多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

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著者 : 坂井豊貴
  • 岩波書店 (2015年4月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315414

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)の感想・レビュー・書評

  • 大数の法則を知ると、過半数の賛成では国民の民意とは言えないかも?ダルフールルール、2/3の賛成で民意に近づく?

  • わが国の選挙制度でも、例えば衆議院議員選挙の小選挙区では最も得票のあった候補者が当選するわけですが、本書はこうした多数決制度が本当に妥当なものなのだろうかということを検証しています。そこで、単純多数決ではなく、ボルダとコンドルセという2人のフランス人によって提唱されたルールを検証します。日本国憲法の改正手続は実はそれほどハードルが高くない(から、もっと厳格にするべきだとの筆者の主張)ことまで、目からうろこの連続でした。

  • 多数決、投票に勝ったものがすべてを決められる世の中であるような印象を受けることがある。

    選挙に勝利したから、賛同を得られた。
    選択されたのは我々だ。だから、政策に付託を受けたものだ。

    このような論法に、私は疑問を持っている。
    だからこそ、本書を手に取った。

    まだ、私の理解が及んでいないが内容は詳しい。
    多様な多数決のルールを紐解きながら、民意が反映されやすい方法を探す。

    第4章で現れる、
    「二項独立性と満場一致性を満たす集約ルールは、独裁制のみである。」
    という定理には肝を冷やしたが、冷静になってみると現代はこれに近い気がする。

    問題は、いわゆる市民の感覚と、執行者である行政機関との間に意識の乖離があることではないだろうか。

  • カプリンとネイルバフの64%多数決ルールには納得
    選挙に当選したから、民意を得たことではない。
    それは当選者のおごりに過ぎない。

  • アメリカ大統領選挙も終わったことだし(関係ないけど)読んでみたが、これが面白かった。多数決は民意を適切に反映するツールなのか、代替手段はないのか。

  • こういうのって、もっと敷居を下げて多くの人が斜め読みでも読んでほしいよなぁ。でも、岩波だからこそありがたがる人もいるよなぁ。岩波ブランドの功罪か?

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  • 2016/8/12読了。
    社会的選択理論という学問の、初歩の初歩的入門書といった本。多数決って民主的じゃないな(多数決で勝って鬼の首でも取ったようにドヤ顔するやつっていかがわしいな)と薄々は思ってたけど、それを真正面から扱う学問があるのは心強い。こういう数学と社会学と政治学のハイブリッドのような学際的な分野で、民主主義のシステムや技術が研究されていることは、もっと知られて活用されるべきだと思った。
    でも軽く絶望するのは、投票は「熟議的理性」を行使して行われるというのが大前提であるということ。これが一番高いハードルのような気がする。

  • 星蘭祭のクラスの出し物を何にするか、委員会や部活動の代表者を誰にするか、皆で観に行く映画はどれにするか等々、複数の人がいるグループで、いくつかの選択肢の中からひとつを選ぶ場面は日常にたくさんある。そんな時、どんな方法で決めているかと問えば、多くの人は「多数決」と答えるだろう。日本の国政選挙、地方選挙もひとり一票を投じる「多数決」だ。「多数決」は、いかにも常に多数派の意見を尊重する公平で民主的な方法のように思えるが、本当にそうなのだろうか。
    共和党のジョージ・W・ブッシュと民主党のアル・ゴアが戦った2000年のアメリカ大統領選挙では、優勢だったゴアが、政策が近い市民運動家ラルフ・ネーダーの立候補により票割れを起こし、漁夫の利を得たブッシュが当選した。しかしこれではブッシュの勝利は、多数派の意見が尊重された結果とは言えない。これは「多数決」というシステムに問題があるのだ。著者は、「多数決という意思集約方式は日本を含む多くの国の選挙で使われているが、それは慣習のようなもので、他の方式と比べて優れているから採用されたわけではない。民主制のもとで選挙が果たす重要性を考えれば、多数決を安易に採用するのは、思考停止というより、もはや文化的奇習の一種だ」と言い切る。それでは、多数の意見を尊重する選挙の方法はあるのだろうか。
    集団の意思決定のあり方を理論的に考えるのが、著者が研究する社会的選択理論だ。より正確に民意を反映する方法の研究は200年以上前から行われており、様々な集約ルールが検討されてきた。そのひとつのボルダルールは、自分の意に沿う順に1位に3点、2位に2点、3位に1点という点数を付けて投票し、その合計点で当選を決めるものであり、票割れ問題を解決する。本書では、ボルダルールなどのスコアリングルール、統計的手法を用いるコンドルセ・ヤングの最尤(さいゆう)法、決選投票付き多数決、繰り返し最下位消去ルールなど多くの方法が紹介されている。そしてそれぞれの頑健性と脆弱性について具体例を挙げた説明があり、大変興味深い。どれもある意味では理に適っているように思えるが、同じ投票内容でもどの集約ルールを使うかによって結果が全て異なる例もある。集約ルールによって変わるのでは、選挙結果が民意を反映しているとは言い難い。
    著者は多数決の結果が必ずしも民意を反映するものではないことを示し、様々な集約ルールや社会的メカニズムを考察して、現状の社会制度は大きな問題を抱えるものだと教えている。「社会制度は天や自然から与えられるものではなく、人間が作るものだ」との著者の言葉に納得したら、因習や固定観念に囚われることなく、日本の社会制度についてもどんな問題があるのか、どうすればより良い社会になるのかなどを自分の頭で考えてみて欲しい。18歳から選挙権が与えられることになった現在、皆さんはこの問題に関しては、もう当事者なのだ。

  • 2016年新書大賞2位

    多数決がテーマなのでポピュリズムの内容かと思ったが
    違いました。
    多数決を疑うこと=常識を疑うことである。

    イギリスのEU問題も本当は離脱までは考えていなかったけどなっちゃたみたいな問題なのかもしれない。

    何らかの形で住民投票は安全弁が必要なのかもしれない。

  • 多数決という民意の集約方法の課題や克服法について、議論の歴史的経緯等も含めて平易に示してくれる良書。多数決=民主的と思考停止で考えていた自分にとっては、まさに目から鱗だった。ボルダとコンドルセのくだりは面白い。フランスってすごい。日本国憲法における改憲手続きをもっと厳しくすべきとの指摘も面白かった。

  • 【目次】
    はじめに [i-viii]
    目次 [ix-xii]

    第1章 多数決からの脱却 001
    1 多数決を見つめ直す 002
    絶海の孤島での選挙/多数意見は尊重されるか
    2 ボルダルール 011
    ボルダによる幕開け/なぜボルダ配点が優れているのか/なぜ配点を固定するのか
    3 実用例 019
    中欧スロヴェニアでのボルダルール/南国ナウルでのダウダールール/キリバス大統領候補選挙でのボルダルール
    4 是認投票 026
    マルかバツかの投票

    第2章 代替案を絞り込む 031
    1 コンドルセの挑戦 032
    革命の果てに/ボルダルールへの批判
    2 データの統計的処理 039
    確定不能を解消する/もっとももっともらしい手法
    3 さまざまな集約ルール 047
    あるのは民意か集約ルールか/ペア基準を問い直す/棄権のパラドックス/総合的な評価としてボルダルールはよい

    第3章 正しい判断は可能か 061
    1 真実の判定 062
    陪審定理/正しい判断、結果の正当性
    2 『社会契約論』における投票 072
    社会契約/一般意思/主権の役割/多数決の暴走への歯止め/社会的分断と多数派の暴走/自由と社会契約
    3 代表民主制 088
    直接民主制と代表民主制/オストロゴルスキーのパラドックス

    第4章 可能性の境界へ 095
    1 中位投票者定理 096
    直接制と代表制/単峰性と中位ルール/多数決と中位ルール/単峰性のもとでの「ボルダ・オア・コンドルセ」
    2 アローの不可能性定理 109
    ペア比較の徹底/独裁への帰結/ケネス・アローと村上泰亮の不可能性定理/ギバート・サタスウェイトの不可能性定理
    3 実証政治理論 123
    二大政党の政策競争/熟議と単峰性
    4 最適な改憲ハードルの計算 129
    64%多数決ルールと改憲/現行の改憲条項は弱い

    第5章 民主的ルートの強化 137
    1 立法と執行、主権者と政府 138
    立法としての主権/執行と政府/立法と執行
    2 小平市の都道328号線問題 146
    半世紀眠っていた計画/成立要件の不当性
    3 公共財供給メカニズムの設計 153
    自分たちで決められないのか/メカニズムデザイン/クラークメカニズム/新しい制度へ

    読書案内 [167-169]
    主要参考文献 [170-176]
    おわりに(二〇一五年一月三〇日 自宅書斎にて 坂井豊貴) [177-180]

  • みなさん,集団で物事を決めるとき,どうしますか?多分よくあるのは,満場一致か多数決か,力のある人(ジャイアンとか)の一声かでしょう.ジャイアンに決められるのは嫌だし,満場一致が本当はいいけどそれは現実的じゃないから,多数決におちつく.多数決で決まったものは「民主的に決まった」ものだから従わなくっちゃ.となるわけ.でもね,満場一致とジャイアニズムの間には,もっと色々なルールがあっていいわけです.その色々なルールを科学的に見ていくと,多数決ってのはみんなの意見をうまく反映できない仕組みのようなのです.もっとましなルールがあるのはわかってるのに.でもみんなそれ盲目的にを使っている.
    政治家を叩くのもいいんですが,政治家の行動原理であるところの選挙制度を疑ってみる,ってことを感じさせられる一冊です.
    あと,この手の話は一通り大学で学んできましたが,とてもわかりやすかったし面白かった.大学1年生の自分にぜひ読ませてあげたい一冊でした.

  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:311.7||S
    資料ID:95150891

  • 多数決以外の投票を扱ったテーマは個人的には難しかった。でもボルダルールなどの多数決以外の選択肢もあるということを、まず知れたというのは、ぼくのなかで大きかったような気がする。

  • 多数決の特徴と問題点を明確にしより良い方法を考えようと言う本。

    一口に多数決といってもその方法はいろいろとあり、それぞれの特徴と問題点を考える前半と、意見集約方法としてより良い方法、正しい判断をする考え方を探る後半とに分かれている。

    多数決
    ボルダールール
    スコアリングルール
    自由割り当てルール
    コンドルゼ・ヤングの最尤法
    決選投票付き多数決
    繰り返し最下位消去ルール
    チャレンジ型多数決

    状況次第では同じ集団が同じ基準で投票しても投票方法によって選ばれる人が違い、民意とは投票方法の違いでしか無いのではないかといった問い掛けは重いものだと思う。
    すくなくとも「民意で選ばれた」とえらそぶってる人達の言葉が薄っぺらい理由がはっきりした。
    また、最近騒がれている改憲について三分のニの基準は厳しすぎるといった声があるが、実際の所小選挙区制では(投票に行く)有権者の過半数が賛成すれば改憲できるので軽いのではないかと主張している。

    社会的選択理論とは何か考えるとても良い本。

  • 社会選択理論の入門書.みんなでなにかを決める必要があるときどうすればよいのか?特にいくつかの案のなかで一つ選ばないと行けない場合について考察する.
    このような問題を扱った研究はコンドルセに始まる.コンドルセは,各個人がもつ選好順位から点数をつけるボルタルールを批判し,彼の提案は後にコンドルセ・ヤングの最尤法へと繋がった.本書ではそれ以外の選択ルールも比較して今日あたりまえのように使われる多数決の問題点を浮き彫りにする.
    またルソーの思想についての記述もあり,「主権」とは何かやルソーが代表民主主義を批判してることなど知らんかったことが多く読み応えがあった.
    各案を数値化して直線上に並べることができる場合は中位ルールが機能することやアローの不可能性定理についても興味深かった.また現実問題への応用にも目を向けている.
    最後のほうではマーケットデザインに関して触れている.これは適切な市場をセッティングしてみんなの意見を集約する仕組みのことである.
    最近の新書にしては内容が濃くたいへんお買得である.

  • 国会議員として選挙で当選したことは民意を完全に反映しているのか?
    都道府県や市町村の長として選挙で当選したことは完全に民意を反映しているのか?
    多数決で決まれば、それは完全に民意なのか?

    読んでいるうちに「あれれ?」と思っていたら、なるほど納得。ある意味痛快に読めました。

  • 多数決は、必ずしも民意の反映ではない。小選挙区制の例などは習って知っていたけど、普通の、たとえば3択の多数決とかでも、ほんとに全員の素直な考えを反映してるわけではないんだというのが理論的に説明されていた。100%理解できているかはともかく、陪審制の話とかもとても興味深かったです。

  •  選挙に行くと、候補者が少なく、誰にも入れたくない、いやこいつだけは落としたいなどと思うことが少なからずあり、そうすると得点1票と減点1票をそれぞれ適当な候補に入れさせてくれなどと思う。あるいは持ち点10点を好きに配分させろとか、最高裁判事みたいにすべての候補に○×つけたらいいとか。
     いったい1人1票の多数決がいいって誰が決めたんだ。
     党議拘束がある中で、与党が過半数を占めていたら、国会の議論なんて無駄。法案は多数決で決まるだけ、数の暴力だ。などという議論もある。いや、その国会議員選挙にしてからが、1人1票ではなく格差が生じており、せいぜい4分の1の支持者しかいない自民党がなぜか国会で過半数を占めるという不公正。多数決は民主主義の根幹ではなかったのか?

     なかったのである。こんな方法を無批判に採用しているのはただの蛮習である、ということを教えてくれるのが本書である。
     本書を参考にいやらしい例を作ってみる。ここに3人の候補がいるとしよう。ヒトラー氏とチャーチル氏とルーズベルト氏である。ヒトラー氏には熱烈な支持者がいて国民の4割が支持している。しかし敵も多く、チャーチル氏とルーズベルト氏の支持者はそれぞれ3割だが、彼らの支持者はみなヒトラーを首相にしては絶対駄目だと思っている。ところが1人1票の多数決はヒトラー氏を当選させてしまうのだ。これがいい制度だろうか。ブッシュ・ジュニアがアル・ゴアと戦った大統領選では第3の候補が現れて、ブッシュが漁夫の利を得たといわれている。
     そこでフランス革命期にボルダが作った意見集約法がボルダルール。これは3人の候補を1位2位3位と順位を付けて投票し、1位3点、2位2点、3位1点と配点するのである。この方法だとチャーチル派とルーズベルト派はヒトラーを3位に投票するので絶対ヒトラーは当選しない仕組みになっている。
     これいいじゃん、と思うが、1位6点、2位2点、3位1点などと重み付けを変えると、ヒトラー当選の可能性がある。また、ボルダルールは「クローン問題」という難点がある(これは本書読まれたし)。
     ついでに持ち点10点制もよさそうに思えるが、良識的に各候補に少しずつ配分する人の中に、熱狂的に尊師に10点を入れる人が混じってくるとオウム真理教が勝ってしまう。

     ボルダと同時代のコンドルセが考えたのは、ペア勝者ルールである。ヒトラー対チャーチル、チャーチル対ルーズベルト、ルーズベルト対ヒトラーとそれぞれのペアで多数決して順位を決めようというものである。これはナメクジと蛇と蛙の三すくみ、というかじゃんけんでグー、チョキ、パーのどれが最強か決められないという現象が起こるのが難点。候補が4以上だとさらに難しくなる。が、それを解決するヤング・コンドルセの最尤法が近年開発されたという(これは直感的にわかるようなものではないようで詳しい解説はされていない)。
     そこで著者はマルケヴィチの反例を示す。これは5人の候補がいて5つの集約法を使って意見を集約すると5つの方法がそれぞれ違った候補を選んでしまうという場合である。結局、意見の集約法にはいくつかの満たすべき要件があるが、すべての要件をみたす集約法はないのである。

     ここで評者が声を大にしていいたい著者の主張は、「多数決で決めた結果だから民主的」「選挙で勝った自分の考えが民意」などというのはあまりに粗雑なたわ言であるということ。
     多数決は票が割れると予想も付かない結果になること、選挙で勝ったといったって、そこにはいくつかの意見の集約法があるだけで、極論すればマルケヴィチの反例のように「民意」は集約法によって変わってしまう。

     後半は議員制のような代表制がやはり民主的とはいえないという指摘。
     それから、箱物を建てるとか道を作るとい... 続きを読む

  • 「現行制度が与える固定観念がいかに強くとも、それはまぼろしの鉄鎖に過ぎない」と本書で述べられている通り、それまで常識だと思われた多数決という儀式を懐疑的に考察している本です。

    本書の中で様々な集約ルール、メカニズムが紹介されていますが、こまやかな計算式は避けて単純な定式のみが紹介されているので読みやすいと思います。

    勉強というよりはとりあえず読み物として社会的選択理論を学びたい人におすすめだとおもいます。

  • とても面白かった。特に社会的選択理論を具体的な事例に展開していった4,5章の読み応えはかなりある。「1人1票、多いほうが勝ち」という多数決のルールがいかに「民意の反映ではない」か、ということを教えてくれる。

    そうなってくると、そのような「1人1票、多いほうが勝ち」というルールがどうやって形成されていったか、ということが歴史研究者としては気になる。そういう研究はあるのだろうか。日本史には少なくとも、ないと思うのだが。

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