黙示録――イメージの源泉 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314721

作品紹介・あらすじ

繰り返される数字の「七」、竜との戦い、輝く聖女と大淫婦-。禍々しくも強烈に惹きつける、謎めいた表象に溢れ返るテクスト「黙示録」。古代から現代に至る各種の芸術作品を参照しながら、歴史の結節点で繰り返し変奏されてきたその"終末"と"再生"イメージの系譜をたどり、この書が人間の想像力に与えてきた影響の本質に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 同著者の中公新書にて出版された他のテーマ
    (『処女懐胎』『マグダラのマリア』『キリストの身体』『アダムとイヴ』『天使とは何か』)に比べ、
    黙示録には馴染みがなく、
    内容の紹介を読み進めるのは難しかった。

    しかし内容の大枠やポイントとなる登場人物(怪物だったりします)が分かってくると、
    後半のイメージに関する章は一気に読むことができた。

    絵画や映画、さらには現代への影響
    (「誰がアンチキリストか」という話がなされることも有)を知り、
    西洋文化への理解の基礎の1つとして抑えるべき内容だと感じた。

  • なかなか黙示録の奥深さが分かって興味深い。
    どの黙示録にも7、666、天地創造、キリスト教の奥深さを実感できる作品。

    カトリック教、プロテスタントそれぞれのネガティブキャンペーンが500年前から展開されていたとは。

  • 断片的にしか知らなかった「黙示録」。
    欧米の宗教や風習、文化、そしてエンターテイメントに至るまで、様々な分野を本質的に理解するためにも、聖書そして「黙示録」について知っておく必要があると改めて思わせる。
    難解ではあるが。

  • 構造
    七によって入れ子状に組み立てられたびっくり箱
    ・小羊が解く七つの封印
    ・七人の天使の七つのラッパ
    ・登場した七人の天使が七つの鉢をひっくり返す

    リアリズム 外部と内部の敵
    二元論的抽象論 善悪、神とサタン

    エリザベス・フィオレンツァのsymmetryという指摘

    44
    パウロ『コリントの信者への手紙1』
    「マラナ・タ」
    祈願の命令法でもあり、完了時制でもある
    「主よ、来てください」「主はここにいる、主はすでに来ている」
    =「いまここ」「いつの日か」「すでにある」「いまだない」
    →いつ復活するかよりもいかに復活するか

    66 シオニズムとパレスチナ問題

    78 黙示録の解釈→変更可能性
    →利用と悪用の現実化
    (Harmagedōnとオウム)

    79 ダミアン・トンプソン

    97 エルピス 希望と恐怖の両義性

    190 caricatureとpropaganda

    『博士の異常な愛情』

    メメント・メイ

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB14859224

  • 宗教
    歴史
    美術

  • 結局「黙示」「黙示録」とは何なのか、わからなかった。

    ユダヤ教とキリスト教で、象徴的表現で、未来の預言特に終末のときを記したものらしいが、
    それがキリスト教やユダヤ教にとってどういう意味があるのか、
    なぜそういう胡散臭い要素が必要なのか。
    仏教の地獄絵図的なものなのか。

    もっと多くの図版を紹介してほしかったし、
    もっと大きな図にしてほしかった。
    解説されていても、図が小さすぎてわからなかった。
    残念。

  • よくわからず挫折。

  • ゲーム・小説・マンガなどで馴染みのある『黙示録』。その実態はあまたのキーワードをメッセージ、そして謎を含んだテキストだった。人間の想像力を刺激してやまない『黙示録』の本質に迫る。中二病なあなたにオススメ!【中央館3F-文庫・新書 080/IW/R1472】

  • 黙示録入門にはいいかもしれない。とっつきやすく(悪く言えば浅く)、さらっと書かれている印象。

  • 7月新着

  • 飛び飛びではあったが読み終えた。間に原始仏教やヒンズー教本を読みながらではあったが(笑)

    このあくまでも聖書の各黙示録がいかに後世の評論や芸術活動に影響を与えてきたかを紹介する内容である。あくなき創造力と死への恐怖を突き破るためには「黙示録」はたしかにとてもいいテキストではあったのであろうが…例え話とその奥にどんな時代背景があったのか事実は知りようも無いのであくまでも「寓話」として「黙示録」は知っておけばいいと思った。

  • 岡田温司『黙示録 イメージの源泉』岩波新書、読了。禍々しいイメージがつきまとう黙示録だが、本来の意味は「秘密のヴェールが剥がれること」。一体、どのような書物なのか。そしてその思想やイメージはどう育まれてきたのか。本書はテクストに忠実に寄り添いな、人間の想像力に与えてきた影響の本質に迫る。

    著者はまず黙示録そのものに焦点を合わせ、その全体像を浮かび上がらせ、新約・旧約に通底する黙示録思想を検討する。その上で、西洋史においていかに解釈されてきたのが俯瞰する。後半部分では、図象から映画まで黙示録の具体的イメージを読み解いていく。

    「手を替え品を替えて繰り出されてくる黙示録や終末論のレトリックに、踊らされる必要は毛頭ないが、だからといって無視することもできない。いたずらに振り回されないためにも、その源泉や変遷を知っておくのも無駄ではないだろう」。

    宗教画から「地獄の黙示録」まで。黙示録の思想は救済と希望と勇気の源泉だが、一方で不寛容と暴力の源でもある。著者はその両存に注目する。日本で黙示録と聞けば「ムー」的オカルト的理解が大勢だからこそ、終末思想を正しく理解することは促す本書を読む意味がある。

    因みに現代の思想家で最も「黙示的」なのは、アガンベンと著者は言う。

     現代の哲学者のなかで、いちばん黙示録的なのは誰かと尋ねられたら、わたしは迷わずジョルジョ・アガンベン(一九四二生)と答えるだろう。このイタリアの哲学者は暴く、生きるに値する生とそうでない生の選択を否応なく迫ってくるような政治外交や医療の現実のなかで、わたしたちはかつてなかったほど「剥き出しの生」の現実にさらされている、と。内戦や宗教的対立によってもたらされるおびただしい数の難民、さらに高度の出生前診断や終末期医療にみるように、生を守るべき政治が、死を招くような政治へと不可避的に転倒してしまう時代を、わたしたちは生きているのだ(『ホモ・サケル』)。こうした状況を踏まえて、アガンベンは近年ますます、「所有」から「使用」へ、「豊かさ」から「貧しさ」への発想の転換を志向するようになっている(『いとも気高き貧困』)。それ自体、フランシスコ修道会的な理想でもある。
     すでに何度も述べたことをくりかえすなら、黙示録の発想にはつねに二面性がある。警告は威嚇へ、激励は煽動へと容易にひっくり返る危険性があるのだ。それゆえ、いたずらに振り回される必要はないが、だからといって、知らないままでいたり、知らない振りをしたりすることはできない。しかも、一九八〇年代からの遺伝子工学や情報科学の著しい発達は、期待と不安、リスクとセキュリティの関係を、さらに複雑なものにしている。というのも、科学技術によるリスクからの解放とセキュリティの担保という謳い文句のもと、さらに想像を絶するような新たなリスクがもたらされるという状況が、いたるところで出現しているからである。いたずらに終末や黙示録を振りかざすのでも、あるいは逆に、黙示録的なメタ物語を拒絶したり無視したりするのでもない、第三の道。それがわたしたちに求められているように思われる。
        --岡田温司『黙示録 イメージの源泉』岩波新書、2014年、135-136頁。

  • 難しかったです。

  • テーマを絞り込んでいる割には、黙示録の説明も行き届いているのがうれしいです。それも全体的な概要から、徐々に焦点を合わせていく方法なので、単なる概説になっていないところがおもしろかったです。
    20世紀末から、終末論がはやっているという状況の中で、黙示録をどう読み解くかは大きな問題であり、正解のない世界です。解釈のレベルの問題になってきます。
    特に、後半の女性(「太陽を身にまとう女」「バビロンの大淫婦」)の対比と、それらをめぐる絵画の解釈は著者ならではと思います。このあたりからぐっとおもしろくなります。
    また、今日的な問題にも言及しています。やはり黙示録について語るとしたら、必須だと思います。
    図版がカラーだったらもっとよかったのに。

  • 「中世の写本と20世紀の怪獣映画におもわぬ形で共通しているイメージの意味」ほー

    岩波書店のPR
    https://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1402/sin_k755.html

  • 時代の通奏低音としての黙示録・・・ということでしょうか。
    中世の絵画も、現代の映画もともに性格的には民衆を鼓舞する・・、警告する類の広告だった・・・ということでしょうか。
    この書籍そのものが繰り返される強迫観念への警告のような感じです。

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著者プロフィール

岡田 温司(おかだ・あつし):1954年広島県生まれ。京都大学大学院博士課程修了。京都大学名誉教授。現在、京都精華大学大学院特任教授。専門は西洋美術史・思想史。著書『モランディとその時代』(人文書院)で吉田秀和賞、『フロイトのイタリア』(平凡社)で読売文学賞を受賞。ほかに、『反戦と西洋美術』(ちくま新書)、『西洋美術とレイシズム』(ちくまプリマー新書)、『最後の審判』『マグダラのマリア』『アダムとイヴ』(中公新書)、『デスマスク』 『黙示録』(岩波新書)など著書多数。

「2024年 『人新世と芸術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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