カラー版 北斎 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313694

作品紹介・あらすじ

「画狂人」と称した葛飾北斎(一七六〇〜一八四九)は、生涯自らの到達点に満足することなく、画業に専心し、多彩な作品を遺した。初期の役者絵から、美人画、摺物、読本挿絵、絵手本(北斎漫画)、風景画、花鳥画、そして晩年の肉筆画まで、傑作・代表作六九点を収録し、その画業を江戸絵画史の中に位置づけながら、読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 平成という時代が終わろうとする現代。
    人生は100年の時代になったといわれている。

    私の住む東京都大田区でも、100歳以上の方は男性で40人。女性で200人いらっしゃるのだ。


    人生50年の江戸時代。90歳まで現役で絵筆を取り続けた画家がいた。

    葛飾北斎。

    70歳を超えてそれまでの画作を「取るに足らない」とまで言い切り、80歳でさらに画技は伸長し、90歳で奥意を極めるとし、それで終わらずにさらに20年もの時間が必要だと要求していた。

    その気迫。
    その執念。
    その情熱。

    ページをめくるごとに、豪快かつ繊細で膨大な作品群に圧倒される。

    そして痛感する。

    人生はこれからが本番なのだ、と。

    まだまだ始まってすらいないのだ、と。

    果てしない北斎ワールドへ、ようこそ。

    「新・北斎」展(森アーツセンターギャラリー)鑑賞前に、読んでおいてよかった。

    その上で、作品に出会い、北斎と対話し、その魂に圧倒されてきたい。

    優れた芸術作品は、時代を越えて、永遠に、雄弁に、語りかけてくる。

  • 浮世絵の中でも名所絵のジャンルを確立した葛飾北斎。
    「富嶽三十六景」は知ってはいるけど、何が凄くて、何枚あるのかも知らなかった。
    90歳という高齢になっても積極的に学び吸収し、自分を「画狂人」というほど絵に生きた北斎。
    色んなジャンルにおいて、日本人は他から学んで吸収して、それを発展させることに優れているんだなと思う。

  • 70年以上にわたるキャリアと変わり続ける作風を誇りなかなか直接的な比較対象を見出しづらい北斎だが、決して孤立峰であったわけではなく、その時々の流行や出版事情の中で多様な作品を生み出していたのがよくわかる。

    わりと普通の役者絵などを描く浮世絵師としてスタートし、肉筆画をやったり挿絵をやったり洋画を模してみたり絵手本を作ったりして、独自の境地を開いたと言えそうな『富嶽三十六景』は70歳も過ぎてから。その後もなお作風を変え続けた。健康な体と、仕事に対する飽くなき意欲ですね。

  • ●北斎が歩んできた浮世絵師としての歴史を概観した新書。

  • 葛飾北斎(1760-1849)の入門書。93回も引っ越しした自称「画狂人」という人物像ではなく画業、その描いた多彩な絵画・浮世絵に焦点を当てた解説。当時の絵画史の中において、何から影響を受け、また何に影響を与えたか。晩年まで画道を追求し続けたその生涯と共に辿っていく。

    ・14-5歳から19歳まで彫師の修業をした。
    ・役者絵の第一人者、勝川春章に入門。春朗という号で役者絵・美人画・浮絵・物語絵・黄表紙の挿絵など多岐に描く。

    ・20代後半、勝川派から離れ(不仲?破門?)、いったん錦絵からも離れる。35歳、二代目俵屋宗理(初代は琳派の作風を江戸に広めた絵師)として、美人画・狂歌絵本の挿絵・摺物を描く。摺物では当時最高の木版技術を使っている。この時中国の南蘋派の画風を取り入れて、人気絵師となっていった。

    ・45歳前後から北斎の号で、浮世絵の世界に戻ってくる。狂歌絵本・摺物に加え、読本の挿絵、錦絵などを描く。曲亭馬琴による読本(黄表紙双紙とは異なり文章主体)はブームとなり、挿絵には人気絵師が採用された。馬琴との二人三脚で、緊張感ある人物の姿態やみなぎる運動エネルギーにあふれた読本挿絵を残している。
    ・同時期に、名所絵の制作数も増え、空間表現力が大きく向上した浮絵を描いている。さらにこの時期、浮絵よりも洋風を前面に押し出した揃い物が集中して制作され、銅版画の細密なハッチングや油絵の表現法を取り入れている。ただ洋風版画の人気は得られなかったようで残存数は多くない。

    ・55歳(1814年)に絵手本『北斎漫画』の刊行が始まる。浮世絵画壇における北斎の地位がきわめて高いものであったことがわかる。名古屋の門人宅滞在中に描いた300図が最初の一編として出版された。人気を博し、北斎没後の明治11年まで15編が出版されている。
    ・『北斎漫画』は絵手本として実用性の高いカット集というだけでなく、風景表現として画面を縦横三等分して構図を示したものなどもある(「三つわりの法」)。そして『北斎漫画』の特徴というべき、滑稽味のある戯画も多数含まれている。見るものを飽きさせないバラエティ豊かな内容が『北斎漫画』の生命線となっていた。

    ・60歳前後から北斎の号をやめ、戴斗・為一という号で、名所一覧のような鳥瞰図や工芸図案を残している。
    ・71歳の頃から『冨嶽三十六景』の刊行が始まり、名所絵の揃物として異例のヒットとなり、当初の36図ではなく46図まで刊行される。その史的意義は、まずベロ藍(ブルシアン・ブルー)の濃淡と、北斎らしい幾何学的な構図により奥行きのある表現を実証したこと。次に名所絵が錦絵の人気分野になったこと、そして次世代の揃物の画帖化につながったことが挙げられる。
    ・その後も大判の風景画や花鳥画を描き、特に水の表現についてはさまざまな手法を用いてきている。老境にありながら、なお新しい領域を打ち立てたエネルギーと画才は、絵師として比類ないものである。

    ・75歳、卍号を用いたころから没年までが北斎の晩年と位置づけられる。出来の悪い孫の素行に悩まされたりもしたが、作画への意欲は衰えることがなかった。ただし錦絵からは手を引いている。その理由の一つとして、名所絵と花鳥画における歌川広重の台頭が考えられる。名所絵の景観のリアリティの追求、「真景」であることが広重の魅力となっていた。北斎の関心は現実の風景を忠実に再現するよりも、ひとつの画面の中で自分の満足できる造形を追究することにあり、幾何学的な構図や斬新な視覚を提示して見る者を感嘆させることにあった。広重が親しみやすい画風で人々をひきつけ始めたのに対し、強い自負を持つ北斎が画風を変えるはずもなく、錦絵への関心を失っていったと考えられる。そして版元である永寿堂西村屋の衰退も、錦絵制作減少の理由となるだろう。

    ・そしてそれ以上に老境を迎えて、北斎自身の絵師としてのスタンスの変化があったと思われる。75歳は到達点ではなく単なる通過点であり、80歳でも画技を伸ばし、90歳で奥意を極めると『富嶽百景』の初版で自ら記している。
    ・晩年の特筆すべき絵本・絵手本は『富嶽百景』である。『三十六景』の補完ではなく、風景だけではなく人物・風俗など、富士にかかわる森羅万象を描いている。近景を大きくクローズアップする「近像型構図」を取り入れ、これは広重晩年の『名所江戸百景』に影響を与えている。また一流の彫師を採用し、また摺りの濃淡にこだわるなど、木版画技術の点でも注目される絵本であった。

    ・80歳を越える頃から肉筆画を多作、亡くなる前年の絵手本では油絵や銅版画の技法を詳しく記し、西洋画への強い関心を持っていたことをうかがわせる。
    ・晩年の北斎には娘お栄が生活を共にし、北斎の死を看取った。数え90歳。「天我をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べし」と言い終わって事切れたと『葛飾北斎伝』(飯島虚心)が伝える臨終が本当ならば、最後の最後まで画作に執着した画狂人であったことになる。

  • 新書文庫

  • 北斎の作品を丁寧に解説している好著だ.「冨嶽三十六景」は先日すべて見たので楽しく読めた.別の会合で「北斎漫画」も実際に手にとって拝見したので,本書の解説がよく理解できた.晩年の歌川広重との関係を詳述した第五章「晩年の北斎」が面白かった.90歳まで生きて精力的に創作活動を続けたのは素晴らしい.

  • 資料ID: C0033588
    配架場所: 本館2F新書書架

  • 良いなぁ~墨田区民。。。
    すみだ北斎美術館
    http://hokusai-museum.jp/

    「百日紅」が読みたくなってきた、、、

    岩波書店のPR
    「「画狂人」と称した葛飾北斎(1760-1849)は、生涯自らの到達点に満足することなく、画業に専心し、多彩な作品を遺した。初期の役者絵から、美人画、摺物、読本挿絵、絵手本(北斎漫画)、風景画、花鳥画、そして晩年の肉筆画まで、傑作・代表作を収録し、その画業を江戸絵画史の中に位置づけながら、読みとく。 」

  • 所在:展示架
    資料ID:11200374
    請求記号:721.8||O54||1369

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著者プロフィール

1959年生まれ。国立歴史民俗博物館教授・総合研究大学院大学教授。
専門は日本近世絵画史。
著書に『広重と浮世絵風景画』(東京大学出版会、2007年)、『カラー版 浮世絵』(岩波新書、2008年)、『浮世絵出版論―大量生産・消費される〈美術〉―』(吉川弘文館、2013年)などがある。

「2017年 『鍬形蕙斎画 近世職人尽絵詞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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