- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004312741
作品紹介・あらすじ
八世紀の日本は、国家のすみずみにまで統治を及ぼす大宝律令の施行で幕を開けた。つづく平城遷都、記紀の編纂など、唐を手本にした体制が整えられ、奈良の都に天平文化が花開く。ところがそこに襲う疫病の流行、皇位継承をめぐる争い…。揺れ動く時代を人々はどう生きたのか。天皇・貴族や人民の動向を、豊富な資料を駆使して描く。
感想・レビュー・書評
-
「おわりに」で”日本の歴史の少年時代”とこの時代を評している。その通りで、日本国家の「枠組み」が作られた時代であった。
唐から様々な事を吸収し、日本という国に当てはめていく。則天武后から影響を受けた部分も多々ある。
万葉集に載っている歌を所々で取り上げ、照らし合わせながら、この時代を読み解いていく本書の流れも良い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
奈良時代というと律令を作って聖武がさまよって仏像作って中国かぶれの仲麻呂が出て道教も出てきた、という程度の認識でしたが、中国を中心とした対外関係が重要な因子であったことが判ります。にしても則天武后の影響力が大きいですね。
また班田収授や租庸調でガッチガチというイメージが有りましたが、これも郡司が間に入ることでそれなりに回っていたのは驚きでした。 -
奈良時代は近代国家日本の出発点として評価するか、あるいは中国の影響を強く受けたという点で批判的に見るべきか、人によって評価は分かれる。
続日本紀が歴史学者から高く評価されていたのが面白い。 -
歴史をメタ的に分析するということ、時代を大観するということがよくわかる1冊。「はじめに」と「おわりに」は歴史教育に携わるものは必読。
ただ、自分の能力の無さと歴史学の特質からどうしても中盤部分を「ダラダラと事実を羅列しているだけ」と感じてしまう。 -
奈良の都、平城京の時代は後の社会を形成する上で、その基礎固めを行い、十分に役目を果たした時代。
この時代に付けられた地名は江戸時代まで使われていたのは余程基礎固めがしっかりとしていたことを物語る。
-
<目次>
はじめに
第1章 律令国家の成立
第2章 国家と社会の仕組み
第3章 平城遷都
第4章 聖武天皇と仏教
第5章 古代国家の黄昏
おわりに
<内容>
今まで国内を中心に奈良時代を見てきたが、中国や新羅の動きと連動するようにあるいは模倣するように日本が動いていたことが分かった。その辺を意識して授業を組み立てないといけないかな? -
平城京時代の中央政権の動きや国際関係について、網羅的に書かれています。
平城京は律令国家の成立した時代でもあり、律令国家では官位やそれぞれの官位の所掌事務が定まっていきます。現在のわが国でも、官位は行政機関という形で、また所掌事務も事務分担という形で通用しているし、定期的な人事異動やら、勤務評定やら、歴史の中に親近感を覚えます。 -
飛鳥時代から平城京の時代へ。中国における唐帝国が成立する中、日本の「枠組み」が成立する時代、天平の甍の時代、天皇が三方の奴として仏教に帰依し、貴族・豪族たちもこれにしたがう。本書「おわりに」がこの時代の特徴を綺麗にまとめており、有益。
-
文武天皇の治世から始まる「平城京の時代」を、律令制下における統治機構の整備を中心に、宮中内部の政争や藤原家の権勢、蝦夷や隼人といった国内の「夷」・新羅・渤海といった国外の「蕃」・そして律令制国家の範として目指してきた唐との対内・対外関係とその推移も絡めて、鮮やかに記述する。
土地の調査・把握・整備、租庸調や出挙といった税制、各戸から徴発された兵士による軍団兵士制、そしてこれらのベースとなる国郡里制(地方支配に当たっては、当初は土着の郡司が重要な役割を果たすが、その後は地方派遣の国司が相対的に強まり、中央政権の力が深く浸透していく。)や五畿七道など、「物」と「システム」の両面から、磐石な国家支配が確立していく時代であった。
また、聖武天皇治世下での疫病の流行から、鎮護国家を祈念しての崇仏事業が行われたことはあまりにも有名であるが、実は、聖武天皇の子・阿倍内親王(後の孝謙・称徳天皇)につき、皇位継承に当たっての不安を除くため、中国の女帝・武則天に倣って、菩薩行の実践者としての立場を与えるために、高僧・鑑真を招いたという側面があったと解釈できるらしい。
ここに、日本中枢において、中国史上唯一の女帝がロールモデルとして活用され、仏教が政治とより密接に結びついたという、歴史における画期性を見出せる。
著者の文体(特に文末)にはやや癖があるほか、難解な漢語表現が説明なしに出てくることもあるが、それらを置けば、時代の在り方がよく分かるコンパクトな叙述となっている。 -
仏教美術、記紀の編纂や万葉集の編集など、平城京の時代は日本文化の原像を作った時代だった。「続日本記紀」が最も面白い、という著者の言葉通り、飢饉あり疫病あり反乱ありと波乱万丈の時代でもある。改めて、平城京の時代を見直した。
-
時の権力者が認めていたくかたちで、徐々に歴史が整っていく。しかし、美しい話しばかりではなくて、ときに血なまぐさい争いも。この時代は外交面よりも内政面に重きがある。
このシリーズも4作目だが、読むのに、結構、骨が折れる。人物名と機構がアタマに入りにくいのだ。 -
われわれは、平城遷都で時代を区切っているが、当時の人々は持統天皇までを一区切り(『日本書紀』は持統天皇の治世で終わっている)にしているのであり、時代認識が現代とは異なっていた。そんなあたりまえのことに、改めて気づかされた。
-
「〜だが。」で結ぶ文が多かったのが学術本らしくなくて変に印象に残ってしまった。しかしこのシリーズはどれもよくまとまっていて面白い。制度についての解説にかなり紙幅を割いていて、高校日本史では丸暗記するだけだった言葉たちにも意味が与えられるようでわくわくした。「はじめに」で軽く触れられた受容史も興味深い。
-
文武朝から光仁朝までの奈良時代、つまり平城京に都が置かれていた時代を扱う。
文明国家としての体裁を整えるために、律令を整備し、中央集権体制を作り上げ、国史を編纂し、唐から高僧を招く。一見地味な時代のように見えて、全力で新国家建設にまい進しているダイナミックな時代だと思う。著者のあとがきを借りると、「平城京の時代は、文字を操ることを覚え、自我が育ってきた時期という意味では、むしろ少年時代、と呼んだ方がよいのかもしれない」。
この奈良時代は日本国家の成立する最終段階と考えてもいいかもしれない。その出発は、2~3世紀ごろ、奈良盆地に発生した大王家と古代豪族の連合政権であるヤマト王権だった。その後500年近くかけて、大王家が列島全域を支配下に組み込んでいく。その過程が日本古代史そのものだと思う。その過程で、大王家は天皇家として突出した存在となり、物部、大伴、蘇我、葛城 etcという土着豪族は消え、古代氏族は中世的貴族に変貌する。
本書の最後に、歌人として有名な大伴家持が祖先を誇る歌が紹介されている。大伴氏は大王家に武力で仕えた古代の名族。平安時代に藤原氏との政争に敗れ没落していく。寂しいようでいて、新しい時代を感じざるを得ない。 -
奈良時代には詳しくないのですが、それなりに面白かったです。
-
本書では、平城京の時代を697年の文武天皇即位からとしている。古代日本政府が編纂した六国史の2番目の歴史書である『続日本紀』が、文武天皇の治世から始まっているからである。そもそもは『日本書紀』が、持統天皇までを期しているから、必然的に『続日本紀』は文武天皇即位から始まっている。
8世紀の日本は、大宝律令の制定によって国のすみずみにまで統制するようになり、藤原京から平成遷都、記紀の編纂と、唐を手本とした体制へと移行し、古代国家から律令国家と変貌する時代だった。それは、中央集権による臨戦態勢が、唐や新羅の軍事的脅威に対抗するために必要だったからだ。
律令制の定義として、中央集権的官僚制、戸籍・計帳による個別人身把握、班田収授制、租庸調を中心とする負担体系、良賤の身分制、軍団兵士制を柱とする支配体制とされる。著者は、必ずしもこれらの条件が相伴わなければならないわけではない、としている。
本書は、まず「律令国家の成立」(第一章)の経緯を解説し、大宝令が目指した「国家と社会の仕組み」(第二章)を具体的に紹介し、「平城遷都」(第三章)、疫病の大流行と長屋の王の怨霊からの鎮護国家を願った「聖武天皇と仏教」(第四章)、藤原氏による天皇家への浸透による皇統の変遷、地方の神々を収奪して天皇を唯一の神祇官とする体制を作った記紀の編纂を描く「古代社会の黄昏」(第五章)という構成で、8世紀の日本を幅広く重層的に描き出している。
例えば、奈良の大仏を建立し、仏教に深く帰依した天皇として描かれていた聖武天皇が、意味不明な遷都を繰り返して庶民を苦し埋めた無能な支配者でしかなかったことが浮き彫りにされる。
本書は、天皇家や藤原氏の政権奪取闘争の歴史ではなく、豊富な史料を駆使して、さまざまな視点から「平城京の時代」を描き出している。200ページ足らずの本文に、政治・経済・法律・軍事・外交・宗教・文芸・都市計画など広範にわたって濃密に紹介されている。とてつもない力技というほかはない。 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。
通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号210.35//Sa38 -
奈良時代というのは、(よく考えない私だけかもしれませんが)結構教えやすい時代です。政治は基本的に政権担当者ごとにまとめればいいですし(つまり藤原不比等→長屋王→藤原四子→橘諸兄→藤原仲麻呂→道鏡)、天皇は聖武天皇を中心とすれば良し、藤原四子の連続病死の祟り?や孝謙上皇のスキャンダルなど生徒も興味をもつ話題も多いので、さくさく進みます。しかし、それに甘えて疑問を持っても深く考えず素通りしてしまいます。例えば蓄銭叙位令、お金を流通させるためにこれが果たしてどこまで有効だったのか? もしくは孝謙上皇と淳仁天皇・藤原仲麻呂の権力争い、上皇の力はそんなに強いのかetc・・・。この本を読み、今まで放置してきた疑問がいろいろと氷解していきました。蓄銭叙位はやはり効果がなく1例しかないことから、朝廷は早々にあきらめていたこと、孝謙上皇の件は、現天皇に皇位を授けた側、つまり太上天皇に究極の皇位継承者指名権があったということなど、いろいろと知ることができました。また、なぜ防人が東国出身者だけかという問題で、今まで私は「逃亡防止」からしか説明してませんでしたが、白村江の戦いや水城・朝鮮式山城の建設などで九州北部の人々が疲弊していたこと、またこの地の人々は従来より朝鮮との繋がりが強かったことも理由にあるそうです。言われてみれば、納得のことですね。
大変勉強になりました。 -
「さまざまな事が起こったようであり、またなにごともなかったかのごとくである」という引用があるように、新書版を通しても、特別な盛り上がりもなく・・・・、現代の官僚機構や政治の話を延々と聞かされているようです。記紀が完成されている時期。にもかかわらず、なんて「おもしろくない」時代なんだろう。