清水次郎長――幕末維新と博徒の世界 (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1229)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312291

作品紹介・あらすじ

「海道一の親分」を謳われた清水次郎長を措いて幕末維新のアウトローを語るに他はない。本書は歴史学の手法を駆使して、血で血を洗う並み居る強敵たちとの死闘を勝ち抜き、時代の風を読んでしぶとく生き残った稀代の博徒の実像に迫る。巷間知られる美談仁侠の虚像からは異質な無頼の武闘派のしたたかな生き様が浮かび上がってくる。

感想・レビュー・書評

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  • 清水の大博徒・清水次郎長の生涯を追った一書。のみならず幕末維新期の政治変動、同時期の他の博徒の動向にも目を配り、より広い視野から清水次郎長の生涯を意味づけようと試みている。維新以後、次郎長が博徒稼業から足を洗って開墾事業に打ち込み、生涯アウトローの世界に戻らなかったことは、知らなかった。

    ただ、維新前は特に史料がなく『東海游侠伝』に依拠している点は、歴史研究としてはどうなんだと思わずにいられない。博徒というだけで、次郎長と関係ない人物の話もところどころ入ってくるのも、読んでいてちょっと集中力を削がれる感じがした。

  • ふむ

  • 講談や浪花節で有名な清水の次郎長の実像が浮かび上がってくる。幕末から明治維新への歴史の転換点で、侠客たちが蠢動した。その代表の一人が次郎長であった。歴史の大きなうねりの中で、博徒たちのレクイエムが聞こえる。

  • 私は、清水出身でありながら清水次郎長のことをほとんど知らないことから、「週間ブックレビュー」で推薦されたこの本を読んだ。子供の頃からなじみの地名がたくさん出てきたが、そのような清水の歴史を知らなかったことを残念に思う。こんど史跡を回ってみたい。
     さて、本書は、清水次郎長と彼にまつわる山岡鉄舟、黒駒勝蔵など、同年代の博徒を中心に様々な人物の歴史が合わせて書かれており、たいへん勉強になった。強いて言えば、もう少し清水次郎長について深く調査することはできなかったのかとやや物足りなさを感じた。

  • 清水次郎長の歴史的な実像を明らかにしている本です。幕末から維新にかけての時代の変動の中で、清水次郎長をはじめとする博徒たちが果たした役割について論じています。

    平岡正明の本で浪曲師・広沢虎造の魅力を教えられ、清水次郎長について知りたいと思って本書を手に取りました。ただ、本書はあくまで歴史的な事実に基づいて、清水次郎長の「実像」を紹介することに終始しており、私が知りたかったような、日本近代におけるメディアの中での、いわば虚像としての「清水次郎長」を知りたいという目的に答えてくれるものではありませんでした。

    とはいえ、幕末・維新の動乱期を稗史の方から眺めるという本書の試みそれ自体も、興味深いものだと思います。

  • 幕末明治を生きた清水次郎長の生涯を、
    その歴史的枠組みや関連する博徒のエピソードを絡めつつ描く書。
    話が次郎長に留まらないためどうしても論旨が多岐にわたり
    固有名詞を把握しきれずついて行けないこともあるが、
    巻末の年表と照らし合わせつつ、維新史の中で
    次郎長がどのように生きたのかを見るのがよいように感じた。

  • 次郎長が岩波新書になるとは思ってもいませんでした。
    静岡市と合併して、清水市がなくなっていくので、記念碑のようなものかもしれません。
    歴史は苦手なので、書かれていることは、なるほどという感じです。

    ps.
    静岡県には、政令指定都市が、静岡市と浜松市。
    浜松は、YAMAHA,SUZUKI、KAWAIなど、音楽とバイクの街として有名。
    テレビの発祥である浜松フォトにクスなど、著名な産業がある。
    それに比べて、静岡and/or清水は、漁業など、影が薄い。
    次郎長が生きていたら、嘆いていたかもしれない。

  • 名前は知っているが、具体的に何をした何者なのかをよく知らなかった清水の次郎長。その生涯がドキュメンタリーっぽく綴られている。清水次郎長とは、清水港の廻船業・山本次郎八の子供の長五郎のこと。幕末から明治の動乱期に、東海道筋をブイブイ云わせた比類なき人物なのは、よくわかったが、博徒、無宿者、侠客といった概念について、漠然としたイメージしか予備知識がないと、読み進めるのに苦労した。行為の善悪を問わず、大きなコトを起こす大きな人物は、天性の才能や気性に加え、運と人脈に恵まれているのは、時代を問わない真理のようだ。数多の歴史譚が入りまみれるこの時代に、表の正史に現れない、もう一つの歴史(稗史というらしい)もまた、大きな変革の波にゆられていたのが生々しく感じられた一冊。

  • 任侠の世界もまた、幕末、明治の激動に翻弄されていたことを知りました。いつの世も「闇の世界」は常に「表の世界」とつながっていること、それなくしてはまた、表の世界も成り立たなかったことを知った。

  • [ 内容 ]
    「海道一の親分」を謳われた清水次郎長を措いて幕末維新のアウトローを語るに他はない。
    本書は歴史学の手法を駆使して、血で血を洗う並み居る強敵たちとの死闘を勝ち抜き、時代の風を読んでしぶとく生き残った稀代の博徒の実像に迫る。
    巷間知られる美談仁侠の虚像からは異質な無頼の武闘派のしたたかな生き様が浮かび上がってくる。

    [ 目次 ]
    第1章 博徒清水次郎長の誕生(清水港の次郎長;三河の次郎長)
    第2章 清水一家の親分次郎長(嘉永游侠列伝;次郎長激動の三年;次郎長一家の形成)
    第3章 清水次郎長と黒駒勝蔵(黒駒勝蔵との対決の構図;黒駒勝蔵との血戦;尊皇倒幕の黒駒勝蔵と左幕の清水次郎長)
    第4章 明治維新の明暗(戊辰戦争と博徒の命運;清水次郎長と黒駒勝蔵の明暗)
    第5章 大侠清水次郎長(維新の揺れ戻し;山岡鉄舟との邂逅と次郎長の「改心」;博徒大刈り込みと次郎長)

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著者プロフィール

1940年静岡県生まれ。国立歴史民俗博物館名誉教授。東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。群馬大学教育学部教授、国立歴史民俗博物館教授、総合研究大学院大学教授を歴任。文学博士。専門は近世教育・社会史、アウトロー研究。著書に、『日本民衆教育史研究』(未来社)、『国定忠治の時代』(ちくま文庫)、『江戸の教育力』(ちくま新書)、『江戸の訴訟』『清水次郎長』『一茶の相続争い』(岩波新書)、『清水次郎長と幕末維新』(岩波書店)、他多数。

「2020年 『江戸のコレラ騒動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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