高野山 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315087

感想・レビュー・書評

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  • 本書は高野山大学の名誉教授を務められている松長有慶氏によって書かれた本で、題名の通り高野山の歴史、地理的な内容が新書という限られたページ数の中でたくさん盛り込まれています。非常にわかりやすい文章で書かれているので読みやすいですが、密教や仏教についての多少の知識があるとより理解が深まると思います。その意味では、同氏の書かれた「密教」岩波新書、などは先に読むことをお勧めします。また高野山の寺院についてだけでなく、真言宗を開いた空海についての記述も多く、こちらも例えば「空海入門:弘仁のモダニスト」竹内信夫、ちくま新書、などを事前に読んでおくと、すっと頭に入ってくるのではないでしょうか。
    本書は高野山に観光に行かれる方にとってのガイドブックになりますし、また密教入門書でもあり、空海入門書でもあると思います。全体的に記述内容はそこまで難しすぎず、しかし様々なトピックをうまくカバーしているという印象を受けました。本書を読んで高野山に足を運びたくなりました。

  • 本書の著者は、密教学研究者として大学教員を務め、並行して高野山真言宗の僧侶としての活動もされていた方である。加えて高野山の街の御出身でもあるという。色々な意味で「高野山の人」ということに、否、「高野山の人そのもの!!」と言ってしまって差し支えないかもしれない。そういう方の、朗々とした肉声が聞こえるような、スッキリしていると同時に重厚な感じの読み易い文体で、少し難解であるかもしれない事項も慣れた様子で一般読者向けに説きながら折り重ねられるエッセイが多く収められている。それらのエッセイは一冊全体に巧みに散らされ、何やら「高野山を巡る小百科事典」という内容になっている。
    豊かな内容を「小百科事典」と形容はしてみたが、それは飽くまでも豊かな内容の譬えに過ぎない。百科事典のような何かの説明に終始するという感の文章ではなく、「高野山の人」たる筆者の肉声が感じられるような、情感溢れる魅力的な文章が満載であると思った。
    「開創千二百年を迎える高野山」と注目されたことを背景に上梓された本書であるが、弘法大師こと空海が真言密教の道場を開創したのは816年と伝えられる。そんな頃から、「営々と歴史が…」ということを「少し凄い…」とは思うのだが、「如何様な歴史?」というのはよく判らないかもしれない。本書はそういう疑問への回答ともなっているが、「現在でも営々と続く“高野山”の営みや自然」にも言及され、大変に好い一冊になっていると思った。

著者プロフィール

1929年 和歌山県高野山に生まれる。1951年 高野山大学文学部密教学科卒業。1959年 東北大学大学院文学研究科印度学仏教史学科博士課程修了、文学博士。現 在 高野山大学教授、高野山専修学院長。著 書 『密教の歴史』(平楽寺書店)、『密教―インドから日本への伝承―』(中公文庫)、『理趣経』(同)、『密教』(岩波新書)、『密教・コスモスとマンダラ』(NHKブックス)、『松長有慶著作集』全5巻(法藏館)他多数。訳 書アジット・ムケルジー『タントラ 東洋の知恵』(新潮社)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

「1994年 『密教大系』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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