キャスターという仕事 (岩波新書)

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著者 : 国谷裕子
  • 岩波書店 (2017年1月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316367

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キャスターという仕事 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 政権にぶっこみ過ぎたことでクローズアップ現代のキャスター降板となったと巷では言われている国谷さんが、テレビの仕事に携わり始めてから、クローズアップ現代のキャスターとして番組が終わるまでを振り返った本。
    結局、現政権にだけ批判的だったというわけではなく、聞くべきことを聞くという彼女のスタンスを貫いたっていうことだけだよな。忖度せずに。
    「聞く」と「聴く」のスタンスは、キャスターだけでなく、我々も人の話をきく際には意識するべき点だと思った。

  • 著者はNHKで「クローズアップ現代」のキャスターとして
    23年間勤めた。
    その現場での経験した生の声と、スタッフ達との番組製作に奮闘する
    姿がカッコイイ。

    アナウンサーとニュースキャスターの違いって分かりにくい。
    簡単に言うと、アナウンサーは原稿どおりに正確に読み伝えること。
    一方、ニュースキャスターは話し言葉で送り手と受け手のパイプ役に
    なり、その個性が発揮できる。

    その反面、客観性の高いニュースを私見という目線が入ることで厄介なことも
    起きる。
    その厄介な事が色んな人に誤解を招いてクレームに繋がるらしい。

    その際たるものが、「出家詐欺」ねつ造放送騒動だ。

    寺院で「得度」という儀式を受けると戸籍の名義が変えられるのを悪用した
    「出家詐欺」が広がっているという報道で、「やらせ」とか「過剰演出」があったと
    クレームが付き、クローズアップ現代の汚点になってしまった。

    現場での人材育成に最適なものがこの番組にはある。
    それは、試写が二回あることだ。
    若い担当者が作成したレポートを他のスタッフと議論してダメ出しをされて、
    自分の視点との違いを知り、さらに深く突っ込んだ議論になる。
    前日に一回目、そして当日の昼に二回目の試写を行い、生放送本番に向かう。
    クローズアップ現代は試写が一番面白いと言う関係者もいる位に熱を帯びる。

    その試写2回を得て本番という流れを23年間続けてきた
    著者は改めて感じるという。

    クローズアップ現代の役割は、物事を「わかりやすく」して伝えるだけでなく、
    一見「わかりやすい」ことの裏側にある難しさ、課題の大きさを明らかにして
    視聴者に提示することだと。

  • 『キャスターという仕事』(国谷裕子)
    読むきっかけは「久米宏のラジオなんですけど」にゲスト実演していたのを拝聴してこの本の存在を知りました。
    【クローズアップ現代】は21:30〜の頃は食卓で頻繁に見ていた記憶がありましたが、19:30〜に移ってからは、まだ帰宅していることが少なく、通っていたジムのサウナで何度か見ることがある程度でした。

    当時、番組を観ていて「意外と小さな社会の問題でも拾い上げ、しっかりした意見を提示する番組だなぁ」というのが印象でした。

    この本を読んでその印象が変わったということはありませんでしたが、そういう印象を受けた番組の、キャスターである国谷裕子さんが与えていた知的で隙のなさのようなものの、背景をよく理解できました。

    では、簡単に紹介します。
    この本は国谷裕子さんが『クローズアップ現代』及びそれ以前の仕事も含めて振り返りながら「キャスターとしての国谷裕子」と「キャスターとしてのあるべき(めざすべき)姿」を綴ったもの(だけれど、メッセージは別のところにあるります。)
    そしてその切り口として用意したのは必ずしも時系列に並べられていない。『クローズアップ現代』で経験した印象に残る制作番組を、社会が流動する起点に配してその底に映し出されるものと、テレビ(メディア)のあり様を自分の私見を交えながら紹介しています。
    (オマケ)番組制作の現場のイメージも緊張感も伝わってきて、ニュース番組の見方に深みが増すようにしてくれます。


    これを読んでいて感じたのは、国谷裕子さんがここで紹介されている挫折や苦悩をすべて彼女が成長のステップしているということ。
    失敗、挫折を不運と捉えるのではなく、試練と捉える。
    (優れたリーダーたちが共通してもつ心の習慣を育んでいたこと)

    それらをもう少し具体的に、その環境も踏まえて観ていきます。
    ①制作現場のスタッフの情熱に応える。
    放送前に行われる二回のVTRリポート試写に二回とも参加して、作り手の意図や熱意を感じとり、自らのなかで視聴者に‘伝える型’のイメージ作りに早い段階から関わる。
    これは、リーダーがチームを牽引していくうえで欠かせない情熱の共有の手段。

    ②「前説」に込める思い。番組冒頭の1分半〜2分半に、現場スタッフから引くついできた情熱を、視聴者のひとりに向かって自分言葉で伝える。(何を、何故、どうやって伝えていくかを表明する重要な時間)
    この姿がチームメンバーの心に響く。絆を深め、信頼感の醸成につながる。

    ③良き支援者を巻き込む
    性格やキャラで築いた人脈ではなく、仕事を通じて、信頼で結びついた人脈は硬く強くときに厳しい。だが、彼らは必ず必要な人を必要なときに、支えてくれる。

    ここには、書くことはしなかったけれど、メディアに対する考察や、柳田邦男さんとの最後の番組で語られた若者へのメッセージ、
    隠れている「地雷」や「事情」をいろいろと考えさせられ、想像させてくれる良い本です。
    何より、国谷裕子さんの実直さがよく伝わる文章でした。

    今後の国谷裕子さんの活躍を期待します。
    2017/05/18

  • 番組の印象そのままの本。言葉使いの難しさ、表現の難しさ、決められた枠の中で番組を作ることの難しさ等々、報道の難しさに彼女は立ち向かっていき、最後まで役割を果たした。常に最善を尽くそうとする姿勢はすばらしいし、実際に番組はそうだったと思う。週に1回、年中ずっとではないとはいえ、報道番組の中でも密度の濃いものを作り続けるのは大変。
    番組の製作関係者のほとんどが男性で、男性社会だったがゆえに、社会における女性の役割や立場の変化に関して番組で取り上げる機会が少なかった点に気づいたのが降板後だった、というのは残念だがやむなしか。
    ただし彼女はあの番組の製作スタッフのうち氷山の一角。海上に見える部分でしかない。水面下の人たちの、特にプロデューサーや編責といった方々はどうなのか。そういう人たちの書いた本があれば読んでみたい。
    テレビ局で報道にかかわる人たちは絶対に読むべし。特に局アナ。自分をタレントと勘違いしている女子アナには理解できないかもしれないが。

  • NHK「クローズアップ現代」のキャスターだった国谷さんが、その23年間を振り返りまとめた本。発刊されて、すぐに購入しました。

    僕自身はほとんど番組を見たことがなく、昨年の番組終了に関わる様々な状況を見聞きすること中で、恥ずかしながら番組の存在や国谷さんのことを知りました。

    ある事象を伝えるときにテレビという媒体の特性と危うさを理解しながら、視聴者自身に伝え・考える機会を提供していくこと。疑問をそのままにせず、聞くべきことは聞き追求していくこと。わかりやすさだけを求めるのではなく、深く物事を捉えられるようにしていくこと(見えないことを伝えること)等、23年間の歩みの中で積み上げられてきたたくさんのメッセージが本には書かれています。言葉の力を信じそのことを高める努力を続けながら時代を見続けきた番組と国谷さんは、とても大切な仕事をして来られたのだなと思いました。

    不寛容な時代、危機的と言える世界と日本の中でどう生きるかが問われています。長期的に多角的に物事を捉えることに、粘り強く取り組んでいくことが大事だと感じています。この本には、読み手に具体的に考えることを促す力があると思います(番組が目指してきたことですね)

    ぜひたくさんの人に読んでほしい一冊です。

  • クローズアップ現代のキャスターを23年間務められた国谷さん。その裏側が赤裸々に語られます。真剣勝負の毎日、決して妥協しない姿勢はキャスターとしての矜持です。そして自分の言葉で問を出し続けることの大切さ。ポスト真実の時代にかみしめたい言葉でした。(twitter)

  • ハルバースタム、テレビの報道番組のあり方への警告
    「テレビは人々を動かす力と真実を伝える力を持つ強力な箱である」
    「時にたった一人の記者でも政府が善悪を判断する唯一の審判でないことを示すことができる」
    「テレビが伝える真実は映像であって、言葉ではない。テレビが伝える内容は単純で、複雑なことは伝えない。苦痛や飢餓を映し出して世界中に伝えることはできるが、複雑な政治問題や思想、さまざまな行為の重要性について伝えることはできない」
    その理由として「話の内容がどんなに大切でも映像のインパクトの方が大きい」(p8-9)

    →たしかに映像ニュースは複雑な出来事の説明は難しい。ただ、複雑そうに見えても図説等でわかりやすくすることもできる。池上彰の報道番組が支持されるのは、映像報道のネガティブな面をきちんと解消しているからだと思う。
    映像のインパクト、で思い出しのが、米軍シリア化学兵器工場空爆の件。サリン?vxガスで呼吸困難になった子どもたちの映像で一気に米国が主張する攻撃の正当性を受け入れている自分をたしかに感じた。

    テレビのもつ映像の圧倒的な力。しかも、映像に映し出されていることがその事象の全体像を表しているわけでは決してない。→スタジオ重視の手法で向き合うことに


    詩人・長田弘さんの言葉「ニュース番組というのはそのときまでにはなかった出来事を前にそれをどう言い表すかという言葉を見つけないと届かない」

    071 視聴者一人一人に向き合って自分自身が納得したことを語りかけたいと思うとき、その言葉は「自分の言葉」にならざるを得ない。それが前説へのこだわりにつながっている。

  • ・テレビ報道の危うさ
    1 事実の豊かさを、削ぎ落としてしまう
    2 視聴者の感情の共有化、一体化をうながしてしまう
    3 視聴者の情緒や人々の風向きに、テレビの側が寄り添ってしまう
    ・わかりにくいことをわかりやすくするのではなく、わかりやすいと思われていることの背景に潜むわかりにくさを描くことの先に知は芽生える

  • 私はキャスターとして、「想像力」「常に全体から俯瞰する力」「ものごとの後ろに隠れている事実を洞察する力」、そうした力を持つことの大切さ、映像では見えない部分への想像力を言葉の力で喚起することを大事にしながら、日々番組を伝え続けることになった。(p.12)

    「わかりにくいことを、わかりやすくするのではなく、わかりやすいと思われていることの背景に潜むわかりにくさを描くことの先に知は芽生える」(是枝裕和、p.15)
     結論をすぐ求めるのではなく、出来れば課題の提起、そしてその課題解決へ向けた多角的な思考のプロセス、課題の持つ深さの理解、解決の方向性の検討、といった流れを一緒に追体験してほしい。そんな思いで私は、番組に、そして視聴者に向き合ってきた気がする。(p.15)

     テーマのすべてを知る必要はない。むしろ最初に抱いた疑問を忘れないようにする。もの知りになってしまうと視聴者との距離が離れる。そうすることで初めて、取材者と視聴者を結びつける橋渡し役が可能になる。(p.69)

     報道の言葉は、新しい事実や、不確かなこと、不明瞭なものを明確に言い表すことが求められる。つまり新しい事象から新しいコンセプトを取り出し、新しい言葉を生み出さなければならないのだ。(p.76)

     言葉の持つ力は絶大だ。いったん流通し始めてしまえば、誰にも止められない。メディアは、そして私たちは、そのことにどこまで自覚的だったのか。一言でわかりやすくするための、いわば造語や言い換え言葉の持つ危うさが、「ねじれ国会」という言葉には象徴的に表れていると思えた。(p.103)

     準備は徹底的にするが、あらかじめ想定したシナリオは捨てること。言葉だけでなく、その人全体から発せられているメッセージをしっかりと受け止めること。そして大事なことは、きちんとした答えを求めて、しつこくこだわること。長い間、インタビューを続けてきて、たどり着いた結論は、このことに尽きると思っている。(p.150)

     23年間、〈クローズアップ現代〉のキャスターとしての仕事の核は、問いを出し続けることであったように思う。それはインタビューの相手にだけでなく、視聴者への問いかけであり、そして絶えず自らへの問いかけでもあった。言葉による伝達ではなく、「言葉による問いかけ」。これが23年前に抱いた、キャスターは何をする仕事かという疑問に対する、私なりの答えかもしれない。(p.175)

    1. 自分で考える習慣をつける。立ち止まって考える時間をもつ。感情に流されずに論理的に考える力をつける。
    2. 政治問題、社会問題に関する情報(報道)の根底にある問題を読み解く力をつける。
    3. 他者の心情や考えを理解するように努める。
    4. 多様な考え方があることを知る。
    5. 適切な表現を身につける。自分の考えを他者に正確に理解してもらう努力。
    6. 小さなことでも自分から行動を起こし、いろいろな人と会うことが自分の内面を耕し、人生を豊かにする最善の道であることを心得、実践する。特にボランティア活動など、他者のためになることを実践する。社会の隠された底辺の現実が見えてくる。
    7. 現場、現実、現人間(経験者、関係者)こそ自分の思考力を活性化する最高の教科書であることを胸に刻み、自分の足でそれらにアクセスすることを心がける。
    8. 失敗や壁にぶつかって失望しても絶望することもなく、自分の考えを大切にして地道に行動を続ける。(柳田邦男、pp.233-234)

  •  長きにわたり継続した「クロ現」の舞台裏話を中心に構成された自叙伝。
     クロ現の終了の意味や裏面の開陳はないので、昨今のNHKの体質に切り込んだ書ではない。すなわち、限界は当然に存する一方、長所も持ち合わせているテレビ報道の意味と価値に言及する点を買うべきなんだろう。

     つまり、私のようにクロ現の内輪話や著者の履歴に関心がなければ、テレビ報道をマクロ的に見たエッセイという意味で、第1、9〜10、終章の読破で充分か。

     もっとも、真面目な意味で、「クロ現」におけるインタビューその他の失敗談を開陳する点は好感度高し。

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