- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004313816
作品紹介・あらすじ
奈良・平安の世を襲った大地の動乱。それは、地震活動期にある現在の日本列島を彷彿させる。貞観地震津波、富士山噴火、南海・東海地震、阿蘇山噴火…。相次ぐ自然の災厄に、時の天皇たちは何を見たか。未曽有の危機を、人びとはどう乗り越えようとしたか。地震・噴火と日本人との関わりを考える、歴史学の新しい試み。
感想・レビュー・書評
-
歴史学者による古代の大地震、火山噴火等の災害に関する研究書。東大史料編纂所教授という全くの歴史学者が地震という理工学系の分野を扱った珍しい研究である。自ら専門とする古文書研究から地震に関する宗教的、呪術的、神話的要素を加味し、理工学的分析とは異なる方向からアプローチしているところが興味深い。我が国には7世紀以降、多数の文献が残されており、科学的データは記載されていないものの、それら膨大な国文学史料は地震研究においても大いに役立つことが証明されたと思う。
「日本列島の地震には「旺盛期」がある。(1)7世紀末から9世紀末、(2)16世紀末から18世紀初頭、(3)19世紀半ば以降の3つを指摘できる」viii
「「旺盛期」は必ず「三陸沖に於ける地下大活動」によって代表される」viii
「飛鳥一帯は、地震地帯である」p148
「政治の動きは、非常に強く地震・噴火に左右されている」p168詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なかなか奥深いような煙にまかれたような、つかみ所のない本。
前半は奈良・平安期に起こった地震と、時の朝廷・天皇が取ったその対応について述べられている。当然それは現代のような災害対応中心のものではなく、彼らの世界観・宗教観の強く反映されたもので、その様々な対応の列挙から、日本人が古来から持つ宗教観への考察を深めた後半に突入する。
様々な神々、古墳の形態など、博学な作者の話は縦横無尽に行き来する。日本の神々の多様性・多重性は、災害をキーワードに解きほぐした所で、更に謎を深めているようにも見える。
正直、自分の知識・理解力を超えているようにも思ったが、断片的にはハッとするような文章も多かった。 -
奈良・平安時代に起きた地震や噴火が当時の国家運営にどのような影響を与えたかを記した本です。著者が歴史学の専門家なので、地震や噴火についての記載よりも記紀等の歴史書等の解説の方が充実している印象を持ちました。文理融合が見事にハマる分野ですので、地震学や火山学の専門家から見た歴史上の自然災害についても読みたいと思いました。どのように防災するのか、などを考える上でも歴史に学ぶことは重要だと思います。
-
新書文庫
-
3.11の「一千年前の」大地震と大津波そして、ほかの大地震やそれらによって時の政権が右往左往する様子を知ることができた。
現代だって、政権の腐敗が大地の怒りをかったという思想があれば、さほど傲らずに、数十年後を見据えた政治をしてくれるのではないかしらん?と少し思ってしまった。 -
8-9世紀の日本列島の地震と王権の政治との関係史が主だが、地震学と王権論と神話論の接合が恣意的で、史料解釈や仮説に疑問が少なくない。
-
面白かったです。
-
平安時代に年間二桁を超える地震があり、火山活動も盛んであったこと。これが、日本人の信仰や精神文化に大きな影響を与えたことを初めて知りました。