ルポ 難民追跡――バルカンルートを行く (岩波新書)

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著者 : 坂口裕彦
  • 岩波書店 (2016年10月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316244

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ルポ 難民追跡――バルカンルートを行く (岩波新書)の感想・レビュー・書評

  • (2017.02.09読了)(2017.02.06借入)
    副題「バルカンルートを行く」
    ヨーロッパに多くの難民が押し寄せて対応に苦慮しているというニュースをテレビで何度か見ていますが、どういうことなのか今一つよくわかりません。
    図書館でこの本を見つけたので借りてきました。
    著者は、毎日新聞の記者です。ドイツやオーストリアを目指して移動するイスラム教徒の難民を追跡取材して、難民の実態を把握しようという試みです。
    シリアやアフガニスタンからの難民がたどるルートの一つがギリシャのレスボス島です。ギリシャのレスボス島は、トルコの沖合10キロのところにあります。
    トルコ領からゴムボートに乗ってレスボス島にわたります。レスボス島からは、ギリシャ本土行きの定期船が出ているので、その船に乗ってアテネ近郊のピレウス港に渡ります。
    元祖バルカンルートは、ギリシャからマケドニア、セルビア、ハンガリー、オーストリアの順番で、ドイツに達していました。(5頁)
    ところがハンガリーが、セルビアとの国境を封鎖してしまったので、セルビアからクロアチアへと迂回した難民は、クロアチアによってハンガリーへと送り返されたので、結局、回る国が一つ増えてしまった。ハンガリーは、クロアチア国境も閉鎖してしまったので、クロアチアからスロベニアを経由してオーストリアへというルートに変わった。
    坂口記者が追いかけたのは、ギリシャ、マケドニア、セルビア、クロアチア、スロベニア、オーストリア、ドイツということになります。
    追跡取材をお願いした相手は、アフガニスタンからの難民でした。ちょっと不思議な感じですが、アフガニスタンの治安が悪化しているので、隣国イランに逃れたのだそうです。イランでは、定職に就けないので、生活の安定を求めて、難民を受け入れているドイツを目指すのだそうです。
    坂口記者もシリア難民を取材対象にしたかったのですが、イスラム国の報復を恐れてか、取材には協力してくれなかったとのことです。
    レスボス島からギリシャ本土に渡るフェリーは、ストライキのため5日ほど足止めを食ってしまいます。
    ピレウス港からアテネへは、バスで地下鉄ピレウス駅まで運んでもらい、地下鉄でアテネのビクトリア駅へ。アテネで難民キャンプに入り、マケドニア国境行きのバスの切符を購入します。アテネからマケドニア国境までの距離は、約550キロです。
    坂口記者は、ギリシャの検問所からマケドニアの検問所までは高速道路を500メートルほど歩いて通過しました。一般旅行者と難民の入国審査は別になっています。
    次のセルビア国境までは、列車でもバスでもタクシーでも料金は統一価格で25ユーロと決まっていました。
    取材対象のアリさんは、列車で移動しました。
    セルビアの次は、クロアチアです。セルビアからクロアチアへは、列車です。
    クロアチアの次は、スロベニアです。クロアチアとスロベニアは上手に連携しているようで、クロアチアからやってきた難民の特別列車は、スムーズにスロベニアの列車に乗り換えさせています。
    「列車リレーのたすきは、セルビアからクロアチアを経て、スロベニアにもつながれていた。」(91頁)
    シリア出身のアルバイさんの場合は「13日にマケドニアに入り、14日にはセルビアへ。さらに15日にはクロアチアを経て一気にスロベニア入りしていた。」(93頁)
    やってきた人を難民キャンプにとどまらせるよりは、さっさと送り出した方が難民にとっても通過させる国にとっても得策ということです。
    坂口記者は、セルビアでアリさんを見かけた後は、クロアチア、スロベニア、オーストリアと難民がいるところを探し回ったが見つけることができず、オーストリア滞在中に連絡を貰った時には、アリさんはすでにドイツ入りしていた。アリさんは、ドイツ... 続きを読む

  • ルポタージュとして、中々の力作だと思う。
    難民問題を調べる中で、一家族の行動を追っていくハードな取材だ。しかも、現在では、国境付近の警備が厳重にされ、難民の受け入れ制限を設ける・強制送還になっている現状との比較もできると思う。当初は、余裕のあったアリ・バグリさん一家も情勢が変わるごとに翻弄されていく様子を見るとやり切れない思いがある。専門用語や現地の人達の状況なども書かれており、分かり易く読めた。

    一家は無事に定住への道が開けたが、定住から先の就労・生活などの問題が山積している。一部の過激なテロリストによって、関係のないイスラム教徒やマイノリティが排除される。
    排他的な空気が世界に漂う中、日本の立ち位置が改めて求められている。
    安倍首相はトランプ大統領の難民入国禁止令に関して、コメントする立場にないと発言した。
    そもそも日本は難民の受け入れを厳しく制限しており、世界各国から問題視されている。その状況の中で、難民に関するコメントができないのは当然と言えば当然だが…。
    外国人労働者の活用も考慮するなら、今後長期的な労働者として受け入れる考え方も大切になっている。

  • 偶然にもトランプ大統領就任の日にこの本を読みました。

    シリアやアフガンの難民問題は、国内の所得格差問題と絡まって欧米各国で右派が台頭する背景となっています。しかし、難民問題は日本では身近でなく、なかなか想像が及びにくいものです。であればこそ、難民申請を求めて移動する一家に密着してのルポルタージュには大きな価値があります。
    世界が抱えている苦悩について、いくらか理解を深めことができました。

    この本では、近現代を通じて培われてきたヨーロッパ(EU)という「思想が直面している危機」が問題意識の中心になっています。ユダヤ人の受難とドイツの贖罪という歴史的経過についても、当事者のインタビューを通じてのコンパクトに解説されており、理解を深める一助となっています。

    さて、世界はこれからどうなるのか?我々はどう考え、どのような道を選択すべきか?

  • 追跡というほど大それたものではなさそう。
    ドイツの過去と現在のリンクは作者の脳内でのできごと。

  • イランからのアフガン人難民一家を、レスボス島からメスシュテッテンへ同行したレポート。国境での手続きは簡素化され、交通手段はバスでも列車でも安価で素早く用意されるのは、各国が自国を早く「通過」して欲しいから。遠く日本から全然偉そうこと言える立場じゃないが、うっすら背筋が寒い。

  • 読むか迷った本ですが、読んで良かった。基本的に小説好きなのですが、ドキュメンタリーものの映像はよく見る。難民のことは気になっていた。テロと密接に結び付くと誰もが思ってしまう。でも全員がテロリストなわけじゃない。難民問題は複雑多岐にわたっている。ドイツはユダヤ人を迫害した過去がある。でも全ての難民をドイツが受け入れられる訳じゃないし、シリアやアフガニスタンが平和になればみんな故郷に帰れるかもしれないけれど、戦争がなくなったって、平和な訳じゃないのはいまの日本を見たら分かるし。あれもこれも知らないフリしたりはできない。ここに書いてあることはみんなが考えないといけないことなんだと思った。よんで良かったです。

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