ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1225)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312253

感想・レビュー・書評

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  • 【ノート】
    ・前回に引き続き、あまり愉快な気分にはなれないアメリカのお話し。ただ、冷泉さんの「アメリカは本当に「貧困大国」なのか?」を読んだ後なので、若干、のめり込み過ぎずに読んだ。

    ・とは言え、やはり衝撃的な証言の数々には慄然とする。特に保険制度の改正については、推進派、反対派、そして現場の医師などに対する取材により、単に国民皆保険にするだけでは問題が解決しないという複雑さを浮かび上がらせている。

    ・前著では国民貧乏にすりゃ、徴兵しなくても入隊するしか選択肢がないという状況に慄然としたが、今回もそれに匹敵するインパクトの取材が。その名も「刑務所ビジネス」。囚人達は最低賃金を遙かに下回る賃金で働かせることができ、それを企業が労働力として利用する(!)。更に加えて、その賃金の低さに加えて、民営化された刑務所(!)ではトイレットペーパーの使用料まで囚人から徴収し、出所したら、ムショ暮らしの間に借金ができてしまっているという、出口ナシ状態。加えて、アメリカでは刑の軽重に関わらず3回、有罪判決を受けたら問答無用で終身刑だそうで、この制度の名が「スリー・ストライク」。ふざけてんじゃないかというこのネーミングもさることながら、服役している刑務所暮らしにさえコストがかかり、出所したら既に借金まみれって、絶望的におかしくない?

    ・アメリカがこんな大変な状況なのだとしたら、それを打開するために自らの経済的権益を拡張する手段としてTPP(不勉強だが)などを強行推進するのも、もっともな話だと思えてくる。

  • 前作に続き、米国の中流階級以下の人々の貧困地獄を描いている。救世主として熱狂的に支持したオバマ大統領も、結局支持基盤である産業界の意向を受けて、抜本的な医療保険改革や教育改革を行わず、イラクやアフガニスタンへの派兵を拡大させるなど、ブッシュ政権下の貧困化現象を悪化させてしまい、支持率を急落させたという。

  • 2009年1月にオバマ大統領が就任した。この本はその1年後の2010年1月に出版されている。医療制度改革など人々が何をオバマ大統領に期待したのかが描かれる。
    本書では、学資ローンにより学生が借金地獄に陥る実態、医療制度改革が製薬会社や保険会社のロビー活動により骨抜きにされていく実態、刑務所が低賃金労働者を供給する民間企業の一部となっている実態などをインタビューを中心に明らかにしている。
    ニューヨーク州では、スリーストライク法により、3度目の有罪判決を受けると、犯罪の内容にかかわりなく、終身刑を受けることになっているという。一方、刑務所は運営の民営化が進んでおり、時給40セントで労働させられ、部屋代と医療費で毎日2ドル引かれるなどしており、最終的に刑務所を出るときには借金を抱えることとなり、社会復帰がさらに難しくなる。アメリカ国内の大手通信会社の一つ、エクセル・コミュニケーション社は電話番号案内のオペレーターを刑務所に委託している。塀の外なら最低でも月900ドルの給与と社会保険等の経費が掛かるところ、囚人を雇えば、月180ドルで福利厚生費は一切かからない。こうしたことから、以前は第三国に委託していた業務も最近では刑務所に委託する企業が増えているという。今では刑務所REITが安定的な収益が期待できると人気になっているほどだ。
    アメリカ社会は一体どうなってしまったのだろうか。オバマ大統領も結局アメリカ社会を変えることはできなかった。そして、今度はトランプ氏のような過激な発言で民衆を煽る人が大統領候補として人気を博している。アメリカ社会の分断の状況は深刻だ。

  • ホレース・マン
    教育は人間が考え出したどんな知恵よりも人々の平等を実現する、社会の偉大な平等化装置だ

  • 貧困大国シリーズ第2段
    今作でも驚かされっぱなし。囚人ビジネスなるものがあるなんて。メディアは市民の不安を煽り、政府はホームレスを徹底的に取締り、刑務所は増加する。囚人は超低賃金で働かされ、福利厚生費はなし。
    こんなことが行われているなんて信じられない。でも、知ることができてよかった。

  • だいたい前と一緒。この著者ずっとこんな暗い記事ばかり追って暗くならないのだろうか?

  • かなり衝撃的な内容です、
    資本主義の行き着くところはこうなりますよ・・・的に、病んだアメリカの貧困事情が赤裸々に語られています。

    教育、医療、公共福祉、国防等は「官から民へ」シフトさせてはいけないと言うことがよくわかります。

    しかしアメリカの負の部分だけを拡大したルポではないかと言う気もしないではないです。
    もともとアメリカは自己責任の国、社会福祉の部分に国家の介入を嫌う国民性があるのではないでしょうか、

    オバマ大統領の医療保険改革に大反対する「ティーパーティー」の政治運動が盛り上がっています。

    日本人からみたらこんな素晴らしい改革になぜ大勢の人が反対するのか理解に苦しむ所ですが、
    やはり根本的に国民性の違いという事も忘れてはならないのではないか、と思いました。

    いろいろと日本の政治の方向についても考えさせられた本です。

    ちなみに堤 未果さんは、薬害エイズ訴訟の元原告として知られる川田龍平さんの奥様です。

  • 前作が良書だったので期待。
    あれ?もう終わったの??という量の内容。
    予想よりページが少なかったのか?
    前作ほどのインパクトは無いが、これらアメリカの現状が、日本の将来の姿かと思うと恐ろしい。

  • NHKスペシャルを見ているかのような文章。
    ・学資ローン
    ・メディケア、メディケード
    ・医療保険
    ・GMの破綻、企業年金
    ・中流階級の崩壊
    ・刑務所の労働市場
    ・贅沢な消費に慣れてしまった米国民

  • ますます 差が開く

著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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