二〇世紀の歴史 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314998

感想・レビュー・書評

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  • 本書では20世紀を「帝国主義の時代」と位置付けている。
    帝国主義とは、「一つの国家または民族が自国の利益・領土・勢力の拡大を目指して、政治的・経済的・軍事的に他国や他民族を侵略・支配・抑圧し、強大な国家をつくろうとする運動・思想・政策」などと定義づけられている。第二次大戦前の日本は、韓国・台湾・中国、その他のアジアの国々を侵略・支配・抑圧しようとしており、自ら大日本帝国と名乗っていた通り、帝国主義国家であった。
    20世紀が帝国主義の時代であったということであるが、帝国主義の流れ・動きは、実際の暦上の20世紀とは少しずれている。帝国主義的な動きは、まず、ヨーロッパ諸国がアフリカ諸国を分割・支配しようとした時に始まったとされる。フランスがチュニジアを植民地化したのは1881年、イギリスがエジプトを実質支配したのが1882年のことなので、帝国主義の時代は、暦上は、19世紀後半に始まっている。その動きは、アジアにも広がり、イギリスがビルマを植民地化したのが1886年、日本が台湾を植民地化したのが1895年である。
    アフリカ・アジアの国々が植民地化した後は、大国間での領土をめぐる争いが起き始め、それはそのまま戦争に結びつく。第一次世界大戦、第二次世界大戦ともに、帝国間の覇権争いの結果起こったという解釈が成り立つのである。
    第二次大戦後、旧植民地国での独立の動きが起き始める。1945年にはインドネシアが独立宣言を行い、1947年にはインドとパキスタンが分離独立する。1950年代に入ってからは、アフリカ、アルジェリアで独立戦争が起き、また、他のアフリカ諸国でも独立の動きが強まる。共産主義・社会主義諸国も実は、ソ連が帝国的に、東ドイツ、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、等といった国を支配していたという構造であったが、それも、1989年のベルリンの壁崩壊、1991年のソ連解体により、体制が崩壊する。このあたりをもって、帝国主義時代は終焉を迎えたとされており、それは、おおよそ100年強続いた時代だったというのが、本書が示している20世紀の時代の流れである。
    そういう風な見方をすれば、確かに現代史の大きな流れを理解しやすい。

    本書には、その間の出来事についての解説が多く書かれているが、各地の戦争や紛争、あるいは、アウシュビッツでのホロコースト等、世界での帝国主義的活動の結果失われた人命は気が遠くなるほどの規模になる。確かに第二次大戦時代に比べると、そのような活動で人命が犠牲になることは少なくなったが、今でも、ロシアのウクライナ侵攻を典型とした帝国主義的な活動の残渣はあちこちに見受けられる。人間は歴史から学んではいるが、学び方は十分ではないのだ。

  • 20世紀の歴史を帝国主義の視点から語られる論文

    19世紀後半から20世紀にかけ、差別ー被差別、支配-被支配の関係の全世界の広がり、第一次世界大戦,第二次世界大戦、冷戦,脱植民地、帝国主義の解体と、近代史の大きな流れが語られています。
    そして、その時代の定点観測として、アイルランド、南アフリカ、沖縄の状況が語られています。

    学校で習った地域の近代史はまだしも、まったく知らないアフリカ大陸の歴史はちょっと新鮮でした。

    日本のアジアに対する侵略、暴力事件については、ちょっと自分の歴史観とは違いました。
    本書は教科書通りの記載でしたが...

    しかし、この時代の暴力、戦争において、本書で語られる亡くなった方々の人数はすさまじい数値!
    20世紀は暴力と殺戮の時代だったということがわかります。

  • 帝国主義の観点から世界史を眺めるには絶好の本。

  • 歴史系の本って、実は地理的な感覚がとっても大切な気がしています。
    この本について言えば、巨視的な地理は配慮していますが、ミクロな地理は、あまり重視しておらず、少し残念な印象を受けました。

    二十世紀の捉え方として、帝国主義を中心とした捉え方があり、また、帝国主義の捉え方から、長い二十世紀、短い二十世紀という捉え方があることに対しては、なるほど、と思いました。

    実は並行して、『サピエンス全史』を読んでいるのですが、帝国に関する部分は、本書を読むにあたって、非常によい下敷きとなりました。

  •  20世紀を「長い20世紀」として捉え、帝国主義体制が広がった頃1870年代から冷戦が終結した1990年代までを描いた作品。当時の世界がどのような流れであったのか手に取るようにわかる作品

  • 1870年代から1990年代初頭を20世紀として、帝国主義の勃興・終焉を俯瞰している。

    列強の動向が網羅されているので、学校教育で抜け落ちがちな近代についてざっくりと把握するためには良さそう。ただ、植民地側について情緒的な形容詞が使用されていることからも、植民地視点の記述が多い印象を受ける。「植民地近代化論」についても否定的。歴史を客観的に記録することは難しい。

  • 難しすぎず、20世紀の世界の様子をサラッと壮観できてわかりやすかったです。

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB16603301

  • 著者:木畑洋一
    通し番号:新赤版 1499
    刊行日:2014/09/19
    ISBN:9784004314998
    使用:新書 並製 カバー 300ページ
    在庫:僅少

    激動の時代とよばれる二〇世紀.それは差別と被差別,支配と被支配の構造が世界を覆い,暴力と戦争にみちた帝国主義の時代であった.アフリカの分割,植民地の拡大,二度の世界大戦,冷戦の激化,独立抵抗運動の広がり.帝国世界の形成から解体まで,「長い二〇世紀」という視角から,現代につながる歴史の大きな流れを描く.
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b226286.html

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著者プロフィール

成城大学法学部教授、東京大学名誉教授。専門は、国際関係史・イギリス帝国史・国際関係論。東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。
主な著書に『帝国のたそがれ ―― 冷戦下のイギリスとアジア』(東京大学出版会、1996年、大平正芳記念賞受賞)、『イギリス帝国と帝国主義 ―― 比較と関係の視座』(有志舎、2008年)、『二〇世紀の歴史』(岩波書店〈岩波新書〉、2014年)など、翻訳に、カール・ポランニー『経済の文明史』(共訳、筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2003年)など。

「2015年 『破断の時代 ― 20世紀の文化と社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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