人物で語る化学入門 (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1237)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312376

作品紹介・あらすじ

世界は何からできているのか?人間の手でまったく新しい物質をつくることはできるのか?化学者たちの奮闘と発見の物語を通じて、化学の考え方が理解できる。革命の断頭台の露と消えたラヴォアジエ、フグ毒を解明した日本の化学者たち、失敗が生んだノーベル賞など、無限に広がる物質世界の探険記。

感想・レビュー・書評

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  • 化学の知識をある程度身につけていないと、科学的現象についてよく理解できないと思う。本書に登場する人物が科学史に果たした功績に関しては、よく理解できた。

    化学の知識を基礎から身につけた後に、もう一度読み返してみたいと思う。

  • 化学に関する知識が乏しい私でさえ、とてもわかりやすく読めました。少なくとも高校の化学の教科書よりわかりやすく、なんといっても、化学と日常の接点をわかりやすく解説し、化学者の貢献や生い立ちと一緒に書かれています。

  • 新書文庫

  • 著者自身があとがきで書かれているように本書を書くのは難しい仕事だったようだ。物理ならばニュートン、アインシュタインをはじめ大スターが多いが(以前に米沢富美子先生が「人物で語る物理入門」を出されている)、化学では一般に名前が知れ渡っているのはキュリー夫人くらいしかいないだろうから。けれども、高校化学でおなじみのドルトン、ラヴォアジェ、アヴォガドロ、メンデレーエフと登場するわけだから十分楽しませていただいた。後半は専門的な反応式や構造式が多く登場するのでついていくのがつらいところもあったけれど、化学者たちがいったいどのような仕事をしてきたのかということがよく分かった。いろいろな結晶、物質の構造を調べるところから、生物にしか作れないと思われていたものを人工的に合成していく過程など、興味深い話が多かった。ノーベル化学賞を受賞した白川英樹さんや田中耕一さんが失敗から得られた発見のエピソードはやはりおもしろい。なお、本書を読んでソルヴェイ会議のソルヴェイさんがどういう人物であったのかを初めて知りました。高校生の頃から読み始めた物理学者の伝記にはよく登場する名前だったのですが、そのいわれを知らなかったのでちょっとうれしい気分です。

  •  しばらく時代小説オンリーだった通勤読書。ちょっと気分を変えて化学史なぞを読んでみた。
     この手の化学史読み物は小さい頃から好きで、いろいろと読んでいる。なので登場人物もエピソードもよく知っていることが多いけれど、何度読んでもおもしろいし、また新たな発見もある。
     今回の発見は、メンデレーエフとルイスが十分資格がありながらノーベル賞を受賞していないこと。本書に取りあげられる化学者はそれぞれ偉大な業績を成し遂げた人たちばかりで、いずれも甲乙つけがたいが、ことこういう受賞となると運不運がつきまとうのは世の常だろう。新しい発見という点では文句なしなのにね。
     それから、そのノーベル賞受賞者のキュリー夫人。科学の成果は全人類が共有すべきであるという信念から、ラジウムに関する特許をとらなかったという。X線の特許をとらなかったレントゲンも然り。すばらしい。時代が違うとはいえ、知的所有権だ財産権だのといって微々たる成果すら特許化して守ろうとする現代の風潮が恥ずかしくなる(税金で運営されている国立大学法人だって例外ではない)。
     トリビアも。クラウンエーテルの発見(発明?)者ペダーセンの母親は日本人だった。へ~。それから、酸素の同位体17Oは放射性同位体である(p92)。おっとっと、これはダウト。まあこれくらいの間違いはご愛嬌ということで。
     化学入門と銘打ってあるので専門外の人向けなのだろう。そのあたりは手慣れた竹内先生なので専門的な話を苦心してわかりやすく書いてはあるが、たぶん化学から遠ざかっている文系の人にはこの程度でもとっつきにくいだろう。でも化学好きの若い人にはぜひ読んでほしいと思う。

  • 化学という広大な世界のすべてについて、その発見者にスポットライトを当てながら解説した本。非常に内容が濃いが、体系的にコンパクトにまとまっているので、通読した後も、必要に応じてハンドブック的に使える。高校の時に勉強した、懐かしい化学用語がワンサカ出てくる。

    化学の通史としては、なんといってもアイザック・アシモフの『化学の歴史』がイチオシである。本書の著者自身が、アシモフの『化学の歴史』の訳者でもある。アシモフの本は半世紀近くも前に書かれたので、人類の火の利用から始まって、原爆が炸裂するところで終わっている。それに対し本書は、もっと新しい様々な話題が盛り込まれている。フラーレン、カーボンナノチューブ、電導性高分子、クラウンエーテルなどの新規化合物が合成されたが、それぞれで1冊の本が書けるほどの深遠さがある。また、これは類書も多いが、ノーベル賞を受賞した日本人の業績についても詳しく説明されている。

    アシモフの本は時系列に沿って書かれていて、全体として一つの物語をなしている。こちらはやや雑然とした印象を与えるのだが、それは、20世紀後半から21世紀にかけての、化学という学問の姿そのものなのかもしれない。また、著者が「あとがき」で述べているように、化学は物理学と違って、アインシュタインやニュートンなどのスーパースターがいない。そのため、化学史は物理学史に比べると地味である。

    一方、化学は物理学とは違って、高校レベルの知識でもかなりのことが理解できる。本書を読めば、化学という学問体系の中での、高校化学の位置づけと、その限界が分かる。だから、本書は受験を控えた高校生にもお薦めである。
    ・水素は、なぜ原子1個では存在せず、2個つながった分子として存在するのか?
    ・ナフタレンをニトロ化すると、なぜ2-ニトロナフタレンでなく1-ニトロナフタレンのみが得られるのか?
    ・吸熱反応であるにもかかわらず、水の蒸発はなぜ自発的に起きるのか?

    このような問題に答えるためには、それぞれ量子力学(ハイトラー=ロンドン理論)、福井謙一によるフロンティア軌道理論、エンタルピーといった道具が必要になってくる。

    ・高橋尚子と白川英樹は遠い親戚同士で、2000年にはマラソンの金メダルとノーベル化学賞をダブル受賞した
    ・ファーブルはもともと化学者で、「アリザニン」という色素の効率的な精製法を得ることに成功した。しかし、ほぼ時を同じくしてアリザニンの人工合成が可能となり、工業的生産が始まったため、ファーブルの方法によるアリザニンの生産計画は頓挫した。失意のファーブルは、化学を断念して昆虫の研究に没頭し、『昆虫記』を世に送り出した

    など、地味なトリビアも満載。

  • 化学だけでなく物質の基礎となる物理学まで,当時のキーパーソンを中心に解説されている.化学がいかに進化してきたかを楽しみながら読め,また,同時に化学の知識も身につくありがたい本.

  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:430.2||T
    資料ID:95100395

  • 入門とあるが,かなり化学の知識がないと読みこなせないだろう.私は化学出身なので,楽しく読めた.

  • 化学(≠科学)史における重大発見とそれを達成した人物に焦点を当てて、化学の基本的な要素を概説した本。ただし、前半はともかく後半が達成できているかと言われると若干微妙なところ。実用的物質の発見史の部分(3~5章が中心)が面白い。著者があとがきにも書いているが、物理学者と違い化学者が人物として語られることが少なかったのも、この本の存在感を増している。

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