子どもの貧困II――解決策を考える (岩波新書)

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  • / ISBN・EAN: 9784004314677

感想・レビュー・書評

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  •  5年前に刊行された『子どもの貧困』の続編である。

     この5年間で、日本の「子どもの貧困」をめぐる社会の空気は大きく変わった。5年前にはまだ「日本に子どもの貧困問題なんてあるの?」などと言われ、問題自体が可視化されていなかったのだ。
     
     しかし、リーマンショックの影響もあって困窮者が増えると、子どもの貧困もおのずと深刻化した。また、貧困問題自体が大きな社会問題としてクローズアップされるにつれ、子どもの貧困にも社会の目が向けられるようになってきた。

     昨年6月には「子どもの貧困対策法」が成立したが、これは著者によれば「貧困を研究するわれわれの予想を遙かに超えた急展開」であったという。日本は子どもの貧困対策において先進諸外国に大きく立ち後れている国だったのだが、その後れをいま、急ピッチで取り戻そうとしているのだ。

     本書はそうした5年間の変化を受け、前著の内容を一歩進めたもの。
     前著の終章にも著者なりの貧困対策が書かれてはいたのだが、その対策――すなわち「解決策」の部分をメインにもってきた本なのである。
     
     私も、貧困問題の関連書を読むたび、「問題が深刻なことはわかった。じゃあ具体的にどうすればいいのか?」と著者に問いたい気持ちになることが多かった。解決策に的を絞った本が待望されていたのだ。

     ただし、著者は研究者だから、アジテーターとしての資質が勝った一部の評論家のように、「この人にまかせれば貧困問題は解決できる」と思わせるような単純明快な書き方はしていない。むしろ、著者自身が「あとがき」で言うように、「どのような社会問題にも当てはまる社会政策論の色合いが濃い」本である。また、思いのほか学術的で堅い本でもある。
     したがって、魔法の特効薬のような画期的解決策が書かれた本を期待すると、肩透かしを食うだろう。

     それでも、ヘンに感傷的にならず、冷静な社会政策論として子どもの貧困問題が論じられた一冊として、読み応えがあった。

     とくに印象的だったのは、子どもの貧困対策を「未来への投資」と見なす視点。

    《子どもの貧困に対する政策は、短期的には社会への見返りはないかもしれない。しかし、長期的に見れば、これらの政策は、その恩恵を受けた子どもの所得が上がり、税金や社会保険料を支払い、GDPに貢献するようになるので、ペイするのである。すなわち、子どもの貧困対策は「投資」なのである。子どもが成人するまでに、長くは二◯年かかるので、この「投資」は長期的な観点でみなければならない。しかし、「費用」ではなく「投資」と考えることによって、政策の優先順位も変わってくるであろう。たとえば、貧困の子どもに、ただ単に最低限の「衣食住」だけを提供するプログラムと、その子どもに「衣食住プラス教育」を提供するプログラムがあった場合、たとえ後者のほうが費用が高いとしても、投資のリターンとしては前者よりも後者のほうが優れているのは自明である。》

  • 前著で子どもの貧困の実態を示した著者が、具体的にこの状況を解決していくにはどのような政策が考えられるか、調査や海外での実際の事例などを参考に挙げていっています。限られた財源の中で、数ある政策候補の中からどの政策を取っていけばよいのか、という視点も随所に現れています。
    「第4章 対象者を選定する」では対象者を絞り込むことの利点・欠点や、対象者選定の考え方の様々が示されており、興味深かったです。ここにも書かれているとおり、日本においては対象者を選定しない給付型の社会政策は「バラマキ」と批判されることが多いと思いますが、安易に対象者を線引きすることで本来サポートが必要な層に給付が届かないのは本末転倒だなと思ってしまいます。社会政策の制度設計の難しさを感じられました。

  • 日本の貧困の特徴はワーキングプアが多いこと。これは母子世帯の場合子どもを抱えながらの労働が難しく、非正規就労が多いことが実態としてある。
    貧困層の子供は、学力と健康状態が低い傾向にある。
    また、貧困層は、子どもの自己肯定感や将来への希望を持たない傾向にある。家庭内においてもストレスに溢れ、健全な成長を妨げる要因になる。その結果、貧困の親から生まれる子供も、将来貧困の親になる可能性が高い。

    経済が成長すれば貧困層の所得も増える、という理論は先進国には当てはまらない。スゥェーデンやアイルランドといった高福祉国でも、低所得者の勤労所得自体は上がらず、GDPの拡大により国からの給付金の割合が上がっただけだった。

    【家庭環境を介した経路】
    親のストレス、親と過ごす時間、家庭内文化資本、親の孤立

    逆に、遺伝子的経路は、そこまで重要な要素ではなく、むしろ家庭環境により子供の認知能力、身体能力が制限される可能性のほうが高い。

    貧困には家庭環境や遺伝や地域差、親の遺産など、様々な要因があるが、一番相関関係のある経路は、
    「子ども期の貧困→低学歴→非正規労働→現在の低所得→現在の生活困窮」である。
    要因は一本一本が独立しているのではなく、様々に絡み合って影響している。

    財政には限りがあるため、貧困対策は「社会に対する将来への投資」と読み替え、費用対効果の高い政策から実施していく。
    日本はこの計測がまだ進んでいない。
    そのため、長期的な収益性の観点を持ち、その収益性が測定できる制度設計、モデル事業を取り入れ、対象者を吟味して政策を行うべき。

    貧困対策には、選別主義(生活保護のような、貧困の人だけを対象とする政策、小さな政府)と、普遍主義(義務教育のような、全員対象、大きな政府)のものがある。
    選別主義の欠点は、政治的な批判、偏見の対象、選別にかかる費用、労働インセンティブの低下がある。
    普遍主義の欠点は、財政負担の大きさがある。
    結局、研究の結果、選別か普遍のどちらが優れている、というよりも、再分配のパイの大きさによることが分かった。

    そして、日本では、普遍的な現金給付を「バラマキ」と感じる一方で、貧困層への給付も厳しい目にさらされた。しかし、現物の普遍的支給には批判はなかったため、結局、現金を配るといった札束ポリティクスにアレルギー反応を示しているだけに思える。
    日本においては、現金外支給(教育の機会の拡充など)は、より普遍的に、現金支給に関しては、より選別的に行うのが望ましい。
    また、年齢を絞るのが望ましい。特に、就学前(0~6歳)に対して貧困対策を行うのが、特に効果があるとの研究結果が出ている。乳幼児期に貧困を経験した子供は、その後貧困から抜け出せたとしても、乳幼児期の経験が悪影響を及ぼすという結果がある。

    【現金給付vs現物支給】
    現金給付の効果は、「ある」。
    現金給付の利点は、効果が確実であること。現物支給は何をどのように給付するかによって大きく効果が異なるため、効果にばらつきがある。
    現物支給であっても、教育プログラムへの投資といったものであれば、将来はかけた金の何倍ものリターンが得られることがある。一方、無駄になる恐れもある。現金は安全資産、モノは危険資産。
    現金はかゆいところに手が届き、汎用性に富む一方、市場にそぐわないサービス(保育、教育)には効果が表れにくい。

    日本では、富裕層→貧困層への所得再分配前と、所得再分配後の、貧困率の改善が低い。昔は再分配前のほうが所得が多いという逆転現象が起こっていた。
    結論としては、現金給付は、児童手当や児童扶養手当など、特に未就学児、小さい子供のいる家庭への手当てを厚くするべきである。

    【現物支給】
    保育所の拡充は圧倒的に効果あり。子供だけではなく、親に働きかけるソーシャルワーカーの配置が◎。また、小中高学童保育の給食実施により、「バランスのある食」の拡充を。
    また、放課後プログラムの実施により放課後格差を縮小する。「親が働いているから預ける」ではなく、より行きたいと思える「居場所」を提供する学童づくりが大切。
    ビッグブラザー・ビッグシスタープログラムにより、ボランティアの大人と子供が一対一の関係になれる活動が、海外で効果を上げている。
    また、親への現物支給として、貧困層妊婦への支援、親の疾患や障害への支援が上げられる。

    【教育】
    家族が負担する教育費の割合が先進国の中でかなり高い。費用の大部分は学校外教育。義務教育の授業料の無償化はもちろん、教科書代、給食費、クラブ活動費など、就学にかかる全般的な費用も援助していくべき。
    費用のほかに、学力格差の縮小も貧困をなくす上では重要。
    少人数学級に編成し直す、適切なカリキュラムによる落ちこぼれをなくす、など
    学校生活への包摂(ひとりひとりが友達や先生から認められ、自分の居場所が学校にあると思える環境)の取り組みが重要。貧困層の子供は、対人関係の苦手意識、自己意識の欠如など、社会に必要なコミュニケーション能力が劣っていることが多いからだ。

    【子供の貧困指標】
    ①相対的貧困率
    ②剥奪指標(毎日3食食べる、定期的なレジャー活動、行事への参加など、生活の質を具体的に測るもの)

    【優先順位】
    ①実験的な枠組みにより効果が測定されている物
    ②長期的な収益性が確保できるもの
    ③とくに厳しい状況におかれている子供を優先するもの

    また、現金給付は必要。家庭の経済状況は子供の生活状態にモロにでる。
    ①子どもの貧困率の逆転現象を解消する。
    ②乳幼児期の子供の経済状況を改善する。

    現物支給は、所得制限方式ではなく、学区ごとの選別や、地域ごと、定時制高校への予算拡充、メンタープログラム、親へのサービスなど、プログラムごとに効果的に支給するのが良い。

  • 前作は子どもの貧困の現状がデータで語られることが中心だったが、今作は子どもの貧困の原因とその解決策を探ることが中心。
    結論として、原因が複合的なので、解決策も多岐に渡り、それら全てを対策するのは時間と人手と、何より予算上難しい。だからこそ、優先度を見極めてやっていかなければならない。
    対策として、政策なのか、対象者の選定方法なのか、現金給与・現物給付なのか、教育なのか就労支援なのか。それぞれにメリットもあれば、不透明な要素もある。またたとえば就労支援といっても色々な方法がある。

    子どもの貧困は、就労の困難さにつながるので、国の税収としてロストが大きく、貧困対策は税収増加に対してコストパフォーマンスが大きいというのが、データとしても実証されており、対策していくことの有効性を語る上でとても分かりやすい。

  • 前作「子どもの貧困―日本の不平等を考える―」に続いて読了。

    社会問題を扱う新書で続き物、というのはあまり多くないですよね。
    問題の所在や構造を明らかにするだけでも新書としては十分な効果だと思いますが、
    著者の阿部さんは解決策についても道筋を示したいという強い思いで、
    ほとんど全編を解決策の考察に費やすこの続編をまとめたそうです。

    1、子どもの貧困の現状
    前作で示した日本における「子どもの貧困」の現状を簡単におさらいしつつ、「貧困を放置することがどれほどの社会的な損失うになるか」という視点で議論を進める。

    その中で特に印象の強い知見。
     ・子ども期における貧困は様々な悪影響を及ぼす
     ・学力面や健康面で、貧困層とそうでない子には統計的に有意な差がある
     ・特に深刻なのは、貧困による家庭内のストレスが身体的・心理的に影響を与えること
     ・そうした影響は大人になっても継続してしまい、貧困の連鎖につながっていく

    こうして発生した貧困に対して、社会は多くの負担をしている。
    つまり、貧困層にいる人たちからの課税収入が少なく、税金も社会保険料も支払えず、場合によっては生活保護を受給する場合もある。また、健康面でのリスクも高く、国や自治体の医療費負担も大きくなる。

    貧困という社会問題に子ども期のうちに手を打つというのは、こうした将来的な社会負担を軽減し、むしろ対象が経済的に自立し税金や社会保険料を支払うことができるようにする、ということである。
    すなわち、「貧困対策は社会的にペイする」のであり、貧困に手を打たないことは「社会的なコストを放置する」ということである。

    これは社会政策論としては、基本的な視点ですが、
    この「社会的コスト」という考え方が理解を得られない場面は非常に多い。

    たぶんそれは「社会的にペイする」ことを明らかに示すのが、難しいから、というか批判しやすい点を含むということが関係しているのでしょう。本書で扱う「子どもの貧困」もそうですが、多くの社会問題は、その問題の構造を完全に解き明かすことがまず難しい。難しいというか社会的な様々な事情が複雑に絡んでおり、厳密には不可能に近い。また、それに加えてペイするまでに時間がかかり、解決策の効果検証が非常に難しいという問題もある。

    問題に関心を持つ人からしてみれば、厳密には分からないにしろ効果が出る可能性があるのであればやってみるべし、ということになるが、
    実際には非常に財政的にも厳しい状態での利益対立に追いやられるとなかなか立場を強く保つことは難しい。

    まぁだからこそ、本書のように海外の事例も含め、使えるデータを集め、
    施策を丁寧に検討する研究者の取り組みには非常に貴重です。


    2、要因は何か
    おそらく本書の中で最も衝撃的な章。

    ここで取り組むのは「なぜ、貧困であることが子どもに悪影響を与えるのか、なぜ「貧困の連鎖」が起こるのか」を考えること。

    これを考えるにあたって、様々な「連鎖の経路」が提示されるのですが、そのあまりの数に茫然とします。
    内容までは紹介できないですが、その数の多さだけでも紹介できればと思うので、経路の切り口だけ取り上げてみよう。
     (1)金銭的経路
      ・教育投資
      ・家計の逼迫
      ・資産
     (2)家庭環境を介した経路
      ・親のストレス
      ・親の病気(精神疾患を含む)
      ・親との時間
      ・文化資本説
      ・育児スキル/しつけスタイル
      ・親の孤立
     (3)遺伝子を介した経路
      ・認知能力は遺伝するのか
      ・その他の遺伝的経路(身体的特徴・性格・発達障害)
     (4)職業を介した経路
      ・職業の伝承
     (5)健康を介した経路
      ・健康
      ・発達障害/知的障害
     (6)意識を介した経路
      ・意欲/自尊心/自己肯定感
      ・福祉文化説
     (7)その他の経路
      ・地域/近隣/学校環境
      ・ロールモデルの欠如
      ・早い離家/帰る家の欠如

    なかには大した効果はなかったり、むしろ偏見の温床になっているようなものあって、この中からどの経路が重要なのかを描き出していくところが本筋なんですが、いやもうこの経路の多さとそこから想像されるストーリーを考えているだけで気が滅入ってくる。なんて世知辛い世の中なんでしょう。

    自分の子どもに対してここをこうしてあげよう、それが子どものためになる、と自分が考えるものもいくつもあるんじゃないかと思う。そうしたものが貧困の解消という意味で子どものためになるものなのか、考えてみるのも良いかもしれないですね。

    また、僕がプロボノとして関わっているのも児童支援のNPOであり、学習支援活動なんかに携わったりもしているんですが、大きな社会問題の改善に向けた力の一つになっているんだなと感じる一方で、氷山の一角すぎるというか問題の複雑さや大きさに無力感を感じたりもして、複雑な気分になります。


    3、政策を選択する&4、対象者を選定する
    3章と4章はセットです。本書のむしろ2章までは前提で、ここからが「解決策を考える」本書の中心的な部分なんですが、思い切ってレビューからははずします笑
    あまり細かく紹介ししすぎてもただの要約になっちゃいますしね。
    ところで、レビューってなんですけね。何をどう書いたらレビュー何だかよく分からずにレビューブログしてます。今度調べてみましょうか。

    さて、一口に政策を選ぶと言ってもその選び方はいろいろです。
    ただ一つこれでばっちり、みたいな政策も、その選び方も存在しないからこそ、私たちが目にする政治はわかりにくく取っ付きにくいのです。

    著者の阿部さんが用いる視点は「政策の効率性」です。
    つまり、どれぐらいの資源の投入に対して、どれくらいの効果が期待できるかという観点。
    この観点は、現実的にも非常に有効で賛同できる部分です。

    対象者の選定については、まず基本的な選別主義と普遍主義の対立の議論から入り、ターゲティングの考え方などを丁寧に紹介します。

    この3、4章の議論の流れは、政治学を学ぶ学生は参考にしたら良いと思うよ。
    非常に丁寧ですっきり頭に入るけど、これを自分で整理してまとめるのは非常に大変です。
    この丁寧な論述に論文執筆の苦しさを思い出す。

    5、現金給付を考える/6、現物(サービス)給付を考える
    5章と6章もセットです。3、4章で紹介した政策オプション選定の考え方をもとに、実際に日本で採るべき具体的な施策について検討していく章となります。

    まず語られるのは「現金給付の大切さと確かな効果」
    日本において現金給付というのは非常に嫌われやすい。生活保護バッシングもまだ根強く残っていたり、いわゆるバラマキであったりととかく現金を給付するということに対しての嫌悪感が強い。
    だが、現金給付は様々な調査で確かに効果が出ているのであり、不必要なバッシングや偏見を取り除いていきたい、という筆者の真摯な姿勢が伺える丁寧な記述でその特徴が説明されます。

    また現物給付については、その選定や効果検証が現金給付よりさらに難しいことに触れつつ、筆者が有望だとするいくつかの政策を紹介しています。

    以下は自分のNPOでの取り組みとも関連して個人的に注目したもの

     ・放課後プログラム…現状の学童保育などはあくまで保育サービスとして設計されており、放課後格差による弊害のうち、「事故や犯罪に巻き込まれる危険」にしか対応できていない。特に学力の低下、体力の低下、音楽等の学校で育まれないスキルの未発達などの問題には対応出来ていない点の考慮が必要。

    ・メンタープログラム…アメリカのビッグブラザー・ビッグシスタープログラムを始め多くのモデル事業で効果があるとされている。注意点としては、長期間の関わりが必要であること。

    ・学習支援…さまざまな取組が存在し効果も報告されているが、効果測定はほとんどなされていない。

    7、教育と就労
    本書で議論の薄かった部分への補足という位置付けですかね。
    本書では子どもの貧困対策として、特に子どもが小さいうちに重点的に支援することを(財政的な問題も踏まえ)打ち出しますが、貧困の連鎖を断ち切るためには当然、教育のルートにしっかりと乗り、就労まで引き継いでいくことが重要ですので、その点で本書の議論を補完するような内容です。

    教育という問題については、ほとんど全員が自分の経験に照らして考えることができ、関心を集めやすく、議論を呼びやすい分野です。
    学校や教育に関わる問題をいくつか挙げてくれと言われれば、たいていの人は苦労せずに何個かは挙げることができるんじゃないかと思います。
    そんな教育という問題について、貧困対策という一つの視点から切り取ってみるとどのように見えるのか。
    こういう風に社会課題を切り取って考えてみるはいろいろ応用が聞くので良い視点になると思います。


    以上。

    日本における貧困問題の現実やその問題点を描き出した前作も非常に貴重な作品でしたが、この続編もすばらしかった。
    ある社会問題に対する施策を検討し、決定、実施するということは実際に考えてみるとものすごく難しい問題であることがよく分かります。前作の問題の捉え方と合わせて、政策論あたりに興味のある政治学を学ぶ学生は手にしてみると良いのではないかと思います。

    子どもの貧困に少しでも興味を持たれた方は、手にとってください。
    その際はぜひ一作目と合わせて読むことをオススメします。

  • 様々なデータを元に子どもの貧困の状況と、それに対する諸施策が述べられており、分かり易い。

  •  子供の貧困の連鎖を断ち切る有効な対策を、費用対効果、限られた予算、国民的合意レベルなどを踏まえ、多面的に模索されている。
     詳細なデータの裏付けや、問題解決を検討するプロセスが論理的で、価値観を超えて多くの人々が納得できる提言になっている点は、さすがだと思った。
     「子どもの貧困対策法」という法律ができるなんて数年前には想像もできなかった。それだけ事態が深刻である一方で、国民的合意が進んだということ。自分自身も何ができるか考えたい。

  • 貧困の子供を救うには、全ての子供を対象にした普遍的な制度の効果が高い、は意外でした。

  • 統計や論文を多用した、研究者らしい一冊。
    説得のためなのか、前半は貧困対策を投資に見立てた経済効果を全面に押し出した論調が続く。
    後半で印象的だったのは、現金給付と現物給付の比較。ここまで詳細に検討されたものは未だ見たことがなかった。

    まずは定時制高校と母子家庭に厚い支援を制度化すべきなんじゃないのかなー。

著者プロフィール

首都大学東京教授

「2017年 『20年後、子どもたちの貧困問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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