育環境が整っている、「VISTA」「NEXT11」の1国である、などと前向きなイメージがありましたが、実態として経済環境が整っておらず、石油が出ても自国で精製できず、鉄鋼の生産も覚束ないというような状況で止まっているというのは初めて知りました。インドでも第1次産業から第3次産業に移行したが工業が育っていないという話を聞いたことがありますが、それでもそれなりに工業にも進出していることに比べてなかなか厳しい状況だなと思いました。(第2章 もう一つの「社会主義市場経済」)

    ・イデオロギー的にも歴史的にも対立していながら、国際情勢のなかでの自国の立ち位置を把握してアメリカと交渉してWTOに加盟したり、社会主義国家でありながらASEANに参加したりする、ある意味マイナスな状態から築き上げていく外交力はすごいなと思いました。(第3章 国際社会への復帰)

    ・政治的な構造、特に共産党の役職が政府の役職より上位にきて、三権分立ではなく三権分業という政治体系は中国に似ているなと思いました。公安のトップが国家主席よりも上位に来るところは中国よりもさらに中央集権的な印象を受けました。(第4章 共産党一党支配の実相)

    ・汚職体質は他の東南アジアの国でもありましたが、その中でも汚職の蔓延度が高いというのはすごいなと思いました。より中央集権でモニタリング機構がなければそのようになっても仕方がないのかなと思いました。(第4章 共産党一党支配の実相)

    ・格差が拡大していることとそれを許容しない社会という対比は似たような政治構造の中国の先富論と大きく異なるところだなと思いました。政治構造が似ていても経緯や歴史が異なれば違うものだなと思いました。(第5章 格差の拡大)

    ・名前とベトナム解放の英雄という実績だけはなんとなく知っていたホーチミンがほとんど海外で活動し、その中で単なる抵抗運動ではなく「ベトナム国民」という価値観を共有することで持続的に活動できる体制に持っていったというのはすごい人物だなと思いました。カリスマ的な人物ではなく、見た目で威厳を醸し出すような人間ではないにもかかわらず、時勢の動きを利用して独立まで持っていったのは、他の歴史上の何かを成し遂げた人物と違った凄みを感じます。(第6章 ホーチミン再考)

    ・日本のベトナムへの貢献と、それに比例しない存在感の薄さは他の国でも似たような話があったなと思いました。この本でベトナムが変革していきながらも変えられないものについて触れられていましたが、日本も世界のなかで地位を確立していかなければならなかった時の戦略が今も惰性で行われているような、昔はあったであろう海外支援と外交を包含するような戦略・方針が今はなさそうなところはダメな意味で似ているのかもしれません。(第7章 これからの日越関係を探る)

    ・著者のベトナムに対する提言は、中国に関する本や記事で書かれている提言に似ているなと思いました。国家としての規模が大きく、より危ういバランスの下で成り立っている中国よりは実行するにあたって現実味があるのかなと思えました。(終章 新しい枠組みを)


    ○つっこみどころ
    ・各章の最初にバイクにいろいろ乗せた人たちが載っていて、何かメッセージのようなものを持たせているのかなと思っていましたが、あとがきで「しかし冷静に考えると、交通安全という観点からはこれほど危険なことはない。」とバッサリと切っていて笑えました。

  • 現在のベトナムが抱えている社会問題に俯瞰するのに適した本です。経済発展著しい南のホーチミンか、政治都市・首都としてのプライドを持つ北のハノイか。ベトナム戦争の対立もあってか、南北の遺恨は至るところで見え隠れ。 特別目立った指導や著作がないため、ホーチミン主義はバズワードと化していて、過度な神聖化が進んで一人歩きしている印象がありました。

  • ベトナム戦争以後のベトナムの歴史/政治/経済/文化について
    サッと概説された一書。
    平易な文体でコンパクトにまとめてあり、非常に読みやすい。
    社会主義国でありながら中国や北朝鮮とは
    また違った歴史をたどったベトナムという国が、
    ベトナム戦争を経て現在どうなっているのかを知る
    入門書として適している。

  • ベトナムの政治経済体制を描いたものであり、そこに興味があればいいのであるが、旅行や留学に行こうという学生には物足りない。ビジネスマン向けの本ならばいい。

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ヴェトナム新時代―「豊かさ」への模索 (岩波新書)の作品紹介

ドイモイ(刷新)政策採用から二十余年。米国と国交を正常化し、ASEANやWTOへの加盟も果たして国際社会への復帰を遂げた今、ヴェトナムはどこへ向かっているのか。未曾有の戦争の後遺症を抱えながら、一方でグローバル化の波にさらされる中、ひたむきに幸福を求める人々の素顔に迫り、日越関係の明日を展望する。

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