ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

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著者 : 堤未果
  • 岩波書店 (2010年1月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312253

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 堤未果さんによるアメリカ取材レポの続編。
    軍事、医療、教育、そして刑務所の民営化によって、アメリカは取り返しのつかない所まで来てしまった。
    そもそも奇妙な国だと思ってはいたが、ここまで腐敗しきっているとは思わなかった。
    露骨な差別ができなくなった今、ある意味、ナチのユダヤ排斥よりもずっと恐ろしい形で、貧困層と有色人種を奴隷化し始めている。
    新自由主義という名の元にかつての南軍は北軍にリベンジしようとしているのか?
    自由も平等もごく一部の白人キリスト教原理主義者のためのもので、これは一神教によくある排他性でもあるのだが、彼らは南北戦争の頃と何ら変わっていない。
    所詮移民たちを自国民ではなく奴隷としてしか見ていないということがわかる。
    日本はドイツやイギリスなどの北ヨーロッパのシステムに学ぶべきで、アメリカは反面教師にしなくてはいけない。決してアメリカの轍を踏んではならない。

  • 2010年刊行。


     通勤中に一気に読破した本書。その読後感は、めまいを感じるほどの内容というものだ。

     本書の対象は
    ① 学資ローン問題、
    ② 医療保険問題、
    ③ 民営刑務所問題
    の3点である。

     ①につき、本書は、独占状態の民営化企業(サリーメイ)が大学にも影響力を行使し、学生を経済的に破綻させるだけでなく、学業成就の阻害要因となっている事実を赤裸々に書いていく。
     のみならず、この問題の前提となっている社会情勢は、大学への租税投入の減額と、これによる学生の学費の自己負担の顕著な増大が生じている点にあるとするのだ。
     ここでいくらレビューしても、実情は本書を読まないと具体的に伝わらない。大学生、大人なんだから自己負担で良いんじゃないという余りに雑駁な議論が問題点を覆い隠していくのだ。


     次に、②につき、政治と企業との癒着に起因する構造的問題を暴く。
     換言すれば、これは医産複合体というべき状況であり、民間医療保険会社・製薬会社がタッグを組み、薬価を高止まりさせ、中間層(非高齢者・非低所得者)の負担を増大させているのだ。時に、治療を受けただけで、余りに高額な負担に耐え切れず、医療破産にまで至ることがあるという。
     おちおち病気にもかかれないし、病気という極めて偶然性の高い事情が人生の転落の兆しというのは、笑える事態ではなかろう。


     そして、③のテーマ、民営刑務所につき、囚人を安価な労働力として利用する実態が暴かれる。これは国防総省も利用側に含まれるといった側面も見受けられる。

     その内実を備に見ると、例えば、ストライクスリー法(有罪3回目であれば、罪状の軽微如何を問わず「終身刑」となってしまうこと)による終身刑者を増大させる法整備がある上、民営刑務所を建てるのに、REITを利用した投資の対象として、事実上の蛸部屋を社会に増加させていることが想起できそうな内容である。
     本来矯正施設は、現に犯罪を起こした人間を社会復帰させることで再犯を防止し社会の安全に寄与する制度であり、また、社会の安定化という意味では、塀の外で真っ当な生活をする人が多く、そこの収容者は少ない方が望ましいはずだ。
     しかしながら、先の制度を見るにつけ、囚人=犯罪者をあえて増大させ、かつその収容施設も増大させ、そこから甘い汁を吸う組織を作り出そうとしているのではないのかという疑念を生んでしまうほどである。
     
     以上のような眩暈を起こしそうな、米国の暗い実情が本書にて活写される。

     ここで終われば、米国固有の問題ということで、嗚呼、彼の国は大変なんですなぁというだけだ。しかし、翻って、日本を見ればどうだろうか。
     ① 貸付型奨学金の返済率が下がっていること、
     ② 健康保険制度の改悪が進んでいること
     ③ 刑務所の運営を民間に委託しようとする動きがあること
    など、アメリカの後追いともいえる状況が散見される。
     つまり、本書の状況は決して対岸の火事ではないのだ。大部分の中間層に大きな影響を及ぼしてきた米国の実態は、反面教師として、正しく学んでおくに如くはないのである。

     また、サービス分野におけるTPPに関しても、安易な導入には注意をしなければならないことが判る。つまり、保険・医療・投資など種々の役務提供領域において、儲かるなら何でもする米国企業に全ての日本企業が太刀打ちできるとは到底思えないし、米国的な拝金主義を蔓延させるべきでもないだろう。

     そういう観点からも本書の叙述は、我がこと、あるいは少なくとも反面教師として、理解しておかねばならないのである。

  • 前作に続き、米国の中流階級以下の人々の貧困地獄を描いている。救世主として熱狂的に支持したオバマ大統領も、結局支持基盤である産業界の意向を受けて、抜本的な医療保険改革や教育改革を行わず、イラクやアフガニスタンへの派兵を拡大させるなど、ブッシュ政権下の貧困化現象を悪化させてしまい、支持率を急落させたという。

  • 2009年1月にオバマ大統領が就任した。この本はその1年後の2010年1月に出版されている。医療制度改革など人々が何をオバマ大統領に期待したのかが描かれる。
    本書では、学資ローンにより学生が借金地獄に陥る実態、医療制度改革が製薬会社や保険会社のロビー活動により骨抜きにされていく実態、刑務所が低賃金労働者を供給する民間企業の一部となっている実態などをインタビューを中心に明らかにしている。
    ニューヨーク州では、スリーストライク法により、3度目の有罪判決を受けると、犯罪の内容にかかわりなく、終身刑を受けることになっているという。一方、刑務所は運営の民営化が進んでおり、時給40セントで労働させられ、部屋代と医療費で毎日2ドル引かれるなどしており、最終的に刑務所を出るときには借金を抱えることとなり、社会復帰がさらに難しくなる。アメリカ国内の大手通信会社の一つ、エクセル・コミュニケーション社は電話番号案内のオペレーターを刑務所に委託している。塀の外なら最低でも月900ドルの給与と社会保険等の経費が掛かるところ、囚人を雇えば、月180ドルで福利厚生費は一切かからない。こうしたことから、以前は第三国に委託していた業務も最近では刑務所に委託する企業が増えているという。今では刑務所REITが安定的な収益が期待できると人気になっているほどだ。
    アメリカ社会は一体どうなってしまったのだろうか。オバマ大統領も結局アメリカ社会を変えることはできなかった。そして、今度はトランプ氏のような過激な発言で民衆を煽る人が大統領候補として人気を博している。アメリカ社会の分断の状況は深刻だ。

  • アマゾンの感想では、「これは日本の近未来かもしれない」という声が多く聞こえた。声は届き始めている。これが、前回彼女がこれを書いたときと違う一番大きな情勢であろう。潮の目が変わっている。最後の最後に堤未果は自らこのように書く。「チェンジは待つものではなく起こすものだという人々が、リーターに丸投げする代わりに自らのビジョンを描き、未来を創るプロセスに参加し始めたとき、真のチェンジは訪れるのだろう」

    というのが2010年3月に書いた感想だった。しかし、2014年12月の今、この警告は日本の僅かにしか届いていないことが現実なのだということが明らかになっている。

  • これも4年以上前に読んだ本だが、今でも鮮烈に覚えているのが、刑務所ビジネス。おりからの刑務所の民営化と9.11以降の犯罪者の爆増とが相まって、なぜか超格安の労働市場が誕生、それが結局、娑婆の労働市場を破壊しているという話。「アメリカは大学生に奨学金をたくさん出す国」とイメージされるが、そのローンが学生を食い殺している話等々。

    これらを是正する為に選出されたオバマ大統領がいかに希望の星であるか、ということがこの時点では書かれていた。(あくまでもこの時点)

    結果は、3部作完結の「(株)貧困大国アメリカ」を読むとよくわかります。

    いやあ、ロボコップ、マトリクス、ブレードランナーの世界はそこまで来ているような気がする。

  • 同じタイトルの続編。続編はリーマンショック後に書かれたもので、前著よりも深刻度を増している。
    本書では、「学資ローン」、「社会保障」、「医療」、「刑務所ビジネス」を取り上げているが、どれももともとは政府の仕事のはずだが、民間ベースになってきているところがポイントである。まさにお金で買えないものはないという世界。ただし、買うにはとてつもなく高額を支払うことになる。富裕者層のための制度になりつつあるともいえる。
    これらは財政赤字を削減するために、これらの予算を削ったことからはじまる一連の改革?の結果である。日本は国債による借金問題を先送りにしているので現実の問題化していないが、近い将来、いよいよ国の借金を減らすフェーズになれば同様のことがおそらないとも限らない。米国におけるこの現象は行き過ぎた市場主義からの帰結だといえる。日本が今後どのようなかじ取りをするべきか、国民レベルでも知っておく必要があるだろうと思う。

  • だいたい前と一緒。この著者ずっとこんな暗い記事ばかり追って暗くならないのだろうか?

  • 呼んでいたら怒りと不安が襲ってきた。

  • 前回の【ルポ 貧困大国アメリカ】でハリケーン・カトリーナの救援が民営化で機能しなかった事や貧困層ほど肥満児童となり健康が悪化していることや、医療難民にサブプライムローン問題、そして貧困層の若者が経済徴兵制で、軍隊に入隊するが、そのほとんどが挫折する現状を書いてあり、あのアメリカが!?と愕然とすると同時に、それをお手本に小泉政権が同じ道を歩き始めていた事に気が付いた。

    そして今回の【ルポ 貧困大国アメリカ Ⅱ】は、更に悪化しているアメリカ社会にさらなる驚きが書かれていました。
    大学への教育費でローン地獄になり、結局学歴を取得するどころか借金地獄でただただ返済のためにだけ底辺の給与で働かざるを得ない若者達。
    社会保障の崩壊によって、安心の老後を夢見ていた高齢者に企業支給されるはずであった基金の減額や打ち切りで、さらなる労働を余儀なくされている高齢者。
    医療改革を進めようとするオバマと医療業界との対立による無保険者の増大と、遅々として進まない公約であった国民皆保険。
    軽微な罪やホームレスなどあらゆる罪で刑務所にどんどん送り込んで低賃金の労働力を得てビジネスにする刑務所の民営化。
    これを読んで、アメリカがさらなる疲弊と悪化している社会を知りました。
    まだ、これなら日本の方がましかなと思うが、結局政治に終わりはなく、声を上げ政治家を当選させた後にその政治家に仕事をさせるよう更なる声を上げることが大事なのだとつくづく感じました。
    オバマが今その岐路に立っているし、結果を問われるときに入っているのだと思いました。

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ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)の作品紹介

経済危機後のアメリカでは、社会の貧困化が加速している。職がみつからず、学資ローンに追い立てられる若者たち。老後の生活設計が崩れた高齢者たち。教育や年金、医療、そして刑務所までもが商品化され、巨大マーケットに飲みこまれている。オバマ登場で状況は変わったのか。人々の肉声を通して、アメリカの今を活写するルポの第二弾。

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)はこんな本です

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