ヒョウタン文化誌――人類とともに一万年 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315643

感想・レビュー・書評

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  • 世界中で生活用具として使われるだけでなく、神話や象徴など精神的な側面も併せ持つ最古の栽培植物の一つ、ヒョウタン。広さと深さを兼ね備えたヒョウタン文化の実像を、物質、精神の両面から明らかにする。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40230568

  • ヒョウタンがなかったら、人類はここまで生息域を広げられただろうか?と思わせるほど、人類にとって重要な作物だったのだなと思った。
    軽くて大きくて水が漏れない容器が(ほぼ)無加工で作成できるって凄い。

    日本のでのヒョウタンは、アフリカ等に比べると存在感がないように感じた。
    紀記神話含め、日本の神話、古代史の中でヒョウタンの扱いは地味。
    水を入れる道具故に水を表すシンボル、種がたくさん出てくる故に多産・豊穣のシンボル…とするならば、色々な形でもっと各所に現れても良さそうなのに、いまいち立場がパッとしないというか…。今でこそ縁起物とされるけれど、歴史はそこまで古くないように思う。
    ものを入れる容器としては、日本では竹の方が使い勝手が良かったのかなぁと個人的に想像した。古く「富が出てくる植物」といえば竹だし。
    日本での「シンボルとしてのヒョウタン」の歴史について、もっと掘り下げて知りたい。

    植物としてのヒョウタンの生態について、もっと知りたいと思った。
    栽培に北限はないのだろうか?暑くて乾燥した地域の植物だから、地域も限定されていそうなものだけど。

  • 2015-10-8

  • ひとえにヒョウタンと言っても、楽器からアクセサリーから、食器から様々。
    昔、科博でヒョウタンの企画展をやっていたことを思い出した。

  • 新書文庫

  • 世の中にはいろいろなマニアがいるものだ。食虫植物、蝶、古銭、鉄道、蕎麦、フィギュア・・・ひょうたんマニアがいてもおかしくない、と思っていたらいるどころではなかった。全日本愛瓢会は40年の歴史を持ち、名誉総裁は秋篠宮殿下だそうだ。ひょうたん四天王を倒してついに大ボスにたどり着いたら、お、おまえは・・・いや、あなたは・・・というパターンなのか。楽しい世の中だ。

    ひょうたんかわいい。ちょっと植えてみたくなった。あれは実なんだよな。中に種が入っているそうだが、どうなっているのだろう? そのまま地面に落ちてひょうたんからひょうたんか生えてくるのだろうか・・・思わずいろいろ調べてしまった。

  • ヒョウタンと言われるとまずは、中央がくびれたユーモラスな形を思い出すだろう。だが、このヒョウタン、見た目がかわいいだけではない。
    世界最古の栽培植物の1つと言われ、その歴史はなんと1万年以上。
    世界各地でさまざまな用途に利用され、珍重されてきた。
    ヒョウタンのルーツを探ることで、人類移動の謎までも解けるかもしれないという。
    めくるめくヒョウタン・ワールドである。

    一般的には、ヒョウタンというとくびれた形を思い浮かべるが、ずんぐりと丸い形のものもあり、逆にびよんと伸びた細長いものもある。上部が柄のように長く先が丸いもの、表面に疣上の突起を持つものなど、変わり種もある。
    ヒョウタンは漢字では「瓢箪」だが、元々は「瓢」がヒョウタン、「箪」は竹で出来た食器を指す。ヒョウタンの名称は、論語で、孔子の弟子、顔回が「瓢に一杯の汁、箪に一杯の飯の清貧の暮らしで満足していた」というエピソードが日本に伝わる際に、「瓢箪」で1つの容器と誤解されたことに始まる。
    和語の別称としては、ひさご、ふくべがある。

    ヒョウタンの用途といえば、七味唐辛子などの薬味入れだろう。それから酒を入れる徳利。世界でもさまざまなものを入れる容器として使われている。
    乾かせば中は空洞になる。軽くて丈夫、液体も漏れない。栓をすれば虫も入らない。そうした長所を持つヒョウタンは、土器や金属器が現れる前から、天然の入れ物として利用されてきた。水筒、油入れ、香辛料入れ。長期保存に加えて、熟成・発酵にも利用できるため、酒やバターも作れる。
    もちろん、椀などの食器にもなる。液体を掬う柄杓にもなる(「柄杓」は「ひさご」を語源とするらしい)。
    調理器具としても使える。水をよく染み込ませれば、直火にも掛けられる。天井から囲炉裏に吊すなど、火の側に置いて、燻製様の保存食品を作ることも可能だ。

    容器のほか、特筆すべきは楽器としての用途だろう。果皮が堅く、内側にやや柔らかいスポンジ状の繊維があるため、まろやかによく響く音が出る。
    叩けば太鼓、中の種を残しておけばマラカス、吹けば笛、弦を張れば弦楽器。八面六臂の大活躍である。それ自体を楽器とするだけでなく、マリンバで使うように、共鳴器としても用いられた。
    小型のものをつないで首飾りにすれば、踊っただけで楽器となる。凝ったものでは、21本もの弦を持ち、ハープやギターの原型となったと言われるもの(コラ)もある。

    少々変わった用途としては、頭部手術で頭蓋骨の代わりとした(!)例、海女が使う浮き輪、衣装代わり(ペニスの鞘)といったところがある。
    いずれも、形状や特質を利用したものだ。
    ユウガオや干瓢など食用として、また薬としての用途もあるが、世界的には果肉や種子を摂取するより、道具として果皮を利用する方が多い(ヒョウタンの果肉には往々にして毒があったり苦みがあったりするため)。

    ヒョウタンはおそらく、アフリカをルーツとする。栽培種としてのヒョウタンが広がった陰には、人類の移動があったはずだ。ヒョウタンの系統の流れが解き明かされれば、人の移動も見えてくるかもしれない。
    DNA解析等から、アメリカに見られるヒョウタンは、アジア系のものであると考えられている。アフリカから直接どんぶらこっこと海を渡ったと考えるよりは、アジアを経て、アメリカに渡った可能性が高いのだ。氷河時代には陸続きであったから、植物として陸地伝いに広がった可能性はなくはない。だが、ヒョウタンが温暖な気候を好むことを考えると、水を携える容器として、人々とともに海を旅したと考える方が妥当かもしれない。ポリネシアやイースター島にもヒョウタンは見られる。何より海を渡るヒョウタン、何だかロマンがあるではないか。

    加工がしやすいため、民芸品や芸術作品も数多く創作されている。
    水墨画を初めとする絵に多く描かれ、「ひょうたんぽっくりこ」と歌う童謡もある。
    長年、愛され、親しまれてきたヒョウタン、見かけによらずすごいやつなんである。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=6264

  • ひょうたんはすごいなぁ。
    著者のひょうたんオタクにも脱帽・完敗。

  • S618.9-イワ-R1564 300442803

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著者プロフィール

■湯浅 浩史(ユアサ ヒロシ)
1940年生まれ。農学博士。東京農業大学大学院農学研究科博士課程修了。元東京農業大学農学部教授。元生き物文化誌学会会長。(一財)進化生物学研究所理事長・所長。
世界60か国を訪れて、植物を調査。専門は民族植物学。
月刊誌『子供の科学』で30年以上連載を続けている。

「2020年 『びっくり! 世界の不思議な植物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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