日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)

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著者 : 三谷太一郎
  • 岩波書店 (2017年3月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316503

日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 著者の三谷太一郎氏は、日本政治外交史を専門とし、東大法学部学部長も務めた政治学者・歴史学者。
    本書は、明治維新後の日本の近代化を、政党政治、資本主義、植民地化、天皇制という4つの切り口から考察したものである。尚、「近代」の概念については、19世紀後半の英ジャーナリスト・W.バジョットを引用し、「「慣習の支配」する「前近代」から、貿易と植民地化を変革要因として、「議論による統治」の確立したのが「近代」」としている。
    4つの切り口の主な分析は以下である。
    ◆政党政治・・・明治憲法下での体制原理ともいえる日本の立憲主義は「権力分立制」と「議会制」を基礎にしているが、幕藩体制の中に既に、「合議制」、「権力分散メカニズム」、「相互的監視機能」として、立憲主義を受け入れる条件が準備されていた。更に、明治憲法の特質であった分権主義的な体制を統合するためには、非制度的な主体の役割が求められたが、それは、藩閥と政党が自らの限界を認識した結果相互接近することにより、政党が幕府的存在化し、複数政党制が出現することになった。しかし、大正の終わりに本格作動した政党政治は、1930年代初頭には「立憲デモクラシー」から「立憲的独裁」に変質していった。
    ◆資本主義・・・明治維新後の日本は、外資導入に不利な不平等条約下にあったため、「自立的資本主義」に向かわざるを得なかった。それを可能にしたのは、①政府主導の殖産興業政策、②国家資本の源泉としての租税制度、③資本主義を担う労働力の育成、④対外平和の確保の4つであり、その「自立的資本主義」は、「消極的外債政策」、「保護主義的産業政策」、「対外的妥協政策」という特徴があった。日清戦争後~日露戦争時は、不平等条約の改正、金本位制の確立等を背景に、「国際的資本主義」に移行しつつ、外債依存度が増大したが、その後の世界恐慌、満州事変等により、各国で国家資本・経済ナショナリズムの台頭が起こり、国際的資本主義は崩壊した。
    ◆植民地化・・・日清戦争後、欧米の「自由貿易帝国主義(非公式植民地帝国)」に対し、まだ最恵国条款が得られなかった日本は「公式植民地帝国」を目指さざるを得なかった。満州事変後には、「帝国主義」に代わるイデオロギーとして「地域主義」が台頭してきたが、それは、「民族主義」の対立概念として、東亜新秩序を基礎付け、日本の対外膨張を追認・正当化する役割も担った。
    ◆天皇制・・・日本では、ヨーロッパ近代化の軸となる「キリスト教」に代わるものとして、「天皇制」が位置付けられた。「天皇制」は、聖俗が分離したヨーロッパと異なって、それらが一体化したものであった。天皇の「神聖不可侵性」は、明治憲法では明確化することはできず、「教育勅語」で明示する策をとった。太平洋戦争後は、教育勅語が廃止されるとともに新憲法が施行され、天皇制の役割は変化した。
    そして、これからの日本が進むべき道として、「重要なのは各国・各地域のデモクラシーの実質的な担い手です。また、デモクラシーにとっての平和の必要を知る「能動的な人民」の国境を越えた多様な国際共同体の組織化です。すなわち国家間の協力のもとに、市民社会間の協力を促進する努力が必要なのです」と結んでいる。
    日本の近代化を振り返るとともに、現在世界で進む「立憲的独裁」に対して、「立憲デモクラシー」を取り戻す必要性について考えさせる良書である。
    (2017年5月了)

  • 日本の近現代史に疎いので勉強しようと買ったのだが、知りたかったものとは違ったので当てが外れた。

     序章から第二章まではよくわからなかったので読み飛ばした。ただ、教育についてと良妻賢母については記憶にとどめたい。
     後半は面白かった。特に教育勅語はいかに作られたのか、はとても興味深い。井上毅についてもっと知りたい。

  •  副題に「問題史的考察」とあるように、「政党政治」「資本主義」「植民地」「天皇制」という近代日本の根源に関わる4つの問題を歴史的に考察した書。著者は政治史学界のいわば「レジェンド」的存在の大御所だが、分析視角の鍵としてウォルター・バジョットを持ってきたり、日本の近代化の特殊性を相変わらず西欧(というより英米)との偏差によって規定するあたり、レジェンドであるが故の「古臭さ」は否めない。明治前期の非対外募債主義を幕末の「倒幕派」に遡及している点などおかしいところもある。とはいえ、最近はアプリオリに自明の前提として等閑視されている歴史学の根源的問題、すなわち「なぜ日本は非欧米圏で唯一植民地にならず、近代国民国家の形成に『成功』したのか?」という問いを検討する上で様々な示唆を与えてくれる点は評価するべきだろう。

  • 2017年9月1日、図書館から借り出し。なかなかの力作、かつ遺言書。

  • 著者の問題意識と分析は頷けるところ多々あるが、将来展望の部分はりそうしゅぎてき、希望観測的すぎないか。

  • 大正デモクラシー研究の泰斗が、日本の近代の成立過程を概括する。

    とりわけ終章とあとがきは、歴史家の存在理由を後世に書きつける渾身の文章ではないだろうか。

    「歴史は現実であり、現実は歴史であるというのが私の実感です。」と結ぶ。


    再読せねば。

  • 日本の近代成立の過程を、「政党政治」「資本主義」「植民地帝国」「天皇制」から読み説く。
    天皇制の成立や教育勅語制定に関する当時の為政者の苦労が興味深い。

  • <目次>
    序章   日本がモデルとしたヨーロッパ近代とは何であったのか
    第1章  なぜ日本に政党政治が成立したのか
    第2章  なぜ日本に資本主義が形成されたのか
    第3章  日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか
    第4章  日本の近代にとって天皇制とは何であったのか
    終章   近代の歩みから考える日本の将来

    <内容>
    歯ごたえがありました。ただ近代資本主義の成立、日本の植民地が欧州とは違うところがあること、天皇を明治政府がどう利用したのか、いろいろと示唆があった。

  • 金解禁と軍縮条約はセットだった、東亜新秩序の地域主義への位置付け、等々自分にとっては新たな視点を提供して頂きました。全ての事柄、歴史には、透徹した論理、理屈、考えがあったんだなあ、と再認識。 ちょっと難しかったけど。またじかんを置いて再読してみようかと思います。

  • 3章における後に大東亜共栄圏の概念に図らずも繋がる「地域主義」構想は初めて知り勉強になった。
    他の章も日本史を詳しく再勉強することができたが、各章間の繋がりがやや弱い印象。終章にて現代の評価、将来への展望をもう少し記して欲しかった。それは著者より数世代下の我々に課せられた課題ということかな。

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