ジャ-ナリズムの可能性 (岩波新書 新赤版 1170)

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311706

作品紹介・あらすじ

権力との癒着、過熱する事件報道、強まる自己検閲…。マスコミへの不信・批判が叫ばれて久しい。しかし有効な解決策を見出せぬまま法規制の動きも強まっている。いま原点に戻って、ジャーナリズム本来の力、役割を問い直す必要があるのではないか。長年の現場体験を踏まえ、放送、新聞の現状を検証し、再生の道を構想する。

感想・レビュー・書評

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  • その国民が、きちんとした権力をチェックするマスコミを持てないのは、その国民の不幸である。
    この本の著者・原寿雄が、ここで述べることは、「ジャーナリストが、その取材のため、時に犯罪を犯してもいい。」という主張以外、至極もっともな事であると思う。
    恐らくは、昨今のジャーナリズムに対する危機感からであろう、そのトーンは、前著「ジャーナリズムの思想」とは、大分異なる。
    専門職であれば当然備えておくべき知識を原寿雄氏は備えており、欧米でのジャーナリズムにも詳しい。

    マスコミが権力のチェック機関である当然の事すら、日本のマスコミには共有されていないようである。
    原寿雄氏らの考えが、日本のジャーナリズムの主流になっていれば安心できるが、残念ながらそうはなっていない。
    マスコミが権力側の応援団を自認するなんて笑止千万。

    原寿雄氏は、自身、共同通信社の出身であり、そのため、紙面の多くは新聞に割かれているが。
    お笑いタレントが政治バラエティー番組に出演し、なんら背景のないコメンテーターらが、ここまで好き勝手に社会、政治を語っている国とは日本くらいではなかろうか??
    その社会的影響力から看過できないものとなっているが、真摯に情報番組や政治バラエティー番組に警鐘を鳴らしている学者や書籍は、僕が探してみたところないようである。

    そのTV番組では、田原総一郎みたいな変骨な奇妙な司会者としか見えないような人間が幅を利かせ、ミーハーなジャーナリストらの尊敬を集めているようである。

    新聞は、まだましであるが、その内容は、発表ジャーナリズムに過ぎず、記者クラブ制など既得権益を守ることに力を注ぎ、昭和の時代と何ら進化のない無味乾燥な紙面作りに力を注いでいる。
    やはり、ジャーナリズムとは取材に取材を重ねた調査報道にあるのではなかろうか?
    正直、ネットからも多彩な情報を獲得でき、ニューソースも多彩になった今、どこが最初に記事を抜いたなんて、読者に全く興味ないにも関わらず、新聞業界は、いまだにそういう事に力を注いでいるようだ。
    新型コロナウイルスが世界を席巻しているこの時期であるが、新聞が力を注いで報道すべきは、コロナ対策と共に、新型コロナによって被害を受けている劇場や非正規などの弱い立場の人の事であろうかと思うが、家庭の事情で朝日新聞を取っているが、とても共感を持って詳細に報じているとは思えない。
    また、突然降ってわいたような学校休校要請であるが、混乱した学校現場についても、きちんと報道されていない。

    もともと、朝日新聞はその気位の高さなどから嫌いなのであるが、今日(2020/04/06)など、現代思想をそれなりに囓っており、哲学にも興味も持つ僕でも難解であるというイメージのフーコーの特集だったり、安保の特集だったりする。
    また、他の情報を見ていると、別にそんなことを感じないのに、大上段に、ナショナリズムの特集だったりする。
    ジャーナリズムとは、一つは何処に焦点を当てるかが重要であったりするはずであるが。

    余程、曜日によって異なるが、J-WAVEの「JAM THE WORLD」やTBSラジオの「荻上チキ Session-22」の方がジャーナリスティックである。
    また、一人気を吐いて元気がよいのは、週刊文春だったりする。

    日本は、非常に貧しいマスコミしか持っていない、国民にとって、非常に不幸な状態である。
    恐らく、ニュースを報じる本家本元が非常に貧しい状態であるがため、俺はそれよりもっとましな事を言えるとネットが荒れるのであろう。

  • 元共同通信記者だからか共同通信に関してが少なかったかなと

  • 筆者の考えるジャーナリズムの在り方を、政治報道、表現の自由をめぐる公権力・私人との衝突、デジタル時代の3本柱を軸に考察。

    ジャーナリズムは権力監視、社会正義、ひいては民主主義のために必要不可欠だとする筆者の心意気が伝わってくる。
    でも、引退した今だからこそこんな理想論言えるんじゃね?とも思ってしまいます。人ごとではなく、現役で働いていたときにもっと頑張ってほしいもの。そんな内部改革ができない辺りに、メディア不信の根本があるんだと思います。

    また、著者は9条信者なきらいがあることを留意。

  • 発表ジャーナリズムをほどほどにして調査報道に乗り出そう。
    インターネットもフル活用して情報発信をしよう。
    この2点を言いたいがための本であると思う。

    昔こんなことあったんだよ、と自分の知らないことも書かれていたので参考になりそうです。
    著者はすごい人だったらしいです。

  • ジャーナリズムの理想論としては、ここに書いてあることは合ってるんだろうなあ、と思いますがでは具体的にどうすべきなのかというあたりが少し弱いかなあ。

    しかしジャーナリズムの働き次第で太平洋戦争を防ぐことが出来たかもしれないという内容は個人的に衝撃が多きかったです。
    当時は軍部に全てが支配されているイメージがあったので、満州事変に疑問を呈する新聞があったということも初めて知りました。

    ジャーナリズムの問題点はある程度理解出来たもののそれを改善するのはかなりの変革が必要なことを再認識しました。

  • [ 内容 ]
    権力との癒着、過熱する事件報道、強まる自己検閲…。
    マスコミへの不信・批判が叫ばれて久しい。
    しかし有効な解決策を見出せぬまま法規制の動きも強まっている。
    いま原点に戻って、ジャーナリズム本来の力、役割を問い直す必要があるのではないか。
    長年の現場体験を踏まえ、放送、新聞の現状を検証し、再生の道を構想する。

    [ 目次 ]
    序章 問われるジャーナリズムの権力観
    第1章 権力監視はどこまで可能か
    第2章 強まる法規制と表現の自由
    第3章 ジャーナリズムの自律と自主規制
    第4章 放送ジャーナリズムを支えるもの
    第5章 世論とジャーナリズムの主体性
    第6章 ジャーナリズムは戦争を防げるか
    第7章 ジャーナリズム倫理をいかに確立するか
    終章 ジャーナリズム再生をめざして

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 『ジャーナリズムの可能性』(原寿雄、2009年、岩波新書)

    今日の日本のジャーナリズムについて、表現の自由、世論、倫理など、幅広い観点から日本のジャーナリズムの現状と課題を説明している。

    (2010年1月18日)

  •  同じ著者の「ジャーナリズムの思想」が面白かったのでこっちも読んでみた。まあ、面白くないことはなかった。読むなら「ジャーナリズムの思想」の方をお勧めする。

  • ナベツネ批判がとにかくすごい

  • たぶん分かりやすくて,ある程度記者経験者としてジャーナリズムの悪いところも正直に書いているのだと思う。
    書かれているように,ジャーナリズムの理想型は実現できれば素晴らしいのだろうけど,残念ながら自分はそこまでジャーナリズムに期待できないと思う。

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著者プロフィール

元共同通信社編集主幹。

「2011年 『調査報道がジャーナリズムを変える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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