言葉と歩く日記 (岩波新書)

  • 302人登録
  • 4.15評価
    • (24)
    • (22)
    • (11)
    • (2)
    • (0)
  • 34レビュー
著者 : 多和田葉子
  • 岩波書店 (2013年12月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314653

言葉と歩く日記 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 22年前(執筆当時)からドイツに住み、日本語とドイツ語でそれぞれ小説を書き、その双方で(それ以外の国でも)評価の高い著者の「ことば」に関する随想。エッセイと呼ぶには(この語の本来の意味はそうではないのだろうが、日本語で言うエッセイには軽すぎるような響きがあるので)、ずっと思索的な内容を持っている。それには、あるいはドイツ語の持つ構造も関係があるのかもしれない。しかも、ここには日本とドイツだけではなく、言語をめぐる著者の様々な体験が注意深く、著者のことばに置き換えられて語られる。言葉の熟成を思わせる如くに。
     なお、未見の映画だが、本書に2回『ハンナ・アーレント』のことが出てくる。ナチスの高官だったルドルフ・ヘスは、けっしてカリスマ軍人だったのではなく、ごく普通の、しいて言えば任務に忠実な人に過ぎなかったらしい。自分の言葉で思考しないことの恐ろしさが語られる。

  • 「雪の練習生」という日本語で書いた自著をドイツ語に翻訳するまでの間に、言葉について起こったことや考えたことを中心として綴られている日記。
    多和田さんの小説はいくつか読んだけれど、なんてすごい言葉を持っている人なんだと、どの作品を読んでも思う。鋭いけれど、刃物の鋭さではなく紙の鋭さのような、温かみのある鋭さ。
    いろいろな国に行って朗読イベントや自著の解説をする講習会や討論を行っている(よばれている)んだけど、そのなかでメガポリスを描く文体を模索しなければならないという話題が出てきたというくだり。とある海外の作家がメガポリスの例として東京を上げたことに多和田さんは驚く。あの「トーキョー村」かと。ヨーロッパにお住いの多和田さんにとって、特殊な場所以外では聞こえてくる言葉のほとんどが日本語である東京という都市は「村」であるという感覚だそう。
    東京をメガポリスの例として出したこの方は日本語はあまりできず、東京に行ったときは意味の分からないことだらけで驚いたらしい。
    「あんなに大きな看板を点滅させてどんな商品を売ろうとしているのか」「自動販売機の点滅の意味もわからない」とか。ただその中で世界的な企業のロゴマークだけははっきりとわかる。
    日本語をわからないまま歩いたら、見えてくる東京という街は随分違うものなのではないかというこのエピソードが印象に残った。

  • こーれは、面白かった。考えること=言葉。生活すること=言葉。
    映画「ハンナ・アーレント」を観た日に読んでいたら、「〜ゆうべは友達と近所の映画館で『ハンナ・アーレント』を観た。〜」という文章が出てきてビックリ。なんたる共時性!

  • 日独二カ国語を操るエクソフォニー作家が言葉と戯れる。僅か三ヶ月強ほどの日記なのだが、毎日毎日微細なひっかかりがあれば自身に問いかけ立ち止まる真摯な姿勢に惹かれた。母国語しか知らないに等しい(それすらも覚束無い)私の脳内組織にとっては未知の領域でありながらも大変興味深く、その思考の綾取りに絡められ少しほぐれた。この日記を読んだ上で改めて著者の作品を読み返せばまた違った感触を得られるのではなかろうか。真面目な考察から自由な言葉遊びまで、日本語とドイツ語のくっついたり離れたりの戯れ模様がとても面白かった。

  • 多和田葉子は何しろ、言葉への執着と愛着と自覚が半端ではないので、この日記は「アサガオの観察日記」ならぬ言葉(日本語、ドイツ語)の観察日記となっている。言葉とはよく言ったもので、日本語なら日本語、ドイツ語ならドイツ語という木が枝をのばし、言の葉を繁らすというイメージが、ぴったりだ。
    いや、でも筆者は移動してばかりだから、その言語植物の種を世界中にばら撒いているというイメージも似合う。

  • ベルリン在住の小説家ということだけかと思っていたら、ドイツ語のことが詳しく書いてあるので、ドイツ語の参考書としても使える。

  • とてもおもしろい。

    分量といい、適度なひねり具合といい、言語そのものが主題であることといい、いかにも現代文の入試に使われそうな文章だ……という感想を持って、その了見の狭さに自分で悲しくなった。

    「黙る」に目的語がない。それでいいのかという指摘には膝を打った。

  • 高校の国語の教科書に著者の作品が収録されている。ドイツに関わる人は知っているつもりでいたが、こんな人がいたなんて。しかもこの方、露文卒。言葉に対しての深い考察と愛情。私はこの人の品のある言葉遣いにたちまち虜になってしまった。

    (201506?)

  • 2015/4/11購入

  • ハンナ・アーレントの映画が見たくなってDVDを借りた。

全34件中 1 - 10件を表示

多和田葉子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
朝井 リョウ
有川 浩
ジャレド・ダイア...
ロビン・スローン
三浦 しをん
いとう せいこう
有効な右矢印 無効な右矢印

言葉と歩く日記 (岩波新書)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

言葉と歩く日記 (岩波新書)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

言葉と歩く日記 (岩波新書)の作品紹介

熊の前足と人の手、ドイツ語では表わす単語が違う。では人の言葉で語る熊は、自分の手を何と表すのだろう-。日独二カ国語で書くエクソフォニー作家が「自分の観察日記」をつけた。各地を旅する日常は、まさに言葉と歩く日々。言葉と出逢い遊び、言葉を考え生みだす、そこにふと見える世界とは?作家の思考を「体感」させる一冊。

ツイートする