ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315506

感想・レビュー・書評

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  • →Xマインド:環境倫理、21レッスンズ
    →keynote

    ◯過剰による貧困(楽園のパラドックス):生産性上昇による失業ー増
    ◯時間再配分
    ◯時間政策inJapan:祝日増加←日本の空気
    ◯市場経済と「時間」
    ◯長期視座=民俗学×近代科学
    ◯消費〈物質→エネルギー→情報→時間〉
    ◯未来の収奪・過去の収奪

  • 人間の長年にわたる営みを資本主義、科学、宗教、などなど、色んな角度で分析しながら、人間社会が目指す望ましい姿を提案している。
    序章 人類史における拡大・成長と定常化
       —ポスト資本主義をめぐる座標軸
    第1部 資本主義の進化
     第1章 資本主義の意味
     第2章 科学と資本主義
     第3章 電脳資本主義と超(スーパー)資本主義
         vsポスト資本主義

    第Ⅱ部 科学・情報・生命
     第4章 社会的関係性
     第5章 自然の内発性
    第Ⅲ部 緑の福祉国家/持続可能な福祉社会
     第6章 資本主義の現在
     第7章 資本主義の社会化またはソーシャルな
         資本主義
     第8章 コミュニティ経済
    終章 地球倫理の可能性
       —ポスト資本主義における科学と価値
    人類の歴史、採集狩猟社会から農耕社会、そして産業革命以来の高度情報化、人工頭脳・・・
    瞬時に情報が地球を駆け巡る時代だからこそ、人間本来の顔と顔の見えるコミュニティの原点に回帰する。
    そこから、ガラガラポンでどういう価値観・思想を打ち立てれるのか、今後の人類に課せられたすごい課題です。

  • 昨年は、水野和夫の「資本主義の終焉と歴史の危機」や、ハーマン・デイリーの「定常経済は可能だ!」などで、機能不全に陥った資本主義の現在を学んだが、今回読んだ、「ポスト資本主義社会」は、これらの現実を踏まえつつ、資本主義を支えてきた思想の意味の分析と、それらの反省に立って、次なる社会の在り方を、既にヨーロッパで実現している事例も紹介しつつ、具体的なイメージを喚起させるといった意味で、非常にスリリングで、ユニークな1冊であった。
    歴史的に見て、自然という資源を利用・搾取する、技術革命的なブレーク・スルーと、その方法での限界を迎えての「定常状態」は交互に発生しており、現在もそうした飽和、成熟、定常状態に入ってきているのだという。
    これを克服するのは、さらなる「成長戦略」なのかといえば、利用・搾取する資源の状況を考えると、必ずしもそうではなく、やはりいかに「持続可能」な社会やそれを支えるシステムを構築するかが重要である。成長神話は、資本主義の呪縛であり、著者はブローデルを引用し、資本主義と市場経済を区別しつつ、資本主義の本質として、「拡大・成長」を志向するシステムであり、資本としての貨幣の流通が自己目的的で、グローバル経済が地球を埋め尽くした現在、利用・搾取するパイの総体自体が頭打ちした中で、社会の総体が豊かになるような、明るい未来がないことを示唆している。
    ポスト資本主義社会を乗り越えるにあたって、成長がない定常化した経済・社会=フローが少なく、蓄積したストックがものをいう社会で、いかに富の分配を行い、スタート時点での平等を確保するかということと、持続可能性のために、いかにエコで、自然共生的な社会・経済システムを確立するか、といったことが課題とされる。
    日本は、アメリカと並んで、経済成長信仰の著しい国であるが、ヨーロッパでは、環境や福祉をベースにした、ローカル経済を確立しつつあるとのこと。これには、それこそブータンではないが、なにを「豊かさ」を図る指標にするか、といった意識改革も必要となってくるので、一朝一夕にはいかないが、真剣な検討が必要なところであろうと思われる。
    最終章は、「地球倫理の可能性」について触れられているが、いわゆる過去の定常状態を受けて生まれたとされる「普遍宗教」に対して、それらが「普遍」を標榜するがゆえに対立することを受けて、それらを超える思想や価値観の形成を提起している。昨今の、とりわけ日本人には理解しがたい、宗教に端を発する争いが絶えないことも踏まえて、社会の在り方とともに、あらたな世界観や価値の確立が必要な時代に差し掛かっていると感じた。

  • 驚いた。
    広範な思考。これまで見聞き、学んだことがつながった気がする。
    「なつかしい未来」としてのポスト資本主義。

    要再読。

    ・定常期をむしろ文化的創造期としてとらえる

    ・無限に拡大・成長する資本主義
    ≠市場経済(開かれた交換)

    ・人間と自然、生命と非生命の理解の深化

    ・ストック経済の比重の拡大

    ・「時間環境政策」という概念
    ・労働生産性から資源生産性
    ・コミュニティー経済と福祉
    ・鎮守の杜、学校、集える場所と自然エネルギー
    ・歩ける中心市街地

  • 資本主義の限界と今後への提案が書かれた本。
    非常にわかりやすく鋭い指摘が多く、話題のピケティ氏の議論にも通じるところがあると思います。

    資本主義とはそもそも何なのか、ということの解説がとても面白かったです。そのうえで、市場主義と資本主義とは最終的には矛盾するという解説がとても新鮮でした。

    今後を考えるうえで、人間が生きている地球や環境という生に基礎を置いて経済をとらえ、国家やコミュニティや国際経済を論じています。
    最終的には、経済を地域に着地させ、定常型社会つまり持続可能な社会を実現させるべきという意見になっています。

    このまま資本主義を突き詰めると21世紀はどうなっていくのか不安が募ります。そんな中で、明るい未来のための選択肢として、定常型社会というのは最も優れた姿だと思います。資本主義って人間の欲望がどんどん加速させていくものなので、実際にそれを実現させることは、非常に困難であると思いますが・・・

著者プロフィール

広井 良典(ひろい・よしのり):1961年生まれ。京都大学人と社会の未来研究院教授。専攻は公共政策、科学哲学。環境・福祉・経済が調和した「定常型社会=持続可能な福祉社会」を一貫して提唱。社会保障、医療、環境、都市・地域等に関する政策研究から、ケア、死生観、時間、コミュニティ等の主題をめぐる哲学的考察まで、幅広い活動を行っている。著書『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、2009年)で大佛次郎論壇賞受賞。『日本の社会保障』(岩波新書、1999年)でエコノミスト賞、『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社、2019年)で不動産協会賞受賞。他に『ケアを問いなおす』(ちくま新書)、『ポスト資本主義』(岩波新書)、『科学と資本主義の未来』(東洋経済新報社)など著書多数。


「2024年 『商店街の復権』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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