女の一生 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315049

感想・レビュー・書評

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  • 女性の人生について、一問一答式で読者からの疑問に答えていく

  • ここのところ精力的に本が出る。ご両親を見送り、更年期を乗り切った伊藤比呂美さんは、ひときわ静かな凄味を増したようだ。

    本書はタイトルからして気合いが入っている。気軽に手に取れる新書版だけど(実際読みやすいんだけど)、私は、うーん、うーんと唸りつつ、立ち止まり立ち止まり読んだ。まだ感想がうまく言葉にならないので、特に長く立ち止まった所を抜き書きしておくことにする。

    -母と娘-
    ・母は娘には教えたいことがいっぱいある。自分の踏んだ轍のいいところは踏んでほしい。良くない轍は踏まないでもらいたい。当然の親心です。しかし同時に、母は母であるというだけで、娘に対して、ふつうの人と人との関係より、ずっと絶対的な、強大な、むこうが否定したくても否定できない立場にいる。

    ・わたしたちが一人一人違う母であるように、娘たちも一人一人違う娘です。どの娘も、どんなかたちであろうとも、一人一人の人生を生き抜こうとしているのであります。
     母としては、一人一人の娘たちが、「あたしはあたしだ」という人生の極意をしっかりつかめるように、見守り、受け入れたい。そのためには、いずれ、かわいがったり期待したり心配したりするだけじゃなくて、突き放す、かかわらない、忘れてみるということも、必要になってきます。

    -父と娘-
    ・あらゆる可能性を与えていただきたい。可能性を前にしたときに、自分が進むかどうかは別にして、女であるからという理由で怖じ気づいたり、ためらったり、あきらめたりすることのないようにしていただきたい。それはもう、ちらりとでも、そんなことのないように。

    ・父親が、女という性を持つ娘を全面的に受け止めているか、家庭の中で女がいかに自由か、身を持って、いな身を挺して、アピールしていただきたい。まず、妻への態度、家事のやり方、テレビの見方、社会で起こる事件についての意見、等々、生活のすべてにそれは出てきます。

    -LGBT-
    ・自分が誰か、何をしたいのか、セクシュアリティも、アイデンティティも、自分の中でも、理解するのに時間がかかります。計算やミステリーなら結論が出ないといけませんけど、なにしろ人生ですから、結論は、いつ出ても、ついに出なくても、OKです。

    -嫁と姑-
    ・結婚の最大の苦労はココです。今まで「あたしはあたし」が人生の命題だった。はじめは他人だった夫も、いつのまにか日々の暮らしの中で慣れて、彼の前で、「あたしはあたしよ」と生きる方法をつかめてきた。ところが、姑をはじめとする夫の家族の前に出てみたら、自分ははじっこのすみっこに追いやられ、「あたしはあたしよ」で生きられないというところなんです。

    ・盆に正月、法事に慶事と顔を合わせ、文句を垂れ流しながらやり過ごしているうちに、自分も姻戚も老いていく。死んでいなくなる人もいる。新しく加わる人もいる。老いて、穏やかになってつきあいやすくなるか、頑なになってつきあいづらくなっているか。いずれにしても、人も、人の関係も、変わっていくはず。時間はかかりますが、その変化が救いです。

    -性教育-
    ・それ(十代のセックス)を頭ごなしに否定してはいけない。否定からは、何も生まれない。しかしまた、私はこうも思います。……親は、親の意見を、子を思う心から生まれてくるさまざまな意見を、言い散らすことをやめてはいけない。言い散らすことで、子どもが反発しても、やめてはいけない。それが親の親らしさなんですから。

    -近所の目-
    ・「人の目を気にしなさい」。これもまた、親の呪いの一部です。いい子になれという呪いの一部で、親の呪いの中ではいちばんたいしたことのないものです。

    ・変人として生きること。これがひけつです。だれもみな、少しずつ、変人になりうる素質を持っています。

  • そうだよね、ねるほどね、とうなづきながら読み進めた一冊。女性ということを意識して避けてしまうような話題も、言葉を選ばず率直に語ってくれている点が良い。誰にも相談できず人生に悶々としてしまった時に読むと、スカッとすること間違いなし。

  • 理想的本箱

  • 女性、男性、それぞれに生きづらさがある。
    人生ある程度大雑把に、適当に生きていくのが程よいのかもしれない。

  • 一貫して「わたしはわたし」というスタンスで悩み相談に答えている。恋愛や母娘の関係がうまくいかないのは、その線引きが揺らぐからなのだろう。さまざまな柵の中で女性の一生はかくも生きづらいものなのか。

  • バッサリと日本刀で青竹を切るような、そんなアドバイスが素晴らしい。

    悩める人が、この本に出会えると良いな

  • 伊藤比呂美さんが、枝元なほみさんと親友だったとはー。お二人の共著も読みたくなりました。子育てだけではなく、老いた親との付き合いかたなどに触れられていたのも良かった。
    巻末の年表も楽しい。影響を受けた先生の話など面白く読めました。

  • 女性のライフステージ毎の悩みに答えていく。印象的だったのは母娘の呪い。呪いを掛け合える関係も幸せだと思う。筆者の母親が死ぬ前に言った「あんたがいて楽しかったよ」。私はどんな言葉で呪いを解き解かれるのだろう。「親というものは、全面的な肯定があるから、親なんであり、だからこそ見えてないこともあるかもしれないが、この問答無用の肯定こそ、子どもが一人世間を渡っていく上で、何より心強い味方になるのではないか」「『あたしはあたし』そして『あたしは強い』で、どうどうとしていられるのが、自分のテリトリー、すなわち家庭」

  • 最後の母親の呪いを解いたことばが胸に刺さりました。
    家族だから許せない事があって、
    家族だから許せる事があるのだと思います。

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著者プロフィール

伊藤比呂美
1955年、東京都生まれ。詩人。78年に現代詩手帖賞を受賞してデビュー。80年代の女性詩人ブームをリードし、『良いおっぱい 悪いおっぱい』にはじまる一連のシリーズで「育児エッセイ」という分野を開拓。「女の生」に寄り添い、独自の文学に昇華する創作姿勢が共感を呼び、人生相談の回答者としても長年の支持を得る。米国・カリフォルニアと熊本を往復しながら活動を続け、介護や老い、死を見つめた『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』(萩原朔太郎賞、紫式部文学賞受賞)『犬心』『閉経記』『父の生きる』、お経の現代語訳に取り組んだ『読み解き「般若心経」』『たどたどしく声に出して読む歎異抄』を刊行。2018年より熊本に拠点を移す。その他の著書に『切腹考』『たそがれてゆく子さん』『道行きや』などがある。

「2022年 『伊藤ふきげん製作所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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