- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004315896
作品紹介・あらすじ
「法の支配」の語は近年、総理大臣をはじめ多くの人に使われるようになったが、正しく理解されてはいない。「法の支配」は、明治憲法の「法治国家」に代えて日本国憲法が採用した統治原理である。法律の九割を占める行政法を素材に法治国家との相違を明確にし、歴史と理論の両面から国家と社会のあり方について考察を加える。
感想・レビュー・書評
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1946年生まれの専門家による行政法入門。英米法に源流を有する「法の支配」が日本国憲法の基礎であるというのがイイタイコトと理解しました。
明治帝国憲法は、「法治国家」が原理であり、日本国憲法は、「法の支配」が原理である。大学のときに、これを学んで以来頭に残っているが、この書に記載されている「憲法が国家をつくる」というのが、近代法の常識、であるというのは大変に示唆的。国家ありきではないのですネ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
明治憲法の(形式的)「法治国家」と、日本国憲法の「法の支配」の違いに基づいて、現代の行政法のあるべきかたちについて論じた本です。
明治政府は憲法を制定するにあたってドイツの憲法を参考にしました。しかし、ドイツでは市民社会の成立が遅れたため、上からの近代化を推し進めるために都合のよい立憲君主制が採用されていました。そこでは、自由で平等で理性をもった尊厳ある存在としての個人を主権者とする、フランス革命の原則を満たしていませんでした。本書は、そうしたドイツ憲法をもとにつくられた明治憲法における「法律の留保」の考えなどの問題点を明確にしています。そのうえで、日本国憲法には英米憲法の原理である「法の支配」の原則が継承されており、明治憲法の原則であった「法治国家」の考えと鋭い対立をなしていると論じられます。
本書の後半では、高橋和之らによって主張された「国民内閣制」しつつ、著者自身の考える「法の支配」の原則に基づいて、社会に生起する公共的問題を処理する仕組みとしての国家の活動を規制するための法律として、行政法をとらえる見方が示されています。
サブタイトルには「行政法入門」とありますが、行政法の中身についての入門的な解説を求める読者のニーズにこたえるような本ではありません。行政法は題材としてとりあげられているような印象があり、むしろ「法の支配」をめぐる著者の主張が提出されている本だったように感じました。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685623 -
明治憲法の採用した「法治国家」と日本国憲法の採用した「法の支配」とを、欧米においてこれら政治形態がどのように形成されてきたのかを辿る事で比較検討し、現代の政治における運用を見ていく。
段落割りやナンバリングがどうも唐突で不自然に感じられる上、同内容を反復しながら次第に輪郭をはっきりさせていく書き方は個人的には非常に読み辛かった。 -
2016/04/26
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明治憲法は臣民に憲法遵守義務を課したが、日本国憲法にはない。99条に国民はない。
日本の法律の大半は行政法。憲法は変わっても行政法は変わらない=オットー・マイヤー。本来は、法の支配の元の行政法に変わるべき。
国民内閣制説=無制限の解散権と内閣不信任決議を認める=直接民主制に近づこうとする。しかし、むしろ墓穴を掘っているのでは?
法の支配では、司法裁判所に格別な役割がある=違憲立法審査権。
多数支配型と合意形成型。
人民による統治、が民主制の本質。 -
最初は基礎的な行政法入門だったのに、後半から政治学の話(デュヴェルジェとかレイプハルトとか)が入ってきたので残念。政治の話ついてはやや、認識が誤っているような気がする。
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大学の基礎演習で使用。
書評が結構書きづらかった。
解説の詳しさにムラがあるのと根拠の弱い部分があったが
全体的に丁寧に書かれていたように思う。
”憲法や国家の変化とともに行政法も変わるべき”
”選挙において最も重視されるべきは党利党略ではなく、憲法原理としての「法の支配」の規範的要請に応えること” -
「国家の社会への介入は、社会に存在する病理現象を治癒するために何がしかの財政措置をともないながら一定の公共政策を実現する形で行われるもの」。
行政職として【依るべき思考・哲学は何なのか】、【得るべき知識は何なのか】、【起こすべき行動は何なのか】、この三つの自問は事あるごとに繰り返したいところ。