日本の教育格差 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312581

作品紹介・あらすじ

所得格差が広がるなか、教育の機会が不平等化している。高学歴を目指して塾や私立学校が隆盛する一方、経済的理由で学校を中退する者も目立つ。格差問題の第一人者である著者が豊富なデータによって、親の所得の影響、公立・私立の差、学歴と進路の関係など、教育をめぐる格差の実態を検証。教育の役割や意義を問い直し、打開策を探る。

感想・レビュー・書評

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  • SDGs|目標4 質の高い教育をみんなに|

    【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/705879

  • 2010年の民主党政権下に発行された本
    高校の授業料無償化や最近の幼保無償化など家計負担を軽減することの意味を再確認できた
    小学校の少人数指導や英会話の導入は塾に行けないこどもも質の高い教育を受けられることになる
    これらは一律に行われるので、余裕のある家庭は浮いたお金をさらに教育に充てることができ、格差は縮まらないのかもしれないが全体的な底上げにはなるか
    格差対策としては奨学金が効果的なのだろうが日本では充実していないとのこと。自分もお世話になったのでより多くの学生が受けられるようになってほしい

    賃金で見ると日本は学歴間格差が最も小さい…ことの理由が「大卒皆が昇進するわけではないしそのスピードもそれぞれだから」と考察しているがその根拠は示していない。また、
    1)賃金水準の国際比較
    2)女性活躍の問題
    この2点にほぼ触れていないのは疑問だった
    男女格差についてはあえて避けたのだと思いますが

  • 面白いなと思ったのは市場原理をどこまで義務教育に導入していくかのところ。公共財であるはずの公立中学に完全中高一貫の学校がバシバシできていて、しかも進学実績をあげまくっていることからも、割と国や自治体としては賛成なのかなと思う。これはおそらく公立中と私立中の学力差を縮めるという意図があるんだろうし、学費面で私学を尻込みする貧困家庭にとって、優れた教育機会の門戸は広がったはず。

    その一方で、公立一貫校が人気になればなるほど入学難易度は上がるし入試問題も難しくなるんだから、その分特別な対策が必要になる。つまり予備校に費用がかかる。そして結果的に貧困家庭は締め出されてしまうケースは多々ありそう。それこそここは、最低限度の成績を足切りにしてあとは面接やら作文やら抽選にしたらいいのにね。公共性を担保する意味では、都立中高一貫があえて進学実績を伸ばしまくることに対しては少し懐疑的。インフラとして都内に点在だけしてたらいい。

    あと文系学部が職業教育に繋がりにくい現状云々のくだりは、端的に著者がバカで無知なだけ。商学部、経営学部、経済学部→民間企業の文系総合職って専門教育です。ガチのゼミナールが大学内外でやってること調査してみたらいい。チャラチャラウェーイの大学生が嫌いなだけでは?あとなんで文系学部のが年収高いんだと思う?逆に、医学部除く理系の職業教育って価値がないのでは?


    ・大学の存在理由を再考すべき。学問の延長線上にある企業実務を学生に勝手に期待するのでなく、フォーマットを提供できるビジネススクールを興して職業教育押し出していけば、いい会社に入れたりするんじゃないのか。全寮制の進学校のように。

    ・寺子屋や藩校は授業料がなかった。慶応義塾はその点では学生から授業料を取りはじめたという意味で意義がある。現代私学の走りである。

  • 840円購入2010-09-27

  • 2012/06/19

  • 現代日本の教育格差にまつわるテーマを一通り提示している。著者のリベラル的な思想も、個人的には概ね同じ傾向であり違和感はない。

    しかしながら新書とはいえ考察が浅すぎないか。学生のレポートみたいである。経済学者だから仕方ないかもしれないが実際の労働市場へのインサイトみたいなものも全く感じられない。さらに言うと数字の扱い方にも疑問符がつくような箇所も。

    読みながら思ったこと。。。
    ・私立中学へ子供を通わせようとする傾向は、自己成就予言的な性質がないか。経済力のあって意識の高い家庭が子供を私立に通わせるようになると、ますます公私の差が開く。困ったものだ。
    ・日本では母子家庭での子育てが非常に辛いと。これはまったくその通りだろう。とにかく子持ちの貧困家庭はもっと積極的に公的な支援をして良い。

  • 経済学者が教育について語るとこんな感じになるのだな、と実感する。教育をめぐ格差について、よい意味でも悪い意味でも「広く浅く」論じている。著者のものの見方は、常識的というか通俗的というか、さばけていてこだわりがない。本書の前半では、広く世間で言われていることを、様々なデータや様々な学者の見解を紹介することで跡づけていく。本書の要旨は終章にまとめられているので、まずここから読んで、必要に応じて本書前半の各種データを確認する、という読み方の方が効率的かもしれない。

  • 2010年刊。著者は京都大学大学院経済研究科教授。

     タイトルどおりの書。
     著者の他書や苅谷剛彦氏などの著作を読んでいれば、内容にさほど新奇なものはない。

     論点で言えば、これまで進展してきた高校生への援助枠の拡大に鑑みると、今後これが改悪されない限り、今後は就学前教育と、大学生や専門学校生にどれだけ財政的援助ができるかが肝になるのだろう。
     例えば大学。勿論、給付型奨学金の拡充が当然の前提で、望ましいことは確かだが、それに加えて無利子貸与型も組み合わせると随分違う。

     ところで、かつてこの種の類書は散々読破した。それは、子供達(特に上の子)が幼稚園の頃、ゆとり教育が議論の俎上となった時期に符合するが、本書自体、その時期と比べ大きく議論が進展し、あるいは新たなデータが付加されたという感は生まれなかった。子供の貧困=格差社会の亢進という問題の根深さと解決の道筋がついていないことが、心に引っかかった感じである。

  • 生徒間の学力の差はDNAや親が教育熱心かそうでないかの家庭環境によると思っていた。本著は教育学の観点からだけでなく経済学の視点からも見ており①家庭の所得格差が生徒の学力に影響を与えている。例えば塾などの学校外教育を受けられるかどうかが生徒の進学に大きく関わっている。②ヨーロッパでは多くの国で大学の授業料が無償。日本では高等教育は私的財とみなされ、公費負担額が非常に少なく、家計に負担を強いられる。③日本の企業において、学歴間の所得格差はOECD諸国と比べてそれほど大きくなく、現代は有名大学出身者でなくとも昇進に不利というわけではない。というのが興味深かった。
    親の年収が子どもの学力に影響を与え、教育の機会の格差が人生における格差につながるならば、経済的に恵まれない生徒の学習を積極的にサポートしたり、より多くの優秀な生徒に給付型の奨学金を与えたい。そして生徒自身が明確な夢を持てるよう、世の中の職業について十分知る機会が学校と家庭の両方であると良い。

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著者プロフィール

京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授
1943年兵庫県生まれ。
小樽商科大学,大阪大学大学院を経て,ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授を歴任。元日本経済学会会長。
専門は経済学,特に労働経済学。フランス,アメリカ,イギリス,ドイツで研究職・教育職に従事するとともに,日本銀行,経済産業省などで客員研究員を経験。
和文,英文,仏文の著書・論文が多数ある。
〔主要近著〕
『日本の構造:50の統計データで読む国のかたち』(講談社,2021年)
『教育格差の経済学:何が子どもの将来を決めるのか』(NHK出版,2020年)
『“フランスかぶれ”ニッポン』(藤原書店,2019年)
『日本の経済学史』(法律文化社,2019年)
『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年)
『フランス産エリートはなぜ凄いのか』(中央公論新社,2015年)

「2021年 『フランス経済学史教養講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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