ボブ・ディラン――ロックの精霊 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314530

作品紹介・あらすじ

ディランの歌は深読みを誘う。聴けば聴くほど憶測をよぶ。意味を問うほど意味が逃げていく。謎多き現代の吟遊詩人。「風に吹かれて」「ライク・ア・ローリング・ストーン」など、数々の名曲で人びとを魅了しながらも、つねに人びとの理解を超えていく。その人生の足跡と作品の軌跡をたどり、幻惑するトリックスターの核心に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 父親が大ファン。帰省時に少しでも話が出来たらと付け焼き刃的な予習をしておく。最大のヒット曲と名高い”Like a Rolling Stone”は何故か年末に聴きたくなる程好きだけど、本書で紹介されるその他楽曲についてはほぼ壊滅状態。
    知らないアーティストや曲名が飛び出すたびに調べて聴いて…の繰り返し。学生時代あれだけ勧められていたのに、流行りのグループにうつつを抜かしていたツケが今回ってきたようだ。

    カテゴリー的には教本なんだろうけど、易しい解説の代わりに筆者のこだわりみたいなのがぎっしり詰め込まれていて、少なくとも入門書ではない模様…おまけに筆者の主観も顕著に現れていたから、こちらも彼視点でBob Dylanを拝むしかなかった。

    「ロックの精霊」の起点がフォークソングだったのは意外だけど、まえがきにもあった通り'60年代にラブソングが台頭する中で人生について歌ってはるから「人生の真実」を如実に表したフォークソングから影響を受けてても何らおかしくはない。そのフォークソングも自分がイメージしていたのと少し違っていたし。
    言われてみれば曲調も、自分が思い描くロックみたいに頭と魂を揺さぶるような勢いが見られない。音よりも歌詞を前面に押し出している、とでも言うのだろうか。

    「そのとき私の心をつかんだものは、この世界を進んで引き受けようとしている彼の態度だったと思う」

    のらりくらりと経歴を詐称しまくっているかと思えば、世間を見る目がやたらと厳しい。精霊の名に相応しいのか掴みどころのない存在だけど、一つ言えるのは曲作りでは生き生きしているということ。誰かのためじゃなく、自分の中の憧れや疑問を歌におこしていると筆者の語りを横目に思った。

    そんな彼が'90年代からオープンになり出して、「ボブ道」の素人からしたらますます訳が分からない笑 “We are the World”への参加や自伝の執筆、しまいにはラジオDJと、転がる石のごとく今まで踏み込まなかったであろう世界を駆け巡る。
    もはや分からない方が良い、分かろうとすればするほど目くらましに遭ってしまうのか。

    ここまで書いてきたけど、彼から生まれた”音楽”も分かったと言うにはまだ早すぎる。何より聴き足りない。

    Bob Dylanの何が父親の心を捉えたのか、まずはそこから聞いてみるか。

  • (2016.12.18読了)(2016.12.11借入)
    副題「ロックの精霊」
    2016年のノーベル文学賞は、ボブ・ディランに与えられました。小説家、詩人、哲学者、といったあたりの人たちが文学賞の受賞対象者と思っていたので、歌手が受賞したということで、ちょっと意表を突かれた感じです。
    歌手とはいっても、作詞・作曲をやっていれば、その歌詞に与えられるということのようなので、ある意味では納得しました。
    ボブ・ディランの名前は知っていてもその歌をその気になって聞いたことはないので、どんな歌をどのように歌っているのか知りません。手っ取り早く、CDでも買って聞いてみればいいのですが、活字人間なので本の方に先に手が出てしまいました。
    シンガーソングライターについて書いてあるなら、歌詞もいくつか紹介されているだろうと、思って読んでみたら音楽活動については詳しく書いてあるけれど、唄っている歌詞の内容については、ほとんど書いてありませんでした。歌詞について知りたければ、
    「ボブ・ディラン全詩集1962-2001」
    という本が出ているので、そちらを見るとよさそうです。
    ボブ・ディランは、歌詞を書いたり、曲を作ったりもするけれど、小説、映画、演劇、絵画、等も活動範囲に入っているマルチタレントの人です。ディスクジョッキーもしているのです。でも、お金を稼げるのは、音楽活動ですね。
    「2012年にはアメリカ国民としては最高位にあたる、大統領自由勲章も受賞した。96年以来、毎年のようにノーベル文学賞の下馬評にボブの名が挙がるが、まだ受賞には至っていない。」(248頁)
    そうだったんですね。
    「ライクアローリングストーン」という曲があります。歌を歌うグループのローリングストーンズのようにという意味なのだとずーっと思っていました。そうではなくて、転がり続ける石のようにだったのですね。

    ボブ・ディラン
    本名、ロバート・アレン・ジママン
    1941年5月24日生まれ アメリカ合衆国ミネソタ州ダルース
    父母ともにユダヤ人、父の父母は、ロシア帝国からの移民
    母の父母は、リトアニアからの移民

    【目次】
    はじめに
    第1章 ソング・トゥ・ウディ
    1 ロバート・アレン・ジママン
    2 ボブ・ディランになる
    3 グリニッジ・ヴィレッジ
    4 ウディに捧げる歌
    第2章 ライク・ア・ローリング・ストーン
    1 自分で歌をつくる
    2 ハモンドとグロスマン
    3 時代は変る
    4 変化の胎動
    5 すべてを故郷へ
    第3章 タングルド・アップ・イン・ブルー
    1 くそでかい音でやろう
    2 イメージ解体
    3 決壊前夜
    4 魂の彷徨
    第4章 ライフ・イズ・ハード
    1 終わりのない旅
    2 新たなステージへ
    3 忘れ去られし時
    終章 トゥゲザー・スルー・ライフ
    1 いつまでも同じだと思うなよ
    2 果てしなきディラン道
    あとがき
    参考資料

    ●古びない歌(78頁)
    武器商人やそれに加担する政治家を強く批判する「戦争の親玉」も、覇権対立と核戦争への重苦しい不安に触発されて書かれた「はげしい雨が降る」も、特定の人物や事件を歌っているのではない。不正を指弾し対象に怒りをぶつけるのではなく、そうした事例で人間に生じる感情の構造、怒りや煩悩のありさまを伝えるために歌がある、と言っているように思える。
    ●歌詞がなければ(117頁)
    「歌詞のほうが音楽より大事か」と問われると、「歌詞がなければ音楽は存在しえない」と答えている。この会話からボブは、詩を書いていると音楽が〝聴こえてきて、メロディが浮かぶ〟のだ、と曲作りの秘密の一端を明かしている。
    ●擬装(233頁)
    ロバート・ジママンはかつて、〝ボブ・ディラン〟という〝現状の自分以外の自分〟になることを強く欲して、ボブ・ディランを誕生させた。ボブは〝擬装〟によって生まれた。それは強い欲望、今とは別の何ものかになることへの〝愛〟が作用している。
    ●ジャズマン(247頁)
    「ボブはある種のジャズマンだ。その瞬間に自分が感じたことを表現するのが好きなのだ。」
    ボブは自分が伝説化することを拒みつづける。
    (2016年12月22日・記)

    (「BOOK」データベースより)amazon
    ディランの歌は深読みを誘う。聴けば聴くほど憶測をよぶ。意味を問うほど意味が逃げていく。謎多き現代の吟遊詩人。「風に吹かれて」「ライク・ア・ローリング・ストーン」など、数々の名曲で人びとを魅了しながらも、つねに人びとの理解を超えていく。その人生の足跡と作品の軌跡をたどり、幻惑するトリックスターの核心に迫る。

  • 謎の部分が多かったボブ・ディランの活動も、自伝、評伝、ガールフレンドの回想録などの出版物やスコセッシ監督のドキュメンタリー映像、ブートレックシリーズとして発表されてきた未発表音源など、近年上梓された資料により、かなり見通しが良くなった。これらを上手に整理してまとめた評伝で、先行する類書では60年代の活動に記述が偏重しがちだが、本書は、重要な出来事を漏らさず、更に各年代均等に記述されており好ましい。岩波赤版ということもあり、決定版を目指したものと思われるが、ほぼ狙い通りの内容になっているように感じた。

  • 独特の切り口で刺激的な音楽観を提示し続ける著者のボブ・ディラン評伝。期待通り面白かった。
     ボブ・ディランは一つの像にイメージが固定されることを長年嫌い抗い続けてきた人物で、音楽・歌詞も(歌声すら)変化に富んでいて批評家泣かせの存在だと思うが、その経歴をロック音楽そのものとなり曲を作り続ける決意に至るという軌跡ととらえることによって唯一無二の音楽家であることを描いたのが本書で、新書という限られた分量の中ディランの音楽を楽しむ沢山の手掛かりを与えてくれるものとなったのが何よりも成功の要因であろう。
     細部で面白かったのはフォーク音楽というのがアメリカ各地の伝承歌を収集する学術的な側面があったこと(そのシリアスさ故に、電気化したボブ・ディランへの反発が大きいものとなる)、初期のディランがニューヨークを中心に音楽を吸収していながら放浪の歌手である様なふりをしたこと、若い頃は嘘が多いため恋人にもやめるように懇願された様な人物であったことなど。しかしそうした嘘も音楽をイメージに固定されずに表現したいという側面が常にあるのだとも理解されるのだが。日本でのディラン受容状況の話も面白く、ディランと言えばエレキギターを弾いてフォークのファンに大ブーイングを浴びたエピソードが有名だが、実は日本では紹介の遅れから(当時としては珍しくは無いだろう)フォークとエレキ化ディランの楽曲が同時に入ってきたためにそうした変化に対する反発はあまり無かったそうだ。
     それにしてもディランの長い山あり谷ありのキャリアは凄く、あらゆる時代に様々な人物から音楽や表現について吸収し続ける情熱がひしひしと伝わってくる。もちろん60年代後半のロック史上に残る伝説的な人物同士の交流の濃密さには改めて驚かされるが。
     個人的には「Love and Theft」がミンストレル・ショーに関する本から取ったタイトルだということも興味深かった。ミンストレル・ショーは黒人を白人が演じるという現代からみると差別的な内容でありながら虚実ないまぜのアメリカエンターテンイメントの起源の一つでもあり、実像を絞らせないディランと相通ずるものを感じさせ、彼もそれを意識をしていることがうかがえる。
     他、個人的には今一つイメージのはっきりしない存在だったグレイトフルデッドがバンド運営の面などで先駆的な存在であり、評価される理由も本書で知ることが出来た。どうしても前半のキャリアの歴史的重要性が大きいので、後半駆け足になる点は否めないし、元々はぐらかしの天才であるディランを一冊で表現することなどは不能であろう。そんな中、ディランを楽しむ様々なヒントを断片的にではなく一つの道筋の中で提示した本書は大変意義深いものだと思う。

  • デビューから今日に至るまでの40年を越える長いキャリアを簡潔にまとめられてているため、ボブ・ディランの変遷を楽しく読み通すことができた。2018年フジロックの公演が楽しみだ。

  • ボブ・ディランの生涯と作品について語ったコンパクトな評伝です。

    いまやノーベル文学賞受賞者となり、ますます多くの賛否の声に取り巻かれることになったボブ・ディランの、若いころからの「トリック・スター」ぶりについて、手っ取り早くしることができます。

    ボブ・ディランのファンだという読者にはもの足りなさを感じさせるのかもしれませんが、個人的には興味深く読みました。ただ、フォークやロック、さらには時代背景のなかでのボブ・ディランの位置づけについて、立ち入った考察をおこなってほしかったという気がします。

  • ノーベル賞取ったので読んだ
    文学賞の下馬評に毎年のようにあがっていたのは知らなかった(248ページ)
    とにかく大量の曲を作っており、様々な歌手と曲を共作していることには驚かされる。
    どういう頭をしてるのだろうか。
    徹底的に自分をつかませないその姿勢にすごく憧れる
    洋楽には疎いので出てくる人の大部分は分からなかったが、ボブディランの独特な生き様を知るには問題ない

  • 60年代英米の世俗やロック音楽事情に疎い方では、難しいかもしれません。とはいえ、ディランの全キャリアをここまで縮められるとは思わんかった。湯浅さんはこういう職人的なこともできるのか、と一瞬思いましたが、思い出してみると著者はレコ評においてもスッキリした文体だという気がしてきました。そこに加味されるスパイスの印象が強いですから。本書におけるスパイス「風に吹かれて」についてのシンプルな解釈の一文、同感であるとともに感動しました。

  • 目新しさはない。が、「テンペスト」まで整理されているのはありがたい。年齢的にディランとは無縁ではないが、聴いていないアルバムの情報を得るのには役に立った。今後の参考にさせてもらう。個人的に、アルバムに関してはここ十数年のディランの方がむしろいいと思っている。「オー・マーシー」以降はすべて購入済みと思っていたが、ブートレッグ以外にも買い漏れがあったことに気づかせてもらった。

  • ボブ・ディラン初心者でもよくわかる入門書です。時代背景とその時代のディランの心情が、どのようにアルバムに反映されているかが分かりやすく解説されています。この本と歌詞カードを読みながらアルバムを聴くとさらに楽しめます。

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