日本のデザイン――美意識がつくる未来 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313335

感想・レビュー・書評

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  • 日本にある美しいものに、もっと目を向けたい。

  • シンプルという概念がいつ生じたのか。シンプルとエンプティネスの違い。その部分が特に勉強になった。
    長い時間をかけて日本人が生み出し時に壊し受け継いできてくれた美意識や文化というかけがえのない、いくらシンガポールや他の国がお金をかけて買おうとしても決して買えないことを、この時代に生きる私たちも最大限に感じ受け継ぎ時に壊し新しく生み出して繋いでいきたい。お金では買えない生きるうえでの豊かさに気づいていきたいし伝えていきたいなぁ

  • 日本を代表するデザイナーのひとりである原研哉による、岩波書店の月刊誌『図書』における「欲望のエデュケーション」という題名の連載(2009~2011年)をまとめたものである。
    著者は、連載の題名「欲望のエデュケーション」について、「製品や環境は、人々の欲望という「土壌」からの「収穫物」である。よい製品や環境を生み出すにはよく肥えた土壌、すなわち高い欲望の水準を実現しなくてはならない。デザインとは、そのような欲望の根底に影響をあたえるものである・・・よく考えられたデザインに触れることによって覚醒がおこり、欲望に変化が生まれ、結果として消費のかたちや資源利用のかたち、さらには暮らしのかたちが変わっていく。そして豊饒で生きのいい欲望の土壌には、良質な「実」すなわち製品や環境が結実していくのである」という。
    また、本書の題名については、「こうなりたいと意図することがデザインであり、その姿を仮想・構想することがデザインの役割である。潜在する可能性を可視化し、具体的な未来の道筋を照らし出していくこと、あるいは多くの人々と共有できるヴィジョンを明快に描き出すことこそ、デザインの本質なのである」と語る。
    著者は、「ものの作り手にも、生み出されたものを喜ぶ受け手にも共有される感受性があってこそ、ものはその文化の中で育まれ成長する。まさに美意識こそものづくりを継続していくための不断の資源である」とした上で、日本の「美意識」の中心は、「繊細」、「丁寧」、「緻密」、「簡潔」を旨とし、簡素さや空白に価値を見出していく感受性にあると言い切る。
    そして、今後、日本に求められるのは、西欧中心の既成の価値観において「評価される」ことではなく、日本発の価値観において「機能する」ことであり、日本が如何にして世界で「機能する」べきかについて、移動手段、家、観光、素材などについて具体的に語っている。
    著者のいう“デザイン”の意義・価値に大いに共感するとともに、その未来について考えさせてもらった。
    (2014年3月了)

  • デザインは未来を作る、ことを再確認させてくれた。

  • デザイナーの言葉だな、としみじみ思う。どちらかというと無駄のない、洗練された日本語だ。言葉の選び方もハッとするものがある。

    しかし、どこか物足りない。あくや癖がない。幕の内弁当的編集なのだ。「一冊を通して」何かを訴えようという本ではない。どこかお気に入りがあれば、というつくりで、未来への示唆はあちこちにあるが、骨が太くないのである。雑誌の連載をまとめたものとあって、合点がいった。

    気になった示唆のいくつか
    ・住まいやオフィスの環境も、モビリティや通信文化の洗練も、医療や福祉の細やかさも、ホテルやリゾートの快適さも、美意識を資源とすることで、僕らは経済文化の新しいステージに立つことができるはず
    ・精度の高いボールが宇宙の原理を表象するように、優れたデザインは人の行為の普遍性を表象している。
    ・現代の日本人は、小さな美には敏感だが、巨大な醜さに鈍い
    ・抑制、尊厳、そして誇りといったような価値観こそデザインの本質に近い。
    ・ファッションとは衣服や装身具のことではなく、人間の存在感の競いであり交感である
    ・世界から評価されるのではなく、世界で機能するという主体性を持つ。

  • 武蔵野美大教授であり、日本を代表するデザイナー、原研哉さん。
    ”可能性は常に意外性の中にある” の言葉通り、原さんの斬新かつシンプルなアイディアにはほんとに驚かされます。
    常に消費者目線でデザインを追求する原さんの考え方が沢山学べる一冊だと思います。

  • 日本人の良さを取り入れたデザインは、世界に通用するし、もっと日本人らしさを前面に出して、世界に発信しようという強いモチベーションを感じるとても良い本だと思う。

  • 大好きなグラフィックデザイナー原研哉氏の著書。

    【まえがきについて】
    デザインとは欲望のエデュケーション。
    この言葉の背景には、
    製品や環境は人々の欲望という「土壌」からの「収穫物」であり、それを生み出すにはよく肥えた土壌が必要。
    デザインとは欲望の根底に影響を与えるものであるという考え方があるとのこと。

    そして、エデュケーションという言葉をあえて選んだのは、この言葉に、教育するという視点に加えて、潜在するものを開花させるというニュアンスが含まれているからだとも。

    このくだりにより、エデュケーションという表現がデザインにぴったりであることが納得できます。

    「潜在するものを開花させる」
    これがデザイナーの仕事であると思いました。

    形になってない欲望。目に見えていない欲望。
    それらを表現し、日常に送り出すことがデザイナーの使命であると思いました。

    まえがきからはまずそのように感じました。

    ・・・続く。

  • ファッションとは人間の生き方やライフスタイルのこと、という言葉がすっと入ってきた。

  •  本書は「デザイン」という切り口から日本の将来展望や未来構想を語ったものです。著者の原研哉氏は、武蔵野美術大学教授で、「無印良品」のボードメンバーでもあります。
     日本の強みのひとつを「美意識」に見つけ、そういった価値観を具現化するものとして「デザイン」を位置づけたり、「デザイン」とは物の本質を見極めていく技術であると定義づけたりと、本書で語られている著者のメッセージはとても興味深いものでした。
     日本の将来に対するポジティブな著者の姿勢は気持ちのいいものです。

著者プロフィール

グラフィック・デザイナー。1958年岡山市生まれ。武蔵野美術大学教授。日本デザインセンター代表。
文化は本質的にローカルなものととらえつつ、日本を資源に世界の文脈に向き合うデザインを展開している。広告、商品、展覧会、空間など、多様なメディアで活動。
著書は『デザインのデザイン』(岩波書店/サントリー学芸賞受賞)、『白』(中央公論新社)ほか多数。

「2014年 『みつばち鈴木先生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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