「昭和天皇実録」を読む (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315612

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/706049

  • 昭和史という一見身近な世界にも既に謎がある。

    「昭和天皇実録」の圧倒的な分量、通読するものではないか歴史的に貴重な資料。そんな資料の見どころを解説する、元々は公演の内容。

    皇太后との確執やローマ法王との交流、終戦後の退位やカトリックへの改宗の可能性など意外な事実が浮かび上がってくる。

    昭和史に興味を持つきっかけになる1冊。

  • 講演禄ということで、著者の語りの雰囲気が伝わってくる。趣味の鉄道にかかわることはほんとうに楽しそうだ。が、1冊の著作としてはまとまりのな雑駁な感じをぬぐえない。実録への関心を高めるための入門書なのだろうけど。

  • 一時期キリスト教(カトリック)を熱心に学んでいたとは知らなかった。靖国参拝しなくなった理由は靖国神社がひっそりA級戦犯を合祀したからとも。無理に合祀しなければ天皇陛下も参拝し続けていたということですね。

  •  原武史著『昭和天皇』『「昭和天皇実録」を読む』(いずれも岩波新書)を読了。仕事の資料として。

     ほかに、原氏の著書『知の訓練――日本にとって政治とは何か』(新潮新書)と『日本政治思想史』(放送大学テキスト)の、天皇関連の章を拾い読み。

     著者は日本政治思想史の研究者で、とくに近現代の天皇・皇室・神道の研究を専門とする。
     昭和天皇に関する著作はすでに汗牛充棟だが、著者の『昭和天皇』は宮中祭祀、つまり宗教的側面に重きを置いて天皇の生涯を追っている点が特徴だ。ちなみに、本書で著者は司馬遼太郎賞を得ている。

     もう一冊の『「昭和天皇実録」を読む』は、『昭和天皇』の続編。
     書名のとおり、2014年に宮内庁が公開した「昭和天皇実録」を読み解き、注目すべきポイントを挙げたもの。こちらもやはり、昭和天皇と宗教の関わりに力点が置かれている。

     天皇家の宗教といえば神道というイメージばかりが強いが、歴史的には必ずしもそうではなかったことがわかり、目がウロコ。
     仏教の影響のほうが強い時代も長かったし、昭和天皇は一時期キリスト教――とくにカトリック――に強く傾倒したという。皇太子時代だが、ローマ教皇と会見したこともある。

     私が『「昭和天皇実録」を読む』でいちばん驚いたのは、敗戦後に昭和天皇が神道からカトリックに改宗しようとしたことが明かされるくだり(第4講「退位か改宗か」)。くわしい人には常識レベルの知識なのかもしれないが、私は初めて知った。

     戦時中、神道式に戦勝を祈ってきたのに、その祈りは叶わなかった。そのことを、昭和天皇は「こういう戦争になったのは、宗教心が足りなかったからだ」という言葉で表現したという。

    〝この意味は、神道には宗教としての資格がなかったということです。天皇は折口信夫のように、神道はれっきとした宗教であり、敗戦を一つのチャンスととらえて神道を普遍宗教へと転換しようとは考えませんでした。九州でカトリックが広がりつつあるならば、自らもまたカトリックに改宗すべきではないか――こう考えることで、しっかりとした宗教としてのキリスト教、それもカトリックに天皇が改宗する可能性があったように思います。〟

     戦前・戦中はもちろん、戦後においても天皇が一貫して宗教的存在であることを、改めて痛感させる本。

  • 原武史 「 昭和天皇実録 を読む 」

    昭和天皇実録のポイント、読み方、背景がわかる本。皇太后との関係、キリスト教改宗など 驚きの内容だった


    昭和天皇実録をどう読むか
    *天皇に戦争責任はない→天皇は退位を考えたことがない というスタンス
    *祭祀に注目→アマテラスと国民の間にいる天皇
    *宗教、家族関係

    驚きの内容
    *後宮=一夫多妻→昭和天皇が後宮廃止へ
    *皇太后の敬神の強さ、政治介入に対する警戒
    *昭和天皇は太平洋戦争前から ローマ法王を通じた終戦を模索していた
    *太平洋戦争の本土決戦は 皇太后の意向
    *神道には宗教の資格がない→キリスト教への接近

  • 昭和天皇の実録が完成し、少しずつ書物になって出てきた。原さんたちは、直接それをすべて読んだ一人だろう。実録と言っても、都合の悪いことは書いてない。だから、本書も実録を読むと言いながら、他の資料と合わせて論じていて、それが逆に実録に書いてないことと書いてないことの違いを際立たせることになっている。もちろん、今回の実録でわかったこともある。原さんは「昭和天皇実録」を序論を含め6回に分けて話している。これはもとはと言えば岩波書店での講演がもとになっているからである。この中でぼくが興味を引いたことの一つは、昭和天皇は母親である貞名皇太后が苦手だったということである。当時の天皇は生まれても母親が育てるわけでなく、お育て係りがいる。親から切り離されるわけだ。昭和天皇は一年の何分の一かを沼津で親族の女性たちと暮らしている。これもかれに大きな影響を与えたであろう。天皇の大きな仕事は祭事であり、これがけっこう大きな負担で、なるべく省略するような動きもあったが、貞名皇太后はそれを許さなかった。この影響は終戦を決意するときにもあったし、戦後に皇太后が亡くなるまで続いた。だから、なくなって以後、大きな改革が皇室で行われていったのである。昭和天皇が生物学に興味があったことは有名だが、これも軍部からはにらまれていたらしい。しかし、裕仁天皇はそこに息抜きの場を見つけていた。そういう意味では、明治天皇のようなばりばりの統治者像ではなかったのである。あと、印象に残ったのは、カトリックへの接近である。これはヨーロッパ訪問の折、バチカンを訪れ、法王からカトリックと天皇制は矛盾しないと言われたこともあるが、裕仁自身神道は宗教ではないと思っていて、心のよりどころをカトリックに求めようとしていたのである。だから、宮中には戦時中もキリスト教関係者が出入りしていたし、戦後も皇太子(今の天皇明仁)のために、アメリカ人の家庭教師を招いたりしている。さらには、カトリックの家に育った正田美智子さん(今の皇后)と皇太子の結婚にも好意的であった。(皇后は民間人からということで反対したそうだ。それが後の美智子いじめになったと聞く)天皇が戦後も政治に関心をもち、当時の吉田首相が内奏をたびたび行い、GKQとも直接交渉していたことは豊下楢彦『昭和天皇・マッカーサー会見』で明らかになっているが、一方で裕仁は共産党や労働者階級の声も聞こうとしていたのも興味深い。もちろん、共産革命は最も恐れていたことではあったが。

  • 公にされていない事柄が多く驚く。特に実母との確執は最大級の驚きだ。昭和天皇の退位も可能性があったくらいだから。

  • 長大な「昭和天皇実録」を読む際のポイントがわかりやすくまとめられており、面白かった。とくに「神」ー天皇ー臣民の関係、天皇の宗教観、家族関係と実母との確執などが興味深い。ほかにも昭和天皇の政治への積極的関与のあり方など論点は尽きないが、この新書だけでもかなりのことがわかる。

  •  もう少したくさん歴史の隠された断片が示されるのかと思って読んだのだが。

  •  『昭和天皇実録』の講義録。著者がこれまで研究してきた「巡幸・行幸啓」や宮中祭祀をはじめとする宗教との関係に重きを置いており、政治史・軍事史的な観点は薄い。目新しいところでは、戦後占領期に昭和天皇がカトリックに接近を図り、改宗の可能性すらあったという指摘が興味深い。旧著『昭和天皇』(岩波新書)と同様、昭和天皇と母親の貞明皇后との確執・緊張関係を強調しているが、史料批判の上で異論はありえよう。

  • 著者の『皇后考』を読んでいたのが参考になりました。やはり昭和天皇は母貞明皇后(後、皇太后)を恐れていたことが、判然と示されています。それと、私が特に気になるのは、天皇がカトリックに接近する背景には、神道に対する悔悟に加えて、A級戦犯にすべての罪をかぶせることに対する精神的な葛藤があったと思われることと、一九五〇年まではカトリック教徒との密接な関係が続いていたが、サンフランシスコ講和条約と同時に日米安全保障条約締結によって、ローマ法王へと接近して別の枠組みを模索する道が途絶えたことが指摘されていたことです。

  • 興味深く読めた一冊。
    「神ー天皇ー国民」の図式を上手に説明している。それにしても太平洋戦争末期、天皇が一撃講和論に執着していたのにはちょっと驚いた。東京裁判を受け入れることでサンフランシスコ講和条約が成立したことを理解し、靖国に対する態度を明確にしていた人なのに。やっぱり国よりも天皇家が大切だったのかなぁ。
    神道に対する絶望感は哀しい。香椎宮と宇佐神宮に勅使を参向させた直後に原爆投下だもんなぁ。そりゃあ裏切られた気持ちにもなるよね。

  • 普通に面白い。こういう第1級の資料はいろいろな視点から分析されて欲しい。

  • 「皇太后」
    これが一番の歴史だったんですね。
    それと皇太后に仕えた女官。
    それに影響された皇后。
    とにかく・・・・、歴史の裏に「オンナあり」ということでしょうか。
    恐ろしい。

  • 288.41||Ha

  • 2015/9/25

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著者プロフィール

1962年生まれ。早稻田大学政治経済学部卒業,東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授,明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。98年『「民都」大阪対「帝都」東京──思想としての関西私鉄』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞、2001年『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞、08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『皇后考』(講談社学術文庫)、『平成の終焉』(岩波新書)などがある。

「2023年 『地形の思想史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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