王朝文学の楽しみ (岩波新書)

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著者 : 尾崎左永子
  • 岩波書店 (2011年2月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312949

王朝文学の楽しみ (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 朝な日【け】に見べき君としたのまねば思ひ立ちぬる草枕なり
     寵【うつく】

     今どきの学生たちは、何かと忙しい。授業のない日はアルバイトをし、企業のインターンシップにも1年生から参加。公務員講座も2年生の後期から始まる。
    そんな学生たちに、短歌の「お題」を問うと、「徹夜明け」という痛々しい語が上位に選ばれた。さっそく、その五文字を取り入れた「折句【おりく】」を作ってもらうと―

     手鏡で罪の重さを焼きつける甘え上手なケーキと私
         鈴木涼太

     五七五七七それぞれの頭語をつなぐと、「てつやあけ」の語が現れる。「罪」というずしりと重い語に、「甘え上手」という愛らしい語を取り合わせ、その配合の妙に、思わず笑みがこぼれてしまう。徹夜明けには、遊び心が格好の処方箋なのだ。

     和歌の時代にも、折句をはじめ、さまざまな遊びが試みられていた。掲出歌は「古今和歌集」のもので、作者は、貴族に仕えた女性。生没年などは不明だが、位の高い人物の家族であったらしい。

     これは離別歌で、歌の前に「常陸【ひたち】へまかりける時に、藤原公利【きみとし】によみてつかはしける」という説明がある。よく読むと、彼の名前が「君とし」と歌われ、「思ひ立ち」に「ひたち」の地名が詠み込まれている。

     尾崎左永子の著書によると、歌意は、朝にも昼にもいつも会って頼みにできるあなたとは思えないので、常陸に旅立つつもりです、というストレートな別れの内容だとか。言葉遊びゆえ、きつい印象は受けず、別れ下手という方はどうぞお手本に。
    (2017年10月22日掲載)

  • 著者:尾崎左永子(おざき さえこ, 1927-)


    【目次】
    序 章 王朝文学の世界へ 001
    第1章 王朝文学、二つの柱 015
    第2章 『古今和歌集』の出現 025
    第3章 日記文学の面白さ 051
    1 『土佐日記』――はじめての「かな日記」 052
    2 『蜻蛉日記』――情炎と反抗 061
    3 『和泉式部日記』――新鮮な息づかい 069
    第4章 歌から物語へ 083
    1 詞書・歌語り・物語 084
    2 『伊勢物語』――その裏面 091
    3 『源氏物語』――男の心理、女の心理 111
    第5章 暮らしの背景-王朝文学理解のために 143
    1 住まいと衣装 147
    2 婚姻のかたち 163
    第6章 紫式部と清少納言 171
    1 藤原道長と紫式部・清少納言 172
    2 『枕草子』――思いの赴くままに 181
    第7章 『新古今和歌集』--王朝文学の終焉 209
    あとがき 231



    【目次】
    目次 [i-iii]

    序 章 王朝文学の世界へ 001
    私の場合/「王朝文学」とはなにか/古典の読み方――二つの方法/主語は敬語で見分ける/現代語と意味の異なることば

    第1章 王朝文学、二つの柱 015
    「かな」の発明/万葉仮名から「かな」へ/四季の美意識

    第2章 『古今和歌集』の出現 025
    唐歌から和歌(ヤマトウタ)へ/「『古今集』はくだらぬ集に有之候(コレアリソウロウ)」/和歌と短歌/「古今集」は王朝の「現代詩」/「うたう」ということ/『古今集』再生/『古今集』逍遥/貫之の梅/詠み込み歌の技法

    第3章 日記文学の面白さ 051
    1 『土佐日記』――はじめての「かな日記」 052
    女になりすまして書く/貴族たちの日誌/数詞の成り立ち
    2 『蜻蛉日記』――情炎と反抗 061
    美貌と才気の道綱母/ 嫉妬、屈辱、不満…
    3 『和泉式部日記』――新鮮な息づかい 069
    「夢よりもはかなき世の中を…」/急速に展開する恋/鶏の声に起こされて/『和泉式部集』の魅力/鋭い感性の故に…/

    第4章 歌から物語へ 083
    1 詞書・歌語り・物語 084
    歌が主役の「歌語り」/『竹取物語』『宇津保物語』
    2 『伊勢物語』――その裏面 091
    激しい政争の下で/長かった「禁書」の時代/書写した人の加筆?/透けて見える「雅びごころ」/「狩の使い」の美しさ/単なる好色男?
    3 『源氏物語』――男の心理、女の心理 111
    薫香を衣服に染み込ませて/紙――道長の権威の象徴/神聖視する傾向も/三部構成とその流れ/こまやかな心理描写/作者の才気に凄み/「母恋い」の物語/独立としての「女人出家」/表現力・構成力と音声的律動/知的操作の行き届いた歌

    第5章 暮らしの背景――王朝文学理解のために 143
    ある誤解――はじめに
    1 住まいと衣装 147
    平安京/内裏と「左右」/清涼殿と後宮/貴族の邸宅/屛障具/衣装のいろいろ
    2 婚姻のかたち 163
    「よばい」の慣習/恋文の役割/垣間見/通い婚の時代/「上」――正妻の地位

    第6章 紫式部と清少納言 171
    1 藤原道長と紫式部・清少納言 172
    「道長」という存在/浮かび上がる宮廷内の様子/定子方と彰子方
    2 『枕草子』――思いの赴くままに 181
    「四季」の感覚/「をかし」ばかりで単純?/会話の能力を武器として/函谷関海月の骨/索引の作れない『枕草子』/きびきびとした連想と文章/才をもてはやされて/美男子が好き/気の利かない男

    第7章 『新古今和歌集』――王朝文学の終焉 209
    後鳥羽院の思い入れ/王朝絵巻的展開/二重構造――本歌取り/配列の妙味/霧の美学/夢の忘れがたみ

    あとがき(平成二十三年一月 尾崎左永子) [231-232]

  • S910.23-イワ-R1294 300148947

  • 平安時代の古典文学に触れる本です。


    少し古典の知識があって読むと楽しめるかと思います。
    古典はフィーリングと思っていますが、本文で訳がほしいと感じたところもありました。
    古典の授業を爆睡していたら、本書だけじゃあわかりずらいかもです。

    源氏物語にたくさん触れてくれているのが好みです。和歌を使って末摘花や近江の君の無教養さを表現した紫式部はすごいと思います。
    「暮らしの背景」で平安時代の様子も簡単に捉えることができ、マメ知識が増えました。

  • とても分かりやすい。
    新書や古典にまだ慣れていない人にとっては入門書にもなりうる。
    内容としては、仮名成立~紫式部・清少納言~古今和歌集、そして王朝の生活などについてが著者の見解も含めながら、とても易しく解説されていた。
    けれどある程度古典に触れてきた人にとっては少し物足りない印象もある。
    わたしも実際趣味で1年半ほどちまちまと、そしてここ2ヶ月みっちり古典勉強をしただけの身だが、知っている知識の方が多かった気がした。
    なので新たな発見は勿論あったのだが、もう少し掘り下げてあるものが読みたいという気持ちに駆られた。
    けれど、逆に言うと、新書や古典に関して苦手意識を持っている人、又、古典(平安期)に触れていく際にどこから手をつければいいのか悩んでいる方にとっては、うってつけの本なのかな?とも思った。

  • 作品の紹介が分かりやすく情報量も適当で、古典入門に丁度いい印象。敢えて記さなかったというけどやはり出典が気になる話がちらほら。

  • 王朝文学とは、大陸文化の吸収から日本独自の文化を育みだした頃の文学を筆者は指している。だいたい平安時代のこと。
    当時の政治的状況や文化が王朝文学に溶け込んでいることがよくわかる。そして、雅とは何かというのもなんとなくわかったような。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号910.23/O96

  • 岩波新書:新赤版 910.23/O96
    資料ID 2010105035

  • 古文の読み解き方というか、古典の面白さを紹介した本。途中、「皆ご存知の~」とか「~と言えば~だが」と書かれていたが、全然ご存知なく自分の知識のなさを悔やんだ。が、著者が1927年生まれということを知り、この本で悔やむ人が私以外にも数多くいるのではないかと思った。

    歌はポケベルのようなものだと思った。5・7・5・7・7といった限られた文字の中で今の気持ちを相手に伝え、受け取った方はお返事をする。ポケベルだったら「14106」かしら。そうやって今も昔も愛を育んできたのだと思った。

    尼さんはツルッパゲではなく、今のショートカットくらいにするとか、昔の生活についても触れており、古典を読むときに傍らに置いておく本のひとつになりそうだ。

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『源氏物語』『枕草子』『伊勢物語』など「王朝古典」には誰もが学校の「古文」などで触れるが、その本当の面白さは教科書に採用されぬ部分にある、と著者は断言する。誰もがかかえる愚かしさ、燃えるような嫉妬心、権力者との危うい関わり…。今も変わらぬ人間の本性を映す世界へ、現代的な感覚、小気味よい筆運びで案内する。

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