新・ローマ帝国衰亡史 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314264

感想・レビュー・書評

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  • ローマ帝国が当初、民族の捉え方がフレキシブルで融通性に富み、帝国を発展させる力の一つであったが、東西の分裂、東方民族の侵入への対処に狭小な考え方が入りはじめ、フレキシブルさを失った帝国の未来は暗澹たるものになってしまった。

  • ギボンのローマ帝国衰亡史も読んでいないし、ローマ帝国の歴史に詳しいわけでもないため、消化不良気味。
    ローマ帝国がこんなに広大だったことに驚いた。また、最初は、外れの方は境界が曖昧というかゆるかった、民族という意識がなく、「ローマ人である」という意識で繋がっていた。帝国崩壊の原因はそのような意識でいたはずの「第3のローマ人」達を排外主義により帝国の中心部から排除しようという動きのせい、など。
    現在の日本は大丈夫かな、とつい考えてしまった。
    巻末に簡単な年表がついていて、先に気づいていれば、もう少し頭がついていけてたかもしれない、と思いました

  • 『ローマ帝国衰亡史』といえばギボンのものが本家本元。その向こうを張って21世紀の衰亡史を書こうというもの。歴史学はその同時代の影響を必ず受けるものだと。もっとも本家は文庫本で全10巻。手軽なところが21世紀的という訳ではなかろうが。

    カエサルの時代(前1世紀)、五賢帝時代(2世紀)、軍人皇帝時代(3世紀)からまず概観して、コンスタンティヌス大帝、ウァレンティニアヌス朝、東西ローマ帝国分裂(4世紀)、西ローマ皇帝廃位(5世紀)までを扱う。ローマの歴史に詳しくないので、ざっと掴むのにはありがたい記述の分量。

    ・ローマ帝国の国境は出入りのルーズな「ゾーン」であった。→昔だしそんなものか。一方、ハドリアヌスの長城なんてあったが。

    ・複数の皇帝による分割統治は東西分裂以前、ディオクレティアヌスの治世からあった。→版図が広くなりすぎとはいえ「帝国」のイメージとなんか違う。当時の通信手段は何があったのだろう?駅伝とか狼煙とか。

    ・「ローマ人」の概念は版図拡大とともに広がった。ローマの外にいるローマ市民もローマの特定地区に本籍みたいなものを持っていたが次第に名目化した。生粋のローマ人が「第一のローマ人」、植民市生まれが「第二のローマ人」、蛮族出身が「第三のローマ人」。今のような「民族」概念は持っていなかったとされる。ただ服装をローマ風にすることが要求されたりした。

    ・蛮族出身者にとってローマ軍への入隊が帝国内の社会階層を上がる典型的なルートであった。ほかに官僚への登用なども。「第三のローマ人」の存在は時の皇帝の重用によるものであり、皇帝権力と密接に結びついていた。→100年以上たっても同化しなかったわけだし、蛮族出身のアイデンティティは保たれていたようだ。

    ・ゲルマン民族の大移動が、これまで言われてきたように破壊的なものであったか、それともよりマイルドなものであったかは議論がある。しかし、特定の時期にローマの城砦などが破壊されていることは発掘により明らかになっている。

    ・混乱期は皇帝や一族郎党がよく処刑される。北朝鮮か。

    著者の主張は、ローマ人アイデンティティの崩壊=偏狭な排外主義がローマ帝国衰亡につながったと読める(あまり因果関係を明示的に主張してはいないが)。しかし因果は逆で、帝国の勢力衰退が排外主義台頭につながったと考えるほうが素直では。

  • ・ローマ帝国を実体あるものとしたのは「ローマ人」であるというアイデンティティ。このアイデンティティのもと、外部からの人材を受け入れてきた。しかし、四世紀以降の経過の中で徐々に変質し、内なる他者を排除するようになった。政治もそうした思潮に押し流されて動くことによって、その行動は視野狭窄で世界大国に相応しくないものとなり、結果としてローマ国家は政治・軍隊で敗退するだけでなく、「帝国」としての魅力も威信も失っていった

  • (後で書きます。年表あり)

  • 西ローマの自壊過程が面白い

  • ローマ帝国はなぜ滅びたのか。世界史の教科書的には、分割統治によって弱体化した西ローマ帝国にゲルマン民族が侵入し、暴れまくった結果、なんとなく帝国は消滅したという説明だろう。たぶん。そんなスッキリしない説をはっきりさせようじゃないかと、最新の研究による新発見ネタも盛り込んで著されたのが本書。

    ややこしい人名が乱発する内容なので、ローマ史をそれほど知らない人にとって、とっつきにくい本だ。そんな人はなぜローマは滅んだのか、その一点だけを理解しようという心構えで読むべきだ。個人的には、反キリスト教の懐古主義者、ユリアヌス帝の短い生涯が印象に残った。

    で、ローマ滅亡の要因の一つ、「ゲルマン民族大移動」のこと。この言葉から、武装難民が次から次へローマ領土を荒らしまわり、なんとなく「北斗の拳」の世界をイメージするが、実際はそこまで無法ではなかったそうだ。温厚な民族や数10名の少数民族もいて、平和的にローマに「引越」するものも多く、武力による侵入はほとんどなかったようだ。

    しかし、それはローマにとって、ローマ愛を持たず、帝国の危機にも非協力的な市民が増えることだ。ローマを愛するローマ人がいなくなり、帝国はなんとなく消滅した。・・・読み終えて、どうも腑に落ちない結論。

  • ローマ人の繁栄は異民族を排除するのではなく取り込むことにあり、衰退はその寛容さを無くしたこと。
    国の盛衰を考える上で軸がぶれるといけないのかな?
    日本はギネスで一番長く存在している国だが、日本の軸は何であるのか。
    これを考えさせられた。

  • ローマ帝国の五賢帝以降のキリスト教を取り入れてから滅ぶまでの描いた一冊。

    ローマ帝国の知識がないと難しい箇所も多々あったが、現代にも置き換えることのできる歴史の攻防はとても勉強になった。

  • 斜陽期に入っていても、まだ日は高かった筈のローマが一気に衰亡した原因を、寛容から排他主義への人々の変容に見ています。
    ローマを排他的にした原因をキリスト教とするのではなく、キリスト教もまた変容していったするのが面白かったです。
    排他的になることからの視野狭窄が良い結果を生まないのは、何事にも共通していると思います。
    紙面の関係か全体的に少し物足りない印象でした。

著者プロフィール

京都大学大学院文学研究科教授
1955年 三重県生まれ
1984年 京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学
    京都大学博士(文学)
1996年 京都大学助手、大阪外国語大学助教授、京都大学文学部助教授、教授を経て現職
主な著訳書
『ローマ皇帝とその時代』(創文社)
『ローマ五賢帝』(講談社学術文庫)
『海のかなたのローマ帝国』(岩波書店)
アエリウス・スパルティアヌス他『ローマ皇帝群像1、2』(2は共訳、京都大学学術出版会)
『人文学への接近法──西洋史を学ぶ』(共編、京都大学学術出版会)
『新・ローマ帝国衰亡史』(岩波新書)

「2014年 『ローマ皇帝群像4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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